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イラン式離婚狂想曲
Divorce Iranian Style

イギリス、イラン/1998/英語、ペルシャ語
カラー/16mm/80分

監督:キム・ロンジノット、ジバ・ミル=ホセイニ
撮影・製作:キム・ロンジノット
編集:バーリー・ヴィンス
録音:クリスティン・フェルス
ナレーター:ジョアンナ・ローゼンタール
製作会社・提供:トウェンティース・センチュリー・ヴィクセン (
Twentieth Century Vixen)
13 Aubert Park, London N5 1TL, UK
Phone & Fax:44-171-359-7368



キム・ロンジノット
Kim Longinotto


英国国立映画テレビ学校でカメラと演出を学ぶ。在学中に、寄宿学校を批判的に考察した『Pride of Place』を製作。卒業後『Cross and Passion』、『Underage』を製作。続いて『Fireraiser』をクレア・ハントと共同製作。更に舞踊家で人権活動家の花柳幻舟を扱った『幻舟』、『Hidden Faces』、日本女性についての『東京良妻』もハントと共同製作。その後、宝塚歌劇団についての『ドリームガールズ』や、男として生きる女性を扱った『新宿ボーイズ』等を製作。現在も日本の女性についての映画に取り組んでいる。

ジバ・ミル=ホセイニ
Ziba Mir-Hosseini


文化人類学者。ロンドン在住。ジェンダーと開発の問題に関するフリーランスのリサーチャーとして、イラン、モロッコにおいて広く活躍。イスラム社会における家族法の変化や、ジェンダー問題の論争を追っている。初の著書『Marriage on Trial(裁かれる結婚)』は、イランとモロッコにおけるイスラムの家族法を研究したもの。さらに、プリンストン大学出版局より新作『Feminism and the Islamic Republic: Dialogues with the Ulema(フェミニズムとイスラム法:ウラマーとの対話)』を出版予定。

その建物には2つの入り口がある。一方には、肩を怒らせ階段を駆け上がる男たちの姿があり、もう一方には、チャドルに身を包み、俯いて歩む女たちの影が揺らめく。性差によるダブルスタンダードを隠そうともせず、むしろ誇示するかのような家庭裁判所の威容は、イランという国家の重層的な差別 の構造を象徴し、その深淵に分け入る女たちの苦悩を垣間見せる。
男には自由意志による離婚が認められ、女にはその権利がないイランでは、“妻”が離婚を申し立てるためには、実人生の総てを賭けざるを得ない。権利を剥奪された女たちは、抑圧の象徴であるチャドルの裾を翻し、声の続く限り、自由を渇望するかのように叫び、泣き、訴え、微かな希望にすがろうとする。
これまで、女性のみによる撮影を一貫して行ってきたロンジノットは、今回、人類学者であるミル=ホセイニと共に困難な課題に挑み、予想以上の結果 を引き出したと言えるだろう。
弱者の痛みや被差別者の抑圧状況を訴えるだけでなく、この淡々とした映像には、女たちの意志と未来を浮上させる底深い揚力が潜んでいる。無個性なチャドルの下の表情は、権利を主張する度に豊かになり、秘められた強烈な個性が輝き始める。
単に家族制度の問題にとどまらず、改めて、自由の意味を観る者に問う、貴重な示唆に満ちた作品である。
[向後友恵]

【監督のことば】
キム・ロンジノット
サルマン・ラシュディが姿を隠して以来、英国のテレビではイランに関する数多くのドキュメンタリーやニュース報道が放映されました。どれも硬派の時事番組で、殉教者の母親たちや革命守衛隊、アヤトラやファトワーを取材していました。ほぼ同じ頃、キアロスタミなどイラン人監督による劇映画も英国で公開されるようになりました。これらの映画は、普通 の人々についての、詩的で、おだやかで、パーソナルな作品で、これら2種類の映像作品群は、まるで別 の国からやってきたもののようでした。私は、イラン女性を個人としてとりあげ、英国の観客が他人事でなく親しみを感じることができるような長編映画を作ろうと決意しました。そんな時ジバに出会い、彼女の離婚裁判所における研究のことを聞き、理想的な主題だと思いました。この映画を撮るための許可を得るのに2年半かかりました。

ジバ・ミル=ホセイニ

『イラン式離婚狂想曲』製作のアイディアは、1996年、キム・ロンジノットと私が出会った時に生まれました。私たちは2人とも、西洋のメディアによるイスラム世界のステレオタイプ的な観方に不満を感じていました。また、キムはずいぶん前からイランを舞台にした映画を作りたいと希望していました。キムは、イスラム法のもとでの離婚を扱った私の本『Marriage on Trial』を読んでいて、そのテーマで映画をつくろうと提案してきました。イラン人であり文化人類学者の私は、彼女の提案を歓迎し、一緒に映画を作ることにしました。
この映画は、結婚が破綻する時の苦痛と喜劇を扱い、6人のごく普通の女性が人生の難しい一時期を乗り越える姿を追います。彼女たちは、欲しいものを得るために機転、魅力、忍耐、理性、論争、さらには同情をかうための嘆願といった、ありとあらゆる手段に訴えるのです。
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