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[日本]

GAMA


日本/2023/日本語/カラー/DCP/53分

- 監督、編集、音響:小田香
撮影:高野貴子
録音、テクニカルディレクション、グレーディング:長崎隼人
照明:平谷理沙
監督補佐、撮影助手、リサーチ:鳥井雄人
企画:とよなかアーツプロジェクト、 豊中市市民ホール等指定管理者 委嘱作品
プロダクション・コーディネート:小田絵理子
プロデューサー:筒井龍平、杉原永純
出演:松永光雄、吉開菜央
製作会社:トリクスタ
製作:豊中市立文化芸術センター

沖縄戦で多数の住民が命を落とした自然洞窟「ガマ」。薄暗い鍾乳洞の中で、遺骨収集や平和の語り部としてガイドを務める松永さんが、当時実際に起きた出来事をカメラに語りかける。語り終わると「暗闇体験をします」とおもむろに言い、懐中電灯を消す。その瞬間、スクリーンも暗転し水の滴りが響く。松永さんのそばには青い服の女性がたたずみ、その身体表現によって、亡くなった魂の存在、そして現代人の眼差しを体現する。地下の記憶を巡る作品を撮り続けてきた小田香が、しっとりとしたフィルム映像を用い、現代と過去が交差するガマの多層的な世界を描き出す。(MA)



【監督のことば】日本の地下を巡る映画制作に取り組みはじめて、もうすぐ3年ほどになる。『GAMA』はその映画(『Underground』)の沖縄編にあたるが、ひとつの独立した作品として自分の手から離れ、山形で上映の機会をいただくことになった。

 『GAMA』は沖縄で終始撮影されたが、元々は豊中市立文化芸術センターさんからいただいたご縁だった。豊中の地下を調べるなかで行き詰まっていると、豊中と沖縄につながりがあることを知った(その詳しい経緯についてはまた別のところで語る機会があればと思う)。私たちはリサーチ場所を沖縄の地下空間へと向け、沖縄の地下に降りた。『GAMA』に登場する松永光雄さんは、ガマについて不勉強な私たちに、松永さんが引き継がれたガマの記憶を語ってくれた。撮影終盤、ご自身のことを語る松永さんの口から、「戦後生まれの松永光雄です」という言葉が出た。私はその言葉になぜかたじろいだ。少し落ち着くと、この作品の方向性を指し示されたように言葉が身体に響いた。松永さんは記憶を引き継ぎ、自分たちは松永さんが引き継いだ記憶の一部を見聞きさせていただき、映画として跡に残す。その試みこそが、『GAMA』なのだと思う。

 『GAMA』は松永さんの導きのもと、新しくクルーとして参加してくれた作り手のみなさんと共に仕上げた初作品になった。


小田香

1987年大阪府生まれ。フィルムメーカー、アーティスト。イメージと音を通して人間の記憶(声)――私たちはどこから来て、どこに向かっているのか――を探究する。映画作品に『鉱 ARAGANE』(2015、YIDFF 2015 アジア千波万波特別賞)、 『あの優しさへ』(2017)、『セノーテ』(2019、YIDFF 2019)ほか。第1回大島渚賞、第71回芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。2020年より長編映画『Underground』の制作を日本各地で継続している。最新作『GAMA』は、「Underground」プロジェクトの一部として2022年に沖縄で撮影し、独立した中編映画として完成した。