第3部 はじけるアフリカルチャー
古代帝国の栄華が写本に刻まれた時代から、大陸各地では豊かな文化が育まれてきた。文化は、独立闘争においては人々の紐帯となり、現代においてはタウンシップ(旧黒人居住区)の若者たちを鼓舞する力となり、そして傷つき引き裂かれた社会の赦しを促す力となる。アフリカ的レジリエンス(逆境を克服する力)の根幹にある、文化の力を伝える試みを紹介する。
コスミック・アフリカ
Cosmic Africa- 南アフリカ/2003/バンバラ語、英語、ジューホアン方言/カラー/Blu-ray/72分
監督、撮影、編集:クレイグ・フォスター、デイモン・フォスター
音楽:バリー・ドネリー、グラント・マクラクラン
原案、エグゼクティブ・プロデューサー:アン・ロジャース
製作:カリーナ・ルービン
提供:デイモン・フォスター
13歳のとき、セベは故郷であるアフリカの僻地の村で自作の望遠鏡を作った。現在では、学位を持つ天文学者として、天体に関する知の淵源と現代天文学を再結合させたいと望んでいる。本作を通じて、私たちはセベの天体探求の旅――エジプトのサハラ砂漠の中心地へ、マリにあるドゴンの切り立った崖へ、ナミビアの狩猟採集民たちの先祖の地へ――に加わることになる。人類の目覚めと発展のさまざまな段階を探求することで、観客は天文の専門家にして予言者であるシャーマンの世界に誘われる。そこでは、スピリチュアルな知識と実践的な知識が分かちがたく絡み合っているのだ。
FOKOFPOLISIEKAR
Fokofpolisiekar: Forgive Them for They Know Not What They Do- 南アフリカ/2009/アフリカーンス語、英語/カラー/デジタル・ファイル/108分
監督:ブライアン・リトル
撮影:グラント・アプルトン
編集:ウィム・ステイティア
製作:フィリパ・ドミンゲス
提供:Fly on the Wall
ポスト・アパルトヘイト社会におけるアイデンティティ確立への闘いを、音楽を通じて描く。Fokofpolisiekarが結成された2003年の時点では、アフリカーンス語によるパンクバンドというのは冗談のネタでしかなかった。バンド名(=fuck-off-police-car)は頭がいかれていると思われ、その音楽は人々を怒らせた。本作では新生南アフリカで、彼らが確固たる立場と熱狂的ファンを生み出していく4年間を描く。論争と混乱、殺害の脅迫、キリスト教徒の反発の最中にあっても彼らは不思議と自信に満ちていた。やがて中傷を克服し、国中のアフリカーンス社会に爆発的な議論を引き起こしつつも、メディアにおける自分たちの扱いを自力で変え始めていくのだった。
トンブクトゥの写本
The Manuscripts of Timbuktu- 南アフリカ/2009/フランス語、アラビア語/カラー/デジタル・ファイル/74分
監督:ゾラ・マセコ
撮影:デイヴィッド・フォーブス、マヌエル・ラピエール、ニコラス・ホフメイヤー
編集:ガイ・スピラー、タク・カスケラ
録音、音響:バシアミ・セゴラ
製作:デイヴィッド・マックス・ブラウン
提供:Black Roots Pictures
アフリカ人研究者の学識に裏打ちされた解説、豊富な再現ドラマ、ヴュー・ファルカ・トゥーレの書き下ろし音楽という特徴を備えた本作は、トンブクトゥが文化・経済・科学・宗教的に、アフリカと全世界に重要かつ永続的な影響を与えたことを示し、トンブクトゥに対するこれまでの見方が限定的なものに過ぎないと批評する。また、現代アフリカにおける学術研究を活性化する遺産として、幾多の写本を保存することが重要であると確信させてくれる作品でもある。
アフリカン・サイファー
The African Cypher- 南アフリカ/2012/英語/カラー/デジタル・ファイル/100分
監督:ブライアン・リトル
撮影:グラント・アプルトン
編集:グラント・バーチ
音楽:サイモン・コーラー
製作:フィリパ・ドミンゲス
提供:Fly on the Wall
南アフリカのタウンシップ生まれのストリートダンス、パンツーラに情熱を注ぐ若者たち。「ボロ屋に住んでるからって、頭の中身までボロってわけじゃないぜ!」と威勢良く啖呵を切り、仲間たちとキレのいいダンスに没頭する。ポスト・アパルトヘイト時代にも貧困や差別と闘いながら生きるソウェトのダンサーは、踊りに生きる意味を見いだし、一度は犯罪に手を染めた者さえ、再び人生をやり直そうと目覚める。ストリート音楽とダンスに込められた絶望を生き抜くソウェトの哲学に迫る。
イントレ ― 選ばれし者
Intore- ルワンダ/2014/英語/カラー/デジタル・ファイル/64分
監督:エリック・カベラ
撮影:クリスティアン・ガコムベ、レジス・ンツェユエラ、パトリック・ンセンギマナ
編集:E・クリーヴランド・アンダーソン、ブライアン・キース・グリスピー
エグゼクティブ・ブロデューサー:エリック・カベラ、シャーリー・ニール
製作:E・クリーヴランド・アンダーソン
提供:Rwanda Cinema Centre, Kwetu Film Institute
1994年のルワンダ大虐殺から20年目の節目に制作された、再生へ向かう今日のルワンダの記録。音楽やダンスを通じてアイデンティティを再び確立することで、ルワンダの人々がいかに過去の悲劇を克服してきたかを描く。悲しみを希望に変える母親、赦すことを選んだ芸術家、国立舞踊団を再結成させた巨匠、そして一人の若者の決意を通じて、勝利、生存、希望の物語が描かれる。本作にはルワンダの音楽、ダンスのトップアーティストたちが出演している。
ビ・キドゥデと僕
I Shot Bi Kidude- イギリス、タンザニア/2015/英語、スワヒリ語/カラー/デジタル・ファイル/74分
監督、製作:アンディ・ジョーンズ
撮影:ナタリー・ハーホフ、アンディ・ジョーンズ
編集:スティーブ・ホワイト
音楽:The Baghdaddies、TY、ユージン・スキーフ、ビ・キドゥデ、モハメド・イリヤス、タウシ・ターラブ、ビ・キドゥデ・グループ、マトナ・イッサ・モハメド、サイフ・サリム、ナディ・イクワン・サファア
整音:リック・ド・モウブレイ
製作:スティーブ・ホワイト、リタ・レイ
提供:Radio Film、アンディ・ジョーンズ
ザンジバルの民族音楽タアラブの女王として、また2007年に来日公演を果たした際には「推定95歳の歌姫」としても話題になったビ・キドゥデの生涯最後の数ヶ月を追った作品(※アフリカの老人には間々ある話だが、戸籍制度が整う前の生まれで正確な年齢がわからない。2013年に亡くなった際には102歳だったと言われている)。2012年、彼女はザンジバルの自宅から謎の失踪を遂げた。2006年にキドゥデの人生を賞賛する作品を撮ったアンディ・ジョーンズは、カメラを持って彼女を捜索する旅に出る。本作はミステリーでもあると同時に、友人アンディからキドゥデへの心のこもった贈り物でもある。