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クリス・マルケル(1921〜2012)

1921年、パリ郊外のヌイイで生まれる。本名はクリスチャン=フランソワ・ブーシュ=ヴィルヌーヴ。第二次世界大戦中はレジスタンスに参加したと言われている。戦後は批評家、翻訳家、編集者、作家として活躍。1952年、最初の映画作品『オリンピア52』を発表。この頃からマルケルは、世界を旅する写真家、ドキュメンタリー監督として知られるようになり、『北京の日曜日』、『シベリアからの手紙』を制作する。1962年、SFの短編映画『ラ・ジュテ』を発表。ドキュメンタリーの枠組みにとどまらない、映像作家としての地位を確立する。

 マルケルの反権力としての政治性が映画のなかでより強く表現されるようになったのが、1960年代末から70年代にかけてである。1967年、マルケルは、映画制作集団SLONを結成し、『ベトナムから遠く離れて』を皮切りに、世界中の政治闘争を取材した映画を製作する。同年、ブザンソンの工場労働者とともに、メドヴェトキン集団を結成。グループ名は、ソ連の映画監督アレクサンドル・メドヴェトキンにちなんだもので、労働者が自らカメラを取って映画を作ることを支援した。1977年には、60〜70年代の政治運動の映像によって構成された『空気の底は赤い』を発表する。

- 80年代以降、マルケルは記憶とメディアの問題を中心に据えるようになる。この時代の代表作、『サン・ソレイユ』(1982)では、歴史と個人的な記憶が交錯する。このような主題は、『アレクサンドルの墓:最後のボルシェヴィキ』(1993)や『レベル5』(1996)でも見ることができる。また、マルケルの関心はマルチメディアへと広がり、90年代にはインスタレーションやCD-ROM作品を発表。さらに、セカンドライフ上に「ウヴロワール(Ouvroir)」(2007)というヴァーチャル空間を創造した。その後も継続的に映像や写真を発表するが、

 2012年7月、91歳でパリの自宅アパートで亡くなった。


1

彫像もまた死す

Statues Also Die
Les statues meurent aussi

- フランス/1953/フランス語/モノクロ/35mm/32分

監督:アラン・レネ、クリス・マルケル
撮影:ギスラン・クロケ
録音:ルネ・ルージュ
音楽:ギイ・ベルナール
ナレーション:ジャン・ネグロニ
製作会社:タディエ・シネマ・プロダクション
提供:アンスティチュ・フランセ

「なぜ黒人美術は人類学博物館に展示され、ギリシャ美術やエジプト美術はルーヴル美術館に展示されるのか」という問いから作られた、マルケルとレネによる短編映画。植民地主義を批判したこの作品は、フランス政府からの検閲を受け、10年近く上映禁止となった。


2

北京の日曜日

Sunday in Peking
Dimanche à Pékin

- フランス/1956/フランス語/カラー/35mm(原版:16mm)/18分

監督、撮影:クリス・マルケル
編集:フランシン・グルベール
音楽:ピエール・バルボー(作曲)、ジョルジュ・ドルリュー(演奏)
ナレーション:ジル・ケアン
アドバイス:アニエス・ヴァルダ
製作:マドレーヌ・カサノヴァ=ロドリゲス
製作会社:アルゴス・フィルム、パヴォックス・フィルム
提供:タマサ・ディストリビューション

1955年、マルケルはミシェル・レリスやポール・リクールとともに、中国への友好使節団旅行に参加した。その際に撮影された本作には、革命後の、希望に満ちた北京の人々と風景がみずみずしく表わされている。パリのエッフェル塔と、北京の旅での思い出の品々が繋げられる冒頭のシーンでは、マルケルの生涯のテーマとなった記憶の問題がすでに扱われている。