ヤマガタ・ラフカット!
「ラフカット」とは、映画や映像作品が完成する前の粗編集版(未完成)の状態を指す。このプログラムは、作品に満たない短い映像を上映し、世界中から映画祭に集う人たちとともに見て、感じ、語り、聞く場を作ることを目的としている。映画の「作品」という枠組みを一度ほどき、荒々しく削りだした世界の断片(ラフカット)を頼りに、制作者、観客、批評家、研究者など、あらゆる立場の人びとがジャンルを超えて交わる場から、立場、ジャンル、国境を越えた「映像そのもの(フッテージ)」との「対話」の場の可能性を模索する試みである。
感覚から思考を立ち上げる
コロナ禍を経て、映像が自らが危険な“怪物”であることを隠さなくなりました。メディアはその危険さに振り回され、私たちの毎日の「思考」は、映像で得る情報やコミュニケーションから逃れることはできません。切り取られた世界だけを、“怪物”の思うままに受け入れないために、私たちは見る「感覚」を研ぎすまさなければなりません。
このプログラムは、「見る」ことと同等に、またはそれ以上に「話す」 ことを大切にしてきました。目の前に映し出される映像から感じることに 集中し、そこから時間をかけて、思ったこと、考えたことをゆっくりと言葉 にしていく。感覚から思考を立ち上げていく原始的な作業から対話 を、今回はリアルな場で、はじめたいと思います。
これまでと同様に、ひとつのフッテージを、対話の前と後に2回の上 映を行います。