やまがた/映像の民俗史
「やまがたと映画」の主旨のひとつに「かつての山形を映像記録によって振り返る」というものがある。今回はその主旨に則り、いにしえの伝承芸能と民俗風習の記録映像を紹介する。今なお残る芸能、絶えて久しい風習。果たして何が失われたのか、そして映像から我々は何を学び、何を受け継ぐべきなのか。失われつつある景観や伝統文化を、当時を知る者は懐かしみ、知らない世代は斬新さを持って映像を眺め、そこから「映像に残された景色や文化はなぜ失われたのか」を探り、山形という「場」そして、記録することの意味を考察する。
黒川能
Kurokawa Noh- 1954/日本語/モノクロ/ビデオ(原版:16mm)/25分
製作:日本大学藝術学部
提供:山形県教育センター
昭和29(1954)年に日大芸術学部によって製作された、東田川郡櫛引町(現在の鶴岡市)黒川地区に500年以上昔から伝わる、国指定無形文化財「黒川能」の演目を撮影した映像。戦後まもない時期の記録は大変に珍しいものである。
王祇祭
Ogisai Festival- 1954/日本語/モノクロ/ビデオ(原版:16mm)/21分
製作:日本大学藝術学部
提供:山形県教育センター
『黒川能』と同時に製作されたと思われる、2月1日に夜通し行われる黒川地区の伝統行事「王祇祭」の様子をとらえた映像。ひそやかながらも荒々しい一夜が丁寧に記録されており、見る者を幽玄の彼方へといざなう。
おがれおがれ
Ogare-Ogare- 1982/日本語/カラー/ビデオ(原版:8mm)/15分
監督、撮影、提供:清瀧章
尾花沢市銀山温泉で行われた「おがれ講」を撮影したフィルム。「おがれ」とは方言で「育て」「伸びろ」の意。男性器を忠実に模したご神体、「おがれおがれ」と叫び笑顔で練り歩く一行。のどかながら資料的価値も高い映像。
オナカマのふるさと
Onakama- 1982/日本語/カラー/ビデオ(原版8mm)/14分
監督、撮影、提供:清瀧章
中山町岩谷地区で行われていた「オナカマ」の例大祭行事を記録した映像。「オナカマ」は東北各地に伝わる盲目の巫女の系譜であったが、現在ではその血筋は絶え、岩谷地区も廃村となってしまった。当時を知る貴重な記録である。