第2部 アフリカの抱える課題 それぞれの視角
アフリカほど日々メディアで伝えらえるその姿と、実際の姿が乖離している場所も珍しいだろう。依然、難題が山積する大陸において、現場に身をおく者だからこそ見えてきた視点、歴史を共に生きた者だからこそ持ちえた視点など、それぞれ独自の視点から問題に迫る姿を紹介する。
コンゴ川 闇の向こうに
Congo River, Beyond DarknessCongo River, au-delà des ténèbres
- ベルギー／2005／英語、フランス語／カラー／デジタル・ファイル／116分
監督：ティエリー・ミシェル
撮影：ミシェル・テシー
編集：マリー・カントン
録音：リーヴェン・カランス
音楽：ロクア・カンザ
ナレーション：ライ・ムダバ・ヨカ、ティエリー・ミシェル、オリヴィエ・シェッソン
製作：クリスティーヌ・ピロー、セルジュ・ラルー
提供：Les Films de la Passerelle
『モブツ〜ザイールの王』、『コンゴ 鉱物資源争奪戦』など、コンゴ民主共和国（DRコンゴ）が抱える歴史・社会的な問題に真正面から直球勝負で取り組んできたベルギーの監督ティエリー・ミシェル。2005年発表の本作では、DRコンゴ、ひいては中央アフリカの象徴的存在とも言えるコンゴ川を旅しながら、ポーランド生まれのイギリスの作家ジョゼフ・コンラッドが語った「闇」の向こうを描こうと試みた。コンゴのスター歌手、ロクア・カンザの曲にのせて、河口から源流までをたどる旅において、数々の神話、リヴィングストンやスタンリー卿ら探検家、旧宗主国ベルギーのレオポルド1世やボードゥアン1世、そして独立後の統治者たるルムンバやモブツ、カビラなど、アフリカの心臓部の歴史を作ってきた伝説的な人物たちが写し出されていく。
協力：アンスティチュ・フランセ東京
インタビュー
あるアフリカの選挙
An African Election- ガーナ、アメリカ、スイス／2010／英語、アカン語／カラー／ デジタル・ファイル／86分
監督：ジャレス・メルツ、ケヴィン・メルツ
撮影：ケヴィン・メルツ、トファー・オズボーン
編集：サミール・サムペルシ
音楽、作曲：バトリック・キルスト
エグゼクティブ・プロデューサー：フランコ・アグストニ、ブリジット・アグストニ
製作、提供：ジャレス・メルツ
共同製作：ティジアナ・スダーニ、ルイゼラ・レアリーニ、シルヴァナ・ベゾラ
2008年のガーナの大統領選挙をその舞台裏に密着して描き、アフリカにおける選挙のあられもない姿や、しかしそこから見えてくる政治家や市民たちのプライド、人間性までをも捉えた話題作。先進国に対して己を正当化しようともがく第三世界の民主主義が持つ複雑怪奇な政治的装置、それが選挙だ。ほぼ3ヶ月間にわたり大統領選のキーパーソンを追うことで、前例のないインサイダー的な視点で、ガーナという社会を動かしている政治的・経済的・社会的な力を描くことに成功した作品である。
ロバート・ムガベよ、いったいどうしたのか？
Robert Mugabe . . . What Happened?- イギリス、フランス、南アフリカ／2011／英語／カラー／デジタル・ファイル／84分
監督：サイモン・ブライト
撮影：ニック・ホフメイヤー、エスコ・メツォラ
編集：ジェニー・ヒックス、ジョエル・ジャコヴェラ、ロネル・ルーツ、ジャック・マレ
整音：バリー・ダネリー
エグゼクティブ・プロデューサー：ゲイリー・エドワーズ、ジェリー・ロスウェル
製作：マイケル・オーレ
共同製作：ラハド・デサイ、クレール・ラジョマール、マーティン・ピーパー
ロバート・ムガベという男は、かつてテロリストとして断罪されるも、その後エリザベス女王によって一度はナイトの爵位を与えられ、30年以上にわたり権力の座についているという人間だ。本作はムガベに最も近しい人々へのインタビューを通じて、建国の英雄ムガベに何が起こったのかを探っていく。南部アフリカ地域のアーカイヴの独自のコレクションを組み立て、ムガベの数十年の統治期間に肉迫する。ジンバブエという国家と、ムガベという男についての複雑な、しかし説得力のある視点を提供するドキュメンタリーだ。
アントノフのビート
Beats of the Antonov- スーダン、南アフリカ／2014／アラビア語／カラー／Blu-ray／68分
監督、撮影：ハジュージ・クーカ
編集：ハジュージ・クーカ、カリド・シャミス
製作：ハジュージ・クーカ、スティーブン・マルコヴィッツ
提供：Big World Cinema
スーダンは1956年の独立以来、ほとんど絶えることなく内戦状態にあり、2011年には二つの国に分裂した。南スーダンとの国境地帯では、ロシア製の戦闘機アントノフがヌバ山麓の居住区を無差別に空爆している。だが信じられないことに、国境に隣接するブルーナイル州の人びとは不幸な出来事に音楽で応じ、生き残ったことを祝うために歌い踊るのだ。本作は、音楽がいかにコミュニティを束ねるものであるか探求し、人びとの希望、文化的な伝統や遺産を消し去ろうとする勢力からそれらを守る苛烈な戦いに向かっていく難民のアイデンティティを提示する。
ファソ・ファニのサイレン
The Siren of Faso FaniLa Sirène de Faso Fani
- ブルキナファソ、フランス、ドイツ、カタール／2014／フランス語／カラー／デジタル・ファイル／90分
監督、撮影：ミシェル・K・ゾンゴ
脚本：ミシェル・K・ゾンゴ、クリストフ・コニェ
編集：フランソワ・スクリエ
音楽：スモーキー
音響：ファニー・ルロン、ムムニ・ジュピター・ソドレ
製作：ミシェル・K・ゾンゴ、クリスティアン・ルロン
共同製作：マイケル・ボガー
提供：Cinédoc Films、Diam Production、Perfect Shot Films
途上国の経済安定化・経済成長という理想とは裏腹に、アフリカ各地に深い傷を残したと批判されるIMFと世界銀行による構造調整、その一つの物語をブルキナファソの地方都市に追った。2001年、クドゥグのとある有名な綿花工場が閉鎖され、数百人が失業、数千人が貧困に陥った。この経済的・社会的惨事の10年後に、監督のゾンゴは抜け殻となった街へ、そして子ども時代の中心だった、今は動いていない工場へと戻ってくる。しかし、そこで目にしたのは工場労働者たちだった。彼らは、暮らしもプライドも奪われてなお、綿産業を再生させれば豊かな未来が待っていると固く信じているのだ。
モガディシュの兵士
Mogadishu Soldier- ノルウェー、デンマーク、フィンランド／2016／キルンディ語、ソマリア語、スワヒリ語、英語、フランス語／カラー／デジタル・ファイル／84分
監督、脚本：トーステイン・グルーデ
撮影、録音：バーナード・ンタウヤマラ、ジョン・バクンディマナ
編集：ニールス・パッグ・アンナセン
製作：ビヤルテ・ムールネル・トゥベイト、トーステイン・グルーデ
提供：Norwegian Film Institute
ソマリアの戦闘地域の生々しい、ありのままの生活を、二人のブルンジ人兵士の目を通して描いた話題作。戦闘は人口200万人を擁するソマリアの首都モガディシュで起こっている。国際救援組織、NGO、報道機関も撤退するほどの危険な状態が続くモガディシュ。しかし監督にカメラを託されてソマリア入りした二人の兵士は、現地から驚くべき映像を次から次へと送ってくる。イスラム過激派アル・シャバーブとの戦いについて、情緒を排した独自の視点を投げかけてくる作品だ。
大統領帰還 マダガスカルクーデターその後
Return of a President: After the Coup in Madagascar- デンマーク／2017／英語／カラー／デジタル・ファイル／78分
監督、撮影：ロッテ・ミク・マイヤー
編集：シーネ・レベッカ・カウフマン、ステファン・サンドロフ
音響、ミキシング：ボビー・サロモン・ヘス、ギド・マルティス、コスモ・トーネ
製作：ヘレ・ウルスティーン、リーセ・レンセ・ミュラー
提供：AUTLOOK Filmsales GmbH
民主的に選出されたマダガスカルの大統領マーク・ラヴァロマナナは、2009年の軍事クーデターにより国を追われ、南アフリカへ亡命する。本作はラヴァロマナナが逮捕や肉体的危害に脅かされつつも、亡命先から自国へ戻ろうとする姿に密着する。アフリカ周縁部という地政学的に興味深い地域の政治、フランス新植民地主義の狡猾な性質に迫り、アフリカ政治の内幕を炙り出す作品。