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    大統領ミール・ガンバール

    President Mir Qanbar
    Raiees Jomhour Mir Ghanbar

    - イラン/2005/ペルシャ語/カラー/ビデオ/70分

    監督、編集、製作:モハマド・シルワーニ
    撮影:フーマン・ベヘマネシュ
    録音:ベヘルーズ・アベディニー
    音楽:モハマド・レザ・パルヴィーシー
    出演:ミール・ガンバール・ヘイダリー
    製作会社、配給:ロヤビーン・メディア

    イラン大統領になることを夢見て、あきらめずに立候補を続ける片田舎のおじいさんミール・ガンバールと共に旅するカメラ・クルー。赤い旗をなびかせ、拡声器片手におんぼろ自転車をこいで、ひとりの支援者セイフォッラーと共に村々を廻る素朴な選挙キャンペーン模様。砂ぼこり舞う自転車ツアーのなかで、たまに出会う村人たちにビラを渡したり演説をしてみるが……。インタビューに応えるミール・ガンバール一家の選挙に無関心そうな様子。イランの田舎風土のなかに、何とも表現しがたい滑稽な悲哀が漂う。



    【監督のことば】この映画の本来の目的は、イランにおける政治社会の発展の現在、その断片を伝えることであり、自分たちの未来を築くため、何らかの役割をそれぞれのやり方で果たすことを熱望している人々の姿を描くことだった。彼らがその目的を達成する唯一の手段が選挙に参加することだったのである。

     別の角度から見ればこの映画は、理想を求める胎動が始まっていながら、いまだ越えられない既存の枠組に閉じ込められている国家を描いている。運動を押し進めようとする人々に何ももたらさないその潮流は、本質的に悲しみと失望に満ちている。政治社会の改革というよりも、むしろ悪循環である。

     そして今、片田舎に暮らす75歳のミール・ガンバールは、その単純な家父長的価値観と子どものような純真さで、自分こそがこの国の救世主になるのだという幻想を抱いている。この国はヒーローが現れ、自分たちをまとめてくれることを、いつも待ち望んできた。ミール・ガンバールが政治の世界に入り、大統領選に立候補した理由はそこにある。


    - モハマド・シルワーニ(中央)

    1973年、テヘラン生まれ。映画に否定的な信心深い中産階級の家庭で育ち、幼少期は絵と演劇に親しむ。内気で控えめな少年が、積極的で行動的なちょっとした著名人になったのは、間違いなく数えきれないほど舞台に立った経験のたまもの。イラン・イラク戦争中、徴兵を免れるために軍人の父親に陸軍士官学校に入れられ、10年間軍隊で働かなければならなかった。軍務を7年間終えたところで士官学校から逃げ出し、最初の短編映画を製作する。以来、映画作家、プロデューサーとして活動。これまでに70以上の国際映画祭に参加し、国内で26の賞と海外で6つの賞を受賞。主な作品は『Dayereh』(1999)、『Kandida』(2000)、『Rezayat Daadan』『Kado』(2001)、『Gilas-ha'ee keh kompoot shod』(2002)、『Nahf』(2004)、『Leili Kojast』(2005)など。