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貸出作品リスト:YIDFF '89


※監督の下段のデータは、製作国/製作年/使用言語/色/フィルム種別(35mmの場合のスクリーンサイズ)/上映時間/字幕

YIDFF '89 インターナショナル・コンペティション出品作品


ルート1

Route One/USA ('89 山形市長賞)
監督:ロバート・クレイマー
フランス/1989/英語/カラー/35mm(1.85)/255分/日本語字幕あり

10年ぶりにアメリカに戻ったロバート・クレイマー監督と友人が、ルート1(国道1号線)を旅するアメリカン・ロード・ムーヴィー。65時間に渡って回したフィルムを4時間にまとめた。内容は重厚だが、どことなく軽快な雰囲気を併せ持っている。閑散とした風景のなかで出会う人々が、アメリカの象徴なのか、実在する人物そのものか見分けがつかないが、同行者となった観客は、その顔をいつまでも覚えているに違いない。

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井戸の上の眼

The Eye Above the Well ('89 優秀賞)
監督:ヨハン・ファン・デル・コイケン
オランダ/1988/オランダ語、マラーヤラム語/カラー/16mm/91分/日本語字幕あり

ファン・デル・コイケンは、南インドのケーララ地方を旅しながら、都市と農村におけるインド人の生活を、動く絵巻のように描写していく。カメラが細かい部分を次々にとらえ、それに彼のイメージを編み込んで、作品は荘重なリズムと緻密な美的センスを感じさせるものに仕上がった。巡り会ったグール(ヒンドゥー教の導師)に監督自身をオーバーラップさせ、ひとりの芸術家として自分の現代的手法と、インド芸術の伝統的側面を結びつけようとしている。

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ノーボディ・リスンド

Nobody Listened ('89 優秀賞)
監督:ネストール・アルメンドロス、ホルヘ・ウリャ
アメリカ/1988/スペイン語、英語/カラー/35mm(1.33)/117分/日本語字幕あり

キューバから自由主義圏に亡命した政治家、軍人、民衆の証言を通して、共産圏が直面している深い政治的矛盾を取り上げ、人権の基本を守るように第三世界に訴えた、おそらくこれまでで最も熱のこもったドキュメンタリー映画である。カストロ政権下で人権蹂躙に苦しむ犠牲者や証言者を、カメラはスクリーンの人物が直接観客に語りかけてくる感じを出すために(主に上半身だけを映す“トーキングヘッド”インタビュー形式)細心の注意を払って撮影された。

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精神の武器

Weapons of the Spirit ('89 優秀賞、市民賞)
監督:ピエール・ソヴァージュ
アメリカ、フランス/1989/英語、フランス語/カラー/16mm/90分/日本語字幕あり

第二次世界大戦中、ナチス・ドイツに占領されたフランスでは時の政権がユダヤ人を強制収容所に入れる宣言に調印したが、山間部にある小さな村ル・シャボンは違っていた。プロテスタントの牧師が先頭に立ち「精神の武器」をもって暴力に抵抗すべく、キリスト教徒である五千人の農民たちが五千人のユダヤ人を4年の間かくまい続けたのである。なぜ、多くのユダヤ人を助けたのか。答えは、作品に登場する目撃者によって明かされていく。

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時は名前を持たない

Time Has No Name ('89 特別賞)
監督:ステファン・ヤール
スウェーデン/1989/スウェーデン語/カラー/35mm(1.66)/61分/日本語字幕あり

監督は、自分の一連の作品を「映画になったブリューゲルの絵」と表現している。この作品の舞台も、年老いた農夫とその妻が住む農場である。田園風景が広がるスウェーデンの田舎の静かな生活といった絵画的イメージに、残りの人生を苛酷な経済的窮乏の中で生き延びる農夫たちの現実をありのままの描写でつけ加え、詩的な美学とリアリズムを見事に融合させた。ヨーロッパの偉大な画家たちを彷彿させる銀幕のための映画である。

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家族写真

Over the Threshold ('89 奨励賞)
監督:手塚義治、クリスティン・ロイドフィット
日本、イギリス/1989/日本語、英語/カラー/16mm/60分/日本語字幕あり

この作品は日本人と西洋人の国際結婚についての映画で、監督はイギリス国立映画テレビ学校在学中に知り合った夫婦のコンビである。異なる文化圏からやって来たことが常に関心と議論の源となっていた二人が日本に里帰りする。妻のクリスティンの視点を通して、ごく普通の日常生活のなかで異国の人々と適応することがどのような意味があるかを探っていく。その中で見事に描かれるのは、二人の結婚によって新しくクリスティンの親戚となった日本人たちの姿である。

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アズル

Azul
監督:ローランド・レシャルディ=ラウラ
アメリカ/1988/スペイン語/カラー/16mm/104分/日本語字幕あり

ドキュメンタリーはその主題として、即効性があり、時事性に富んだ問題を取り上げがちだ。この作品は、そんな常識とはまったく異なる認識から出発している。中米の国、ニカラグアの人々の間に根強く生きる詩を愛するこころ。一見ニカラグア革命の流行遅れの映画のように見えるこの作品は、不思議な雰囲気と明るさの詩的世界からユニークなニカラグアの文化現象を提示している。

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ロッツ・ゲットー

Lodz Ghetto
監督:アラン・アデルソン、キャスリン・タヴェルナ
アメリカ/1988/英語/カラー、モノクロ/35mm(1.66)/103分

フィクションとドキュメンタリーとをつなぎ合わせたユニークな作品である。テーマは第二次世界大戦とホロコースト。ポーランドを占領したナチス・ドイツが20万人のユダヤ人を収容所に集めて、奴隷として使役した。ほとんどの者は死の列車に乗せられ、最後まで生き残ったのは、わずか800人だった。製作者は、残された日記、手記、スチール写真、そしてニュースフィルムなど膨大な資料を集めてこの時代の歴史を再現し、一種のサスペンス・ドキュメンタリーに仕上げている。

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オリ

Ori
監督:ラケル・ガーバー
ブラジル/1989/ポルトガル語/カラー/35mm(1.33)/93分/日本語字幕あり

「オリ」とは、頭の意味、歴史・記憶に関する黒人の意識のこと。この作品はブラジル黒人の闘争を対象にし、ブラジルでの奴隷廃止百年祭を契機にアフロ・アメリカン文化についての国民的論争が起こった1988年11月で終わっているが、監督が提示するテーマ(植民地支配以後の文化的・社会的アイデンティティの模索と政治権力の獲得)は、被抑圧者や奴隷化された少数派誰もが共鳴できるものである。

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フィリピン、私のフィリピン

Philippines, My Philippines
監督:クリス・ナッシュ
オーストラリア/1988/英語、タガログ語/カラー/16mm/72分/日本語字幕あり

マルコス政権崩壊後、アキノ政権に変わって3年がたった。しかし、フィリピンの経済疲弊と人権侵害は依然存在し、ますますひどくなっている。監督は、政府と共産党新人民軍(NPA)の両方の代表者に、この国の状況に対するそれぞれの見方を語ってもらい、討論の場を提供する。製作者は客観的かつ包括的なものを目指して観客に「フィリピンがとてつもない変化と大変動に向かっている」と感じさせる結末を見せている。

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プレーントーク&コモンセンス

Plain Talk and Common Sense (Uncommon Senses)
監督:ジョン・ジョスト
アメリカ/1987/英語/カラー、モノクロ/16mm/117分/日本語字幕あり

監督ジョストはこの自作を“エッセイ”と呼ぶ。アメリカの文学と思想の伝統に深く根ざしたこの作品は「アメリカ的なもの」を広範囲に引き出し、フォークロアからアメリカ社会、政治学的な思想の詩的表現、アメリカの言葉の歴史、さらに企業の宣伝や統計調査へと目を向けながら、現代アメリカの状況への問いかけがなされていく。作品は11のパートから構成され、自由奔放でフォトジェニックな映像は一見に値する。