貸出作品リスト:YIDFF 2009
『要塞』『オート*メート』『私と運転席の男たち』
『私はフォン・ホフレル(ヴェルテル変奏曲)』
『稲妻の証言』『アポロノフカ桟橋』『ダスト ―塵―』
アジア千波万波:『アメリカ通り』『されど、レバノン』
※監督の下段のデータは、製作国/製作年/使用言語/色/フィルム種別(35mmの場合のスクリーンサイズ)またはビデオ(ビデオフォーマット)/上映時間/字幕
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YIDFF 2009 インターナショナル・コンペティション出品作品
包囲:デモクラシーとネオリベラリズムの罠
Encirclement--Neo-Liberalism Ensnares Democracy (2009 ロバート&フランシス・フラハティ賞)
監督:リシャール・ブルイエット
カナダ/2008/フランス語、英語/モノクロ/ビデオ(ブルーレイディスク、DVCAM)/160分/日本語・英語字幕あり
■アメリカを中心に世界中を席巻し、今や地球全体の政治経済を支配しようとしている新自由主義(ネオリベラリズム)イデオロギー。装われた“自由競争”主義による経済優先政策。その基盤をなすエリート主義と帝国主義支配の原理の起源と現状、さらにはそれを支えるメディア的制度を批判的に再構成するインタビュー・ドキュメンタリー。モノクロ映像によって提示されるスリリングな応酬によって、60年にわたる新自由主義の歴史を描ききり、リーマン・ショック以降の世界への示唆に富む。
忘却
Oblivion (2009 山形市長賞)
監督:エディ・ホニグマン
オランダ、ドイツ/2008/スペイン語/カラー/ビデオ(DVCAM)/93分/日本語・英語字幕あり
■ペルーのリマで生きる老バーテンダー、レストラン給仕や革職人、路上パフォーマンスで日銭を稼ぐ若者や子どもたち。経済的に政治的に困難な状況を生き続けるために人々が忘れていること、忘れえないことに耳を傾け詩のように編まれた本作。バーテンダーの作るカクテルや大道芸人たちの小道具、記憶力をよくするカエルジュースなど彼らから作りだされる産物と言葉の狂想曲は、喪失感と曖昧な未来の中にある灯火だ。『メタル&メランコリー』(YIDFF '95山形市長賞)『アンダーグラウンド・オーケストラ』(YIDFF '99審査員特別賞)『クレイジー』(YIDFF 2001)のエディ・ホニグマン監督作品。
Z32
Z32 (2009 優秀賞)
監督:アヴィ・モグラビ
イスラエル、フランス/2008/ヘブライ語/カラー/35mm(1:1.85)/85分/日本語・英語字幕あり
■2人のパレスティナ人警官がイスラエル軍に殺された事件に関与した元兵士。その彼が恋人と一緒にカメラに向かって証言する姿に、その事件を歌にして自ら歌う監督自身の姿を交錯させながら、イスラエル人のアイデンティティを問いかける。元兵士とその恋人の顔を隠すマスクや画像処理が不気味な雰囲気を醸し出す。『ハッピー・バースデー、Mr. モグラビ』(YIDFF '99優秀賞)のアヴィ・モグラビ監督作品。
要塞
The Fortress (2009 優秀賞)
監督:フェルナン・メルガル
スイス/2008/フランス語ほか/カラー/35mm(1:1.85)/105分/日本語・英語字幕あり
■スイスの難民受け入れ施設。そこには亡命を希望する人々が、当局の決定を待つ間一時的に収容されている。様々な理由で故国を離れ、生きる場所を求めて世界中から流れ着いた者たちと、受け入れの是非を検討する職員たち。施設内に生まれるささやかな交流。日常的に“選別”が行われている場を見つめ続けることによって、今日の難民問題の現実を浮き彫りにする。
オート*メート
AUTO*MATE
監督:マルチン・マレチェク
チェコ/2009/チェコ語/カラー/ビデオ(DVCAM)/90分/日本語・英語字幕あり
■自動車の抑制を主張し、プラハの街をより活き活きと元気にする文化的・社会的運動、「オート*メート」。6年の間、政治家たちとのやりとり、グループを組んでの自転車走行、話し合い、展覧会、討論会などなど、数多くの出来事に、カメラもちょうど居合わせた。果たしてプラハ初の“ノー・マイカー・デー”は成功するのか? ユーモアと遊び心に溢れた、テンポよい陽気なエッセイ映画。
私と運転席の男たち
Driving Men
監督:スーザン・モーグル
アメリカ/2008/英語/カラー/ビデオ(DVCAM)/68分/日本語字幕あり
■1970年代よりフェミニストの映像作家として活動するスーザン・モーグルが50歳を迎えて、自らの軌跡をふりかえるべく、関わりのあった男性たちに取材していく。車を運転する男たちを助手席から撮影するというユニークなスタイルのもと、自らの作品のクリップを織り交ぜながら、アメリカ激動の時代を体験した彼女の人生を浮かび上がらせる。ユダヤ人が得意とする露悪的ユーモアに彩られた、知的かつ聡明な仕上がりの「マイ・ウェイ」となっている。
私はフォン・ホフレル(ヴェルテル変奏曲)
I am Von Höfler (Variation on Werther)
監督:フォルガーチ・ペーテル
ハンガリー/2008/英語、ハンガリー語/カラー、モノクロ/ビデオ(DVCAM)/160分/日本語字幕あり
■ハンガリーの旧家フォン・ホフレル家の250年にわたる物語を、老人の一人語りからはじまり、写真やホームムービー、手紙、そして祖先がモデルだという『若きヴェルテルの悩み』の映画化とともに描いていく。それら個人的な記憶=アーカイブから浮かびあがるのは、ある一族の歴史であり、歴史に翻弄されるハンガリーという国の軌跡である。『アンゲロスのフィルム』(YIDFF 2001)のフォルガーチ・ぺーテル監督作品。
稲妻の証言
The Lightning Testimonies
監督:アマル・カンワル
インド/2007/英語ほか/カラー、モノクロ/ビデオ(DVCAM)/113分/日本語・英語字幕あり
■1947年のインド・パキスタン分離独立から現在まで続く、女性への性暴力を繰り返している対立の歴史を、ナレーション、字幕、スケッチ、写真、アーカイブ映像など手法を駆使した映像表現で辿り、暴力の残虐さと女性たちの尊厳ある強靭な精神を描く。そこにあるのは名誉、憎悪、屈辱、そして尊厳と抗議などが発露する場としての身体である。
アポロノフカ桟橋
The Pier of Apolonovka
監督:アンドレイ・シュヴァルツ
ドイツ/2008/ウクライナ語/カラー/ビデオ(ブルーレイディスク、DVCAM)/85分/日本語・英語字幕あり
■ウクライナのセヴァストポリ湾のひと夏。巨大な軍艦が停泊する前で、海底からスクラップを拾い上げて日銭を稼ぐ男たち、桟橋で飛び込みに興ずる若者たち、早朝からのんびりと泳ぐ老人たち。緩い開放感と停滞感が同居する小さな港町の日常が積み重ねられる。夏の匂いとともに、老若男女の生々しい姿が立ち上がり、刹那的に流れるひと夏を生きる人々の美しさに引き込まれる。
ダスト ―塵―
Staub (Dust)
監督:ハルトムート・ビトムスキー
ドイツ、スイス/2007/ドイツ語/カラー、モノクロ/35mm(1:1.85)/94分/日本語・英語字幕あり
■プロジェクターや部屋にたまる埃、鉱山の採掘で舞う粉塵、工場で製造される顔料の微粒子、雨に洗い流される樹木に堆積した塵、9.11に起こったマンハッタン貿易センタービルの崩壊やミサイルの爆発で巻き起こる凄まじい粉塵の嵐、あるいは宇宙のスターダスト……。世界に充満するさまざまな塵の様相を、技術者や科学者の考察を交えて観察していく。2001年に審査員を務めたハルトムート・ビトムスキー監督作品。
YIDFF 2009 アジア千波万波出品作品
アメリカ通り
American Alley (2009 小川紳介賞)
監督:キム・ドンリョン
韓国/2008/韓国語、英語、ほか/カラー/ビデオ(DVCAM)/90分/日本語・英語字幕あり
■米軍基地が面積の約40%を占める東豆川(トンドゥチョン)市の一角にある「アメリカ通り」。ここで40年以上働いてきた韓国人女性「K」の身体に刻まれた基地村の歴史を紐解きながら、ロシア人、フィリピン人女性たちがクラブで働き、「不法就労」の摘発・強制送還が絶えない現在を映す。米軍基地という構造的(性的)暴力と背中合わせに、彼女たちは米兵や同郷の女性たちとの生活基盤を築き、未来を自らの手で切り開き、この居場所に生を託す。
されど、レバノン
This is Lebanon (2009 奨励賞)
監督:エリアーン・ラヘブ
レバノン/2008/アラビア語、フランス語/カラー/ビデオ(DVCAM)/58分/日本語・英語字幕あり
■紛争が絶え間なく続くレバノンでは、宗派(政党)に関わらず、誰もが傷つき、愛する人を奪われてきた。2006年8月のベイルート。20日間以上、イスラエル軍の爆撃が続く中、30代の監督や友人たち、その親たちの平和を求める思いと行動が行き違う。キリスト教マロン派である監督は、一家や友人たちを映画制作に巻き込み、「これがレバノンなのだ」というあきらめにも似た混沌とした日常を生きる個人の本音をさらけ出す。