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[台湾]

平行世界

Parallel World
平行世界

台湾/2022/中国語、台湾語、フランス語/カラー/DCP/177分

- 監督、脚本、ナレーター:蕭美玲(シャオ・メイリン)
撮影:蕭美玲、林賢俊(リン・シェンジュン)、 柳依辰(リウ・イーチェン)、劉雅文(リウ・ヤーウェン)
編集:蕭美玲、曹育維(ツァオ・ユーウェイ)、 蒋錦松(ジャン・ジンソン)、黄渥茹(ホアン・ウォールー)
録音:黃渥茹(ホアン・ウォールー)
音響:洪晨軒(ホン・チョンシュエン)
音楽:クリストファー・ガロバン、アルディー・ソン、 ケヴィン・マクロード
アニメーション:黃盈瑄(ホアン・インシュエン)、 洪湘婷(ホン・シャンティン)、 黃筠婷 (ホアン・ユンティン)
提供:蕭美玲

アスペルガー症候群の娘エロディとの12年。突然とめどなく溢れ出してしまうむきだしの感情を受け止め、創作のエネルギーと自立への歩みを見つめる。「大人になりたくない、ずっとお母さんといたい」と泣いていた娘は、自立に向けて父の暮らすフランスへと旅立つ。台湾の祭りや風景をスマートフォンで中継する母。膨大に撮影した娘との映像を、行きつ戻りつしながらつむいでいく。編集モニターに向かう母の後ろ姿が、成長していく娘の小さな後ろ姿を何度も見返す。時に根気良く寄り添い、隔てられては結び止めた母と娘のつながり。(OM)



【監督のことば】私はエロディが生まれた時に母親になり、母という新たな自我に出会ったことで、文化やアイデンティティや国境について真剣に考えるようになった。本作は、その思索の成果である。エロディが成長するにつれ、私は再び、個人が外の世界とどのようにつながっているのかを考察し始めた。

 アスペルガー症候群と診断されたエロディはディスグラフィア(書字障害)だが、絵を描く才能がある。母親として、わが子が社会で生きていくために必要なスキルを身につけさせたいと思うと同時に、何が人を人たらしめているのだろう、わが子の内なる欲求を本当に理解できているのだろうかと考える。標準的な型にはまるよう社会から押し付けられると、人の創造性が徐々に損なわれていくのを目の当たりにする。しかし、そもそも「普通の人」とは? 普通などというのは、法則性のない、普通でない多くの人々の平均化された結果に過ぎないのではないだろうか?

 15歳の時、エロディは父親の国へ行き、人生の新たな局面を迎えた。私は「Zoomママ」になった。過去10年間に録画したビデオが私たちの人生を振り返る源となった。10余年にわたり、私は特別な子の母として細いロープの上を歩き続けるべく、情緒を抑制する必要があった。そしてこの複雑な感情すべてをドキュメンタリーに翻訳することが、私のはけ口になると分かった。

 すべての特別な子どもたちは、神からの贈り物だ。これらの言葉や写真やビデオは私のセルフセラピー(自己療法)であると同時に、世界と分かち合いたいものなのだ。エロディへの最も深い愛と祝福となることを願って。


- 蕭美玲(シャオ・メイリン)

台湾生まれ。現代美術家、ドキュメンタリー作家。ル・フレノワ国立現代アートスタジオで学び、ロバート・クレイマーに師事。監督作に『落ちて行く凧』(1999、YIDFF 2001)、『雲の彼方に』(2007、YIDFF 2007 アジア千波万波特別賞など。2022年には『平行世界』がアムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭(IDFA)のインターナショナル・コンペティション部門にノミネートされた。現在、台湾の国立台北教育大学芸術デザイン学部准教授。