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    南方澳(ナンファンアオ)海洋紀事

    Chronicle of the Sea, Nan-Fang-Ao
    南方澳海洋紀事

    - 台湾/2004/台湾語、北京語、英語、タガログ語/カラー/35mm/98分

    監督、製作:李香秀(リー・シアンショウ)
    撮影:秦鼎昌(チン・ティンチャン)、沈瑞源(シェン・ルイユェン)
    編集:蕭汝冠(シアオ・ルークァン)、趙家億(チャオ・チアーイー)
    録音:林秀榮(リン・シウロン)、戚務威(チー・ウーウェイ)、李香秀
    音楽:陳建年(チェン・チエンニエン)
    提供:李香秀

    かつて大網漁で栄えた台湾東北の村、南方澳。今では少なくなった漁船のひとつでは、フィリピンや中国からの出稼ぎ労働者が現地の労働者らと寝食を共にして働き、船内は生気に満ちている。様々な言語やジェスチャーが飛び交う海上の生活空間からは、家族を養うためにやって来た彼らの故郷への想いが伝わって来る。昔を語る船長、夫を海に送り出し村で店を営む妻、市場で家族へのおみやげを買う外国からの労働者たち。変わらない大海原を舞台に、ここに住む人々を生き生きと見つめ映し出す。



    【監督のことば】『南方澳海洋紀事』は海に生活を託す人々と、彼らがその運命を受け入れながらも、人生に喜びと尊厳を求める様を描いた映画だ。台湾、中国本土、フィリピンからやって来て、同じ船で働く男たち。それぞれが苦境に立たされ、妻や子どものことを思いながら仕事に励む。

     この映画は漁師と海の関係という古典的なテーマや、交錯する孤独、ノスタルジア、夢や希望を深く見つめた叙情的な作品だ。男たちと海との間には、共生があり、葛藤がある。危険と隣合わせの海上の日々と、いくらになるかもわからない収入から、彼らの集団意識には不安が常にともなう。作品は漁師という仕事の大変さを見せると同時に、人間と海の生態との対立をも映す。減り続ける魚の生息数とサバの巾着網漁の廃止は、ひとつの問いを投げかける。この人たちの将来はどうなるのか?

     台湾は島国だが、長年の間、戒厳令のため、海に出られるのは漁師を生業とする者だけだった。台湾のほとんどの人は、外洋に生きるとはどんなことなのか、想像するきっかけすらなかったのである。そういう意味では、この映画が作られたこと自体が重要な意味を持っている。

     私は監督・製作を手がけたが、女性がこの映画を作るのはことさら大変だった。その困難とは漁師の男社会に入っていくことではなく、伝統的なタブーを破って女性が漁船で海に出ることにあった。しかしドキュメンタリーを作る度に私は知識を得、登場人物を通じて人生の悲哀、痛みや喜びも体験できる。最後に一番得るところが多いのは、いつも私自身なのだった。


    - 李香秀(リー・シアンショウ)

    1964年、台北生まれ。1998年、テンプル大学(アメリカ、フィラデルフィア)で映像、メディアアートの美術学修士号を取得。1993年、『恋人たちの食卓』でアン・リー監督のアシスタントを務める。2000年、林正盛(リン・チェンシェン)の『檳榔売りの娘』では、第一助監督を務める。現在はインディペンデントの映像作家として活動するほか、世新大学のラジオテレビ映画学部で講師を務め、台南藝術学院の博士課程に在籍。初のドキュメンタリー作品『消失的大国――拱樂社』は1999年度ハワイ国際映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞にノミネートされ、2000年度台湾国際ドキュメンタリー祭でNETPAC特別賞を受賞した。長編ドキュメンタリー2作目にあたる本作は、2004年台北金馬奨最優秀ドキュメンタリー賞を獲得している。