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アンジェラ・リッチ・ルッキ 追悼

YIDFF 2019 クロージング作品
アンジェラの日記 ― 我ら二人の映画作家

Angela's Diaries: Two Filmmakers
I diari di Angela--Noi due cineasti

イタリア/2018/イタリア語、ロシア語、アルメニア語、フランス語、英語/カラー/デジタル・ファイル/125分

監督、製作:イェルヴァン・ジャニキアン、アンジェラ・リッチ・ルッキ
脚本:イェルヴァン・ジャニキアン
編集:イェルヴァン・ジャニキアン、ルカ・プレヴィターリ
録音:マッシモ・マリアーニ
製作会社:Yervant Gianikian & Angela Ricci Lucci's Private Archive
提供:イェルヴァン・ジャニキアン

40年以上にわたり、ふたりで映画制作に取り組んできたイェルヴァン・ジャニキアンとアンジェラ・リッチ・ルッキ。2018年2月、リッチ・ルッキが亡くなった後に、その日記を読み返すジャニキアン。彼女は、毎日のように小さなノートに日記をつけていた。文章と添えられたイラスト。内容は、公的な出来事から私事、ミーティングや読んだ本に至るまで、すべてが記録されていた。ロシア、イラン、アルメニアへの旅。映画を通じて出会った人びと。作品の上映、観客の反応。日記のテキスト、イメージに彼らの日常を記録した8ミリフィルム、ビデオのフッテージが加わる。編み直された彼らの個人的な歴史にその創作スタイルが重なり、妥協することのない芸術への姿勢、人生に対する愛が刻まれる。



アンジェラ・リッチ・ルッキのために

 撮影された素材、そして日記さえも、何よりも私たちの私的な生活を物語る。それらは、暴力、植民地主義、狩猟の映画を撮りながら、私たちが何を生きていたのかを明らかにする。私たちの映画は、第一次世界大戦が勃発する時代の、世界に対する1つの描写だ(『南極から赤道まで』)。歴史的な出来事が起こる世界の中で、日々の暮らしを記録することが、私たちの旅の目的だった。あの1989年から91年までの年月、私たちはロシアにいて、そしてコーカサスで過ごした(『Men, Years, Life』)。映画の中に、私たちのミッションが凝縮されている。アンジェラへの約束がそこにある。それはアンジェラの情熱的な筆致を通して光を放つ。彼女の言葉は、暴力的な世界の狭く暗い目に、何の障壁もなく交差した。

イェルヴァン・ジャニキアン


イェルヴァン・ジャニキアン、
アンジェラ・リッチ・ルッキ

ともに1942年生まれ。アルメニア人の両親のもとにイタリアで生まれたジャニキアンは、ヴェネチアで建築を学んだ。イタリアのエミリア・ロマーニャ州に生まれたリッチ・ルッキは、オーストリアで絵画制作を学び、オスカー・ココシュカに師事した。1970年代半ばより、ミラノに拠点を置きつつ、ふたりで映画制作を開始。アーカイヴをくまなく調査し、ファウンド・フッテージを集め、染色、再編集を行う手法により、20世紀初頭の戦争と植民地を対象にした作品を数多く発表。2015年、国際フィルムアーカイヴ連盟によるFIAF賞を受賞し、パリのポンピドゥー・センターで大規模な回顧展が開催されたほか、これまで世界各地で特集上映が企画されてきた。代表作に、『南極から赤道まで』(1986)、『Prigionieri della Guerra』(1995)など。2018年、リッチ・ルッキが逝去。本作に続き、『I diari di Angela--Noi Due cineastai. Capitolo secondo』と題された作品が2019年のヴェネチア国際映画祭で上映されている。