ターミナル
The Bus StationLa Terminal
- アルゼンチン/2023/スペイン語/カラー/DCP/62分
監督、脚本:グスタボ・フォンタン
撮影:エセキエル・サリナス
編集:マリオ・ボキキオ
録音:アティリオ・サンチェス
製作:エバ・カセレス
提供:Punto de Fuga Cine
アルゼンチンのコルドバ州にあるバスターミナル。労働者たちが行き交うこの場所は、活気があるというよりはむしろ穏やかな気配に包まれている。仕事の行き帰り、旅の出発あるいは終着点、見送り、待ち合わせ……。自在なテンポで撮られた人々の姿に重ね合わされるのは、愛についての追憶だ。初めての恋、生涯たった一度の愛、失われた関係への思慕。映像と声とが幾重にも層になって愛の物語が生まれ、言葉が途切れては再び続いていく。差し込む光の粒子や空気の流れ、夜の暗さの細部までも捉えるかのような繊細なショットに目を奪われる。(YM)
【監督のことば】『ターミナル』はアルゼンチン コルドバ州の山の中にあるバスターミナルで撮影された。基本的にこの場所を通るのは、労働者と学生を運ぶ地元のバスだ。私は昔から「待つ場所」に興味を持っていた。待つ場所には必ず独特な人の流れがあり、それにとても映画的だ。絶えず何かが現れ、そして消えていく。そこに住む者も、乗客として現れては消えていく。しかし、それに加えて、私が思うに、それらの場所にはある種の痕跡、そこを通りすぎた人々が残していった人間の経験の遺物も存在する。それは彼らの痛みであり、彼らの恐怖であり、彼らの希望だ。残された何かは、永遠にそこにあり、同時にとらえがたい。私たちはその確信のもとにこの映画を撮った。これは一面では、行きかうバスと人々、流れる光をとらえた記録であるが、見えないもの、影の中に残されたものに対してもつねに目を向けている。この理由により、『ターミナル』を撮った私たち全員にとって、見えるもの・聞こえるものは、沈黙しているものと同じくらい重要になった。言葉との関連において、私たちは彼らの経験を切り刻んで愛に変換することに興味を持っていた。そのため、バスを待つ人々、バスを降りる人々に、愛について語ること、語りたいことはないかと尋ねた。拒絶した人もいたが、それでも多くの人が私たちを信頼し、すばらしい反応が返ってきた。これらの物語の断片が映画の一部になっている。
この作品がYIDFFインターナショナル・コンペティション部門に選ばれたのは、私たちにとってとても光栄なことだ。心から感謝する。
1960年12月24日、アルゼンチンのバンフィエルドに生まれる。ブエノスアイレス大学哲学・文学部で学士号を取得し、映画製作実験センター(ENERC)映画監督コースで学ぶ。フィクション・現実と文学・映画が交差する地点を深く考察する映画を撮る。主な作品は『The Invisible Landscape』(2003)、『樹』(2006)、『底の見えない川』(2008)、『母』(2009)、『April's Elegy』(2010)、『ラ・カサ/家』(2011)、『顔』(2013、YIDFF 2015)、『La deuda』(2019)など。ローマス・デ・サモーラ大学(UNLZ)社会科学部、国立ラプラタ大学(UNLP)芸術学部で教鞭を執り、スペイン、イタリア、アメリカの大学でも講義、ワークショップ、セミナーで教えた経験がある。