english
映画祭2005情報

大歩向前走(前を向いて大きく歩こう)――台湾「全景」の試み
6本の作品が映し出す台湾大震災復興の物語



 近年、完成度の高いドキュメンタリーを多く輩出している台湾のなかでも、ひときわ存在感を発揮している映像製作集団「全景」。YIDFF '99にも参加した彼らの集大成といえる作品群が完成しつつあります。1999年9月21日に起きた台湾大震災。全景は「未曾有の出来事に向き合う台湾の人々を多方面から記録し、後世に伝えていきたい」と地震発生直後に被災地に赴き、復興活動を手伝いながら、腰を据えて7本の作品製作に取りかかりました。移ろいやすい社会のなかでも消えることのない震災体験の影響。長期間の取材から見えてくる台湾の姿。今回はYIDFF 2003で優秀賞を受賞した『生命(いのち)』を含む6作品を上映。メンバーが自らの視座、独特の手法によって作り上げた作品は、それぞれ固有の色彩を放ち、またひとつのコミュニティ、ひとりの人間にとって語り尽くせない出来事があったことを物語ります。メンバーを迎え、上映とトークから全景の試みを検証していきます。


108日[土]15:30 会場:ミューズ2

天下第一の家
The House Masters
天下第一家
台湾/2004/北京語、台湾語/カラー/ビデオ/89分
監督:呉乙峰(ウー・イフォン) Wu Yii-feng

メディアや政府関係者たちに忘れられた南投県國姓郷石門村。その村で被災民自ら復興の道を探ろうとする過程を記録した作品。頑なにテント生活を続けようとする老人や、震災で粗悪建材の使用が露呈した集合住宅「天下第一の家」住民たちを追う。老人はやがて孤独のうちに世を去り、集合住宅の住民たちは建設業者を訴えるが、司法の矛盾をつきつけられる。最後に流れる、裁判が未だ継続中というテロップが、震災復興の道のりの険しさを感じさせる。

先頭

109日[]14:30 会場:ミューズ2

部落の声
Radio Mihu
部落之音
台湾/2004/北京語、タイヤル語/カラー/ビデオ/136分
監督:李中旺(リー・チョンワン) Lee Jong-wang

先住民タイヤル族の村である台中県和平郷自由村雙崎部落では、詩人で小学校教師のワリス・ノガンが、伝統的共同生活をベースに仮設住宅区を設立。自助的復興を目指すが、古老たちとの見解の相違や、ワスリたちだけに集まる仮設住宅区への注目が、村人たちの不公平感を生むなど、軋轢が深まっていく。震災という過酷な状況下での、人間の暗い部分が浮き彫りにされるが、筋回しとなっている違法FMラジオ「部落の声」の、先住民らしい朗らかな語り口が、未来への希望と人々の力強さを感じさせてくれる。

先頭

1010日[月・]12:30 会場:ミューズ2

梅の実の味わい
A Taste of Plum
梅子的滋味
台湾/2004/北京語、台湾語、客家語/カラー/ビデオ/142分
監督、編集:郭笑芸(グオー・シャオウィン) Kuo Hsiao-yun

震源地付近の南投県國姓郷南港村では、地崩れにより村落が埋没。母親と家屋を失った朱三兄弟を中心に、復興に立ち向かう被災民たちを追う。思惑の違いから起こる政府との対立や、観光地化していく村で、自らの被災体験を売り物にしてでも生き抜こうとする人々の生きざまが、観る者に等身大の台湾の姿を投げかけてくる。

先頭

1011日[火]14:30 会場:ミューズ2

三叉坑
Three Fork Village
三叉坑
台湾/2005/北京語、タイヤル語/カラー/ビデオ/144分
監督:陳亮丰(チェン・リャンフォン) Chen Liang-feng

わけあって50年ほど前『部落の声』の雙崎部落から三叉坑部落へと移住した、タイヤル族の小村を記録し続けた作品。震災により集団移転をよぎなくされたこの村の再建過程で起こる悲喜こもごもの出来事を、カメラは村人に寄り添い、記録している。また、それだけではなく、その後の台風による水害なども織り込みながら、震災後5年を経てもまだ復興を果たせなかった村の抱える問題の本質とは、いったい何なのかを考えさせられる作品となっている。

※システム環境やWebブラウザによっては表示されない漢字があります。

先頭

1012日[水]14:30 会場:ミューズ2

中寮での出会い
An Encounter with Chungliao
在中寮相遇
台湾/2005/北京語、台湾語/カラー/ビデオ/356分(第1集139分 第2集99分 第3集118分)
監督:黄淑梅(ホアン・シュウーメイ) Huang Shu-mei

広大な南投県中寮郷の被災地を丹念に巡りながら撮影された作品。日本植民地時代バナナの集積地として栄えた街とその後の衰退の歴史、電力供給の中継基地として高圧鉄塔が立ち並んだために離散をよぎなくされた村、都市の廃棄物の投棄を受け入れたために起こった環境汚染、換金作物を植えたために起こった森林破壊にともなう土石流といった様々な問題が、素直なカメラワークで描かれ、単なる復興の過程だけを追ったものとは異なる作品となっている。

先頭

1012日[水]13:10 会場:山形市中央公民館(アズ七日町)6Fホール

生命(いのち)― 希望の贈り物
Gift of Life
台湾/2003/北京語、台湾語/カラー/ビデオ/148分
監督:呉乙峰(ウー・イフォン) Wu Yii-feng

1999年9月21日に起きた台湾大震災。震源地近く九份二山にあった集落は大震災によってあとかたもなく土砂にうずもれてしまった。そこからあてどもなく親族の遺体を探す4組7名の家族たち。被災者家族にとってつらくのしかかってくるのはむしろ震災以降の日々だった。監督は喪失感にとらわれる家族たちが再生に向かう姿を、信頼関係を丹念に築きながら暖かく見守る。そして、もし自分が親しい人との別れを突然つきつけられたとしたら……。震災体験を自分のものとして捉えようとする監督の心情を独自の手法で描き、共感への可能性を模索する。(インターナショナル・コンペティション審査員作品として上映)。

※システム環境やWebブラウザによっては表示されない漢字があります。


映画祭2005情報審査員コメントインターナショナル・コンペティション | アジア千波万波 | 日本に生きるということ | 私映画から見えるもの | 雲南映像フォーラム | 「全景」の試み | ニュー・ドックス・ジャパン | その他企画スケジュール会場地図 | チケット | 宿泊・交通情報Q&A