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映画祭2005情報

インターナショナル・コンペティションの特徴と傾向


 今回のインターナショナル・コンペティションには、過去最高となる950本の応募がありました。6カ月にわたる選考の結果、フィルム作品6本、ビデオ作品9本計15本を決定しました。

 これだけ多くの作品が応募されると変化に富んだテーマが見られ、特筆すべきことを一言で表すのは難しいですが、いくつかのインターナショナル・コンペティション作品と照らし合わせながらご紹介いたします。

進むボーダレス

 製作、撮影、テーマなどが、ひとつの国という単位ではおさまりきれないボーダレスな作品は、10年ほど前から増えつつありました。今回もオーストリア出身の監督が、グローバル化の一例として、アフリカ・タンザニアにあるビクトリア湖に放流されたナイルパーチが誘因となって生み出される過酷な現実を描いた『ダーウィンの悪夢』、フィンランド出身の監督がチェチェン紛争のなかに生きる子どもを描いた『メランコリア 3つの部屋』等が挙げられます。

 また、製作国についても同様なことが言えます。出身国を含む2、3カ国の共同製作も珍しいことではなくなり、作品を国や地域を基準に分類し把握するのが難しくなっています。

個から和平について

 イスラエル・パレスチナ問題に関する作品は、製作者独自の視点や方法で和平への模索を意識した作品が数多く応募されました。パレスチナを二分する国連決議181条で引かれた境界線を辿り旅をする『ルート181』は、イスラエル出身とパレスチナ出身の監督が共にひとつの作品を製作し、その姿勢をうかがうことができます。

自らの目線で切りとる社会

 新聞、テレビで取り上げられている事柄を、製作者が現場へ出かけてカメラにおさめ、独自の目線でその事柄や社会を切りとった作品も多く見られました。

 『ファイナル・ソルーション』はインドにおけるヒンドゥー教徒とイスラム教徒の対立について、『イラク ― ヤシの影で』はイラク攻撃開始前から後まで、アメリカ軍により与えられた「自由」と「民主主義」に直面するイラクの人々について綴っています。

個人から社会へ

 ビデオの登場は身の周りを題材にしたパーソナルなまなざしによる個人映画の増加につながりました。しかし近年は、作者自身、家族、友人、ある場所を基点にルーツを探り、個人的な世界から社会の動きまでも見つめた作品がますます増えています。

 『静かな空間』は、家族の日常を通して、時代の波が押し寄せるフィンランドの現代農業をめぐる状況を描いています。

再び山形へ

 過去に出品歴のある監督の新作や審査員として参加された方々の応募も今までと同じようにあり、製作者の一連の作品を見続けられるという映画祭の継続性の大切さを改めて認識しました。また、映画祭参加者・観客との交流や議論に刺激された作家が、再び山形に招かれ、そこでまた刺激され……。作品製作を促すサイクルが山形では既にでき上がっているのを実感しています。

 今回で3回連続インターナショナル・コンペティションで上映することになったカンボジア出身リティー・パニュ監督作『アンコールの人々』、1995年アジア百花繚乱(アジアプログラム)で上映された『私の言いたいことは…』のマリア・ラモス監督作『ジャスティス』、1999年ワールド・スペシャルプログラムで上映された『見知らぬ人との会話』のケース・ヒン監督作『生まれなかった映画たち』等があります。


 様々なテーマと製作者の感性が交錯し、世界の動向と共に変貌し続けるドキュメンタリー映画。世界のドキュメンタリーシーンを映しているこれら15作品は、ドキュメンタリー映画の多様性を示す15作品であるとも言えます。

 10月に開催される山形国際ドキュメンタリー映画祭2005ではこれらの力作をスクリーンで是非ご鑑賞いただきたいと思います。皆さまのご来場心よりお待ち申し上げております。

山形事務局 インターナショナル・コンペティション・コーディネイター 浅野藤子


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