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貸出作品リスト:YIDFF '99


※監督の下段のデータは、製作国/製作年/使用言語/色/フィルム種別(35mmの場合のスクリーンサイズ)/上映時間/字幕
※以下、作品タイトルをクリックすると、より詳しい作品情報がご覧いただけます

YIDFF '99 インターナショナル・コンペティション出品作品


不在の心象

Images of the Absence ('99 ロバート&フランシス・フラハティ賞)
監督:へルマン・クラル
ドイツ/1998/スペイン語/カラー、モノクロ/16mm/89分/日本語・英語字幕あり

1991年、クラル監督は映画を勉強するためにブエノスアイレスからドイツへ渡る。7年後彼はこの映画を作るために故国へ戻る。両親や、祖母へのインタビューを交えて綴られるこの作品は、クラル監督が両親の別居と父親の長い不在の理由を理解できるようになるための、ドイツからブエノスアイレスへの旅日記のようなものでもある。「彼は偉大なる率直さを持って両親に向かい合い、その感情、そのエモーション、その複雑さを気づかせてくれます。それを映画に固有の手法によって作品に昇華することで、実生活においては離れ離れになってしまったものを、フィルムの中に再び結び合わせることができたのです」(審査員評)

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アンダーグラウンド・オーケストラ

The Underground Orchestra ('99 審査員特別賞)
監督:エディ・ホニグマン
オランダ/1997/フランス語、ルーマニア語、スペイン語/カラー/35mm(1.66)/115分/日本語・英語字幕あり

パリの音楽家たち。彼らは地下鉄で、街角で、思い思いの楽器を演奏し糧を得ている。多くは政治亡命者であり不法移民である彼らの過酷な現実と、クラシックからシャンソン、R&Bなど演奏される音楽の素晴らしさ。「この映画はおもに地下で撮影するはずだった。パリの地下鉄駅の構内で、あるいは運行中の列車のなかで、世界各地からやってきた音楽家たちと出会うはずだった。しかし、地下鉄での撮影許可がとうとう降りなかったため、撮影は秘密裏にすすめた。気がついたら地上に追放されていた。しかし、アンダーグラウンドな気分はそのままだった」と語るホニグマン監督の、彼らを見つめる目の暖かさが印象的な作品。

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掃いて、飲み干せ

Sweep It Up, Swig It Down ('99 優秀賞)
監督:ゲルト・クロスケ
ドイツ/1997/ドイツ語/カラー、モノクロ/35mm(1.66)/70分/日本語・英語字幕あり

クロスケ監督が以前撮った短編ドキュメンタリー『Sweeping』('90)にライプツィヒの道路清掃人として出演していたガビ、ステファン、ヘンリーそれぞれのその後の生活を追った作品。前作のモノクロ映像が誰もいない劇場のスクリーンに投影され、今よりも機敏に働く彼らの清掃作業の様子を映し出している。すでに彼らは老齢の域に達し清掃作業を辞めたが、いまだに生活は安定していない。監督は、日の当たらない人生を送る人々や、高速で変化し続けるメディア社会に取り残された人々の人生にふれることで、様々な葛藤や問題を抱えた厳しい生活を個々に提示しながら、テンポが速くリスクの高い、現代の日常のいとなみを描いて行く。

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ハッピー・バースデー、Mr. モグラビ

Happy Birthday, Mr. Mograbi ('99 優秀賞)
監督:アヴィ・モグラビ
イスラエル、フランス/1999/ヘブライ語、アラビア語、英語/カラー/16mm/77分/日本語・英語字幕あり

ドキュメンタリー映画作家アヴィ・モグラビは、仕事で母国イスラエルの建国50周年記念の映画製作を依頼される。それと同時にモグラビはパレスティナ人プロデューサーからも彼らの視点によるイスラエルの裏面史ともいえる記録映画を依頼されてしまう。ユダヤとアラブ。彼の立場は複雑である。これらの出来事のなかでモグラビは自身の42回目の誕生日がイスラエル独立記念日と同じ日であると気づく。自国の歴史と自分史を映画製作という方法で問い直すことによって、そこに新たに現れてくるイスラエルのという国の諸問題、そして断層……。斬新で迫力に満ちた新しいタイプのプライベート・ドキュメンタリー。

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ライオンのなかで暮らして

Living Amongst Lions ('99 市民賞)
監督:シグヴェ・エンドレセン
ノルウェー/1998/ノルウェー語/カラー/35mm(1.66)/83分/日本語・英語字幕あり

ガンに侵された3人の若者、27歳のイングン、21歳のラーシュ、21歳のクリスティンを1年半にわたって記録。彼らの友人たちを交えながら、不幸にも若くして死に向かい合った彼らの考えや感情を通して、生の価値と生きることの意味を問いかける。友人との楽しい語らい、バカ騒ぎ、旅行、そして結婚など、若者の誰もがすることの裏側に、近い将来の死への旅路を覚悟せざるを得ない心境……。1978年からドキュメンタリー映画を撮ってきたエンドレセン監督は、彼らの希望と絶望、夢と現実、安らぎと苦悩などに随伴しながら、彼らの生の証を再構成し、生と死の意味を描き出している。

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加速する変動 

Accelerated Development
監督:トラヴィス・ウィルカーソン
アメリカ/1999/英語、スペイン語/カラー、モノクロ/16mm/56分/日本語・英語字幕あり

キューバの代表的ドキュメンタリー映画作家サンチャゴ・アルヴァレスの生涯を通して、激動の20世紀を描いた作品。アルヴァレス監督(1919〜1998)は、1961年以来、キューバ社会と抑圧された第三世界を撮り続けながら、実験精神に富んだドキュメンタリー映画を発表、海外でも高い評価を受けてきた。この映画は、アルヴァレス監督の生涯を10章に分け、アルヴァレス監督の表現方法を用いながら、彼の作品断片、言葉などを引用し、20世紀の激動する世界を新たな視線で再構築した実験的ドキュメンタリー。ウィルカーソン監督は1969年生まれ。本作が初の長編作品。

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瘋狂英語 (クレイジー・イングリッシュ)

Crazy English
監督:張元(チャン・ユアン)
中国/1999/北京語、英語/カラー/35mm(1.37)/90分/日本語・英語字幕あり/山形県内上映のみ(県外上映についてはお問い合わせください)

大変ユニークな(クレイジーな)方法で英語を教えるリ・ヤン。1988年、19歳の時に全国的に活動を始めた彼は、これまで中国の60の省や市を訪問し、スタジアム、紫禁城、万里の長城、盧溝橋、北京大学、上海の埠頭、湖南省の村など何千もの人の前で講義をした。リ・ヤンは英語を自由に使いこなせる力が強い中国を作り上げると信じ、自尊心や強い愛国心に満ちた講義が行われる。

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イラン式離婚狂想曲 

Divorce Iranian Style
監督:キム・ロンジノット、ジバ・ミル=ホセイニ
イギリス、イラン/1998/英語・ペルシャ語/カラー/16mm/80分/日本語・英語字幕あり

イランのテへラン市中央に位置する家庭裁判所が舞台。男には自由意志による離婚が認められ、女にはその権利がないイランで、“妻”が離婚を申し立てることの難しさ。「この映画は、結婚が破綻する時の苦痛と喜劇を扱い、6人のごく普通の女性が人生の難しい一時期を乗り越える姿を追います。彼女たちは、欲しいものを得るために機転、魅力、忍耐、理性、論争、さらには同情をかうための嘆願といった、ありとあらゆる手段に訴えるのです」とジバ・ミル=ホセイニ監督は語る。家族の問題にとどまらず、自由の意味を観るものに問う、貴重な示唆に満ちた作品。

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ハイウェイ 

Highway
監督:セルゲイ・ドヴォルツェヴォイ
フランス、ドイツ/1999/カザフ語/カラー/35mm(1:1.66)/54分

中央アジアとモスクワを結ぶハイウェイを、古いバスで旅する大道芸人の家族。両親と1歳から16歳まで6人の子供からなる一家は、カザフスタンのステップ地帯を走りながら、ハイウェイ沿いの村や集落で大道芸を見せて生計を立てている。そんな一家の日常的な営みを、カメラは淡々と撮っていく。そこにあるのは、中央アジア独特の時間の流れと空間の連なりであり、そのユニークな描写によって示されるのは、ソ連崩壊後の厳しい社会変動があろうとなかろうと、生活の営みが厳然と存在するという確かな証ともいえる。

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天使の家で

In the House of Angels
監督:マルグレート・オリン
ノルウェー/1998/ノルウェー語/カラー/35mm(1.66)/97分/日本語・英語字幕あり

人間にとって老後をいかなる形で過ごせるかということは、その人間の人生のゴールをどのような形で締めくくるかというテーマに繋がり、これは社会環境をはじめ宗教、哲学などの問題を含む難しいテーマであり容易に解答は出せないだろう。それにしても現実は厳しい。この映画はあるノルウェーの老人ホームが舞台となっている。カメラはそこに入所したアイナールという、60年も連れ添った妻と同じホームで別れて暮らす男性を終始、冷静な視点で観察し記録する。そこからやがて、老人福祉はどこまで当事者に寛容な場を提供できるかという、個人的にして世界共通の問題が静かに問い掛けられていくのである。オリン監督は1970年生まれ。本作が初の劇場公開作。

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死神博士の栄光と没落

Mr. Death: The Rise and Fall of Fred A. Leuchter, Jr.
監督:エロール・モリス
アメリカ/1999/英語/カラー/35mm(1.85)/91分/日本語字幕あり

電気椅子、致死量薬物注射器、ガス室、絞首台を設計し改良を施している自称処刑工学者フレッド・ロイヒター。1988年、『600万人は本当に死んだのか?』の著者エルンスト・ツンデルは、ナチスによるガス室の「疑わしい」使用実態について、ロイヒターに科学的な調査を依頼する。ロイヒターはアウシュビッツに赴き、密かに壁のかけらを持ち去り分析にかけた。このサンプルは、ホロコーストがでっち上げられたものであるという主張の証拠として使用された。エロール・モリス監督は、35mmフィルムや8mm、ビデオ、歴史的記録フィルム等を駆使し、類い稀な《ミステリー・ストーリー》をつくり上げた。

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2H

2H
監督:李纓(リ・イン)
日本/1999/中国語、日本語/カラー、モノクロ/35mm(1.37)/120分/日本語・英語字幕あり/山形県内上映のみ(県外上映についてはお問い合わせください)

映画は2人の中国人、中国から日本に亡命してきた将軍・馬(マー)老人と、中国から日本に流れてきた女流画家・熊(ション)の東京での暮らしを描く。それぞれに孤独を抱えた2人の友情、そして繰り返される衝突……。95歳の馬老人はやがてひとり死を迎えていく。ドキュメンタリーとフィクションの狭間で繰り広げられる世紀末東京の物語。監督李纓は1963年中国生まれ。1984年から中国中央電視台(CCTV)のディレクターとしてドキュメンタリーを製作、1989年日本留学。日本のテレビ局のドキュメンタリー番組などを手掛ける。本作品は彼の初の長編映画。