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    American Alley
    아메리칸 앨리

    - 韓国/2008/韓国語、英語、ほか/カラー/ビデオ/90分

    監督、撮影:キム・ドンリョン
    編集:キム・ドンリョン、パク・キョンテ
    セカンド・カメラ:パク・キョンテ、ソン・ジニョン、オム・ヘジュン
    音楽:シワ
    音響:ピョ・ヨンス(メディアクト)
    配給:シネマDAL www.cinemadal.com

    米軍基地が面積の約40%を占める東豆川(トンドゥチョン)市の一角にある「アメリカ通り」。ここで40年以上働いてきた韓国人女性「K」の身体に刻まれた基地村の歴史を紐解きながら、ロシア人、フィリピン人女性たちがクラブで働き、「不法就労」の摘発・強制送還が絶えない現在を映す。米軍基地という構造的(性的)暴力と背中合わせに、彼女たちは米兵や同郷の女性たちとの生活基盤を築き、未来を自らの手で切り開き、この居場所に生を託す。



    【監督のことば】 「基地村」は長い間、韓国人にとって羞恥心や恨(ハン)といったものの代名詞だった。 米軍のナイトクラブでは、多くの韓国人女性が働いていたが、韓国が経済的に急成長してからは、ロシアやフィリピンから来た女性たちが、彼女たちの後釜になっていることを知る人はそれほど多くなかった。

     『アメリカ通り』を撮ろうと思ったのは、私が2004年にウィジョンブにある「トゥレバン」という女性団体で偶然働くことになったのがきっかけだ。私が1年の間トゥレバンでプロジェクトスタッフとして担当していた主な業務は危機介入だった。我を忘れて仕事をした1年間、私はこの女性たちが置かれた政治的社会的な構造だけでなく、彼女らの非常に個人的な時間と対面できた。

     Kおばあさんの場合、もともとは撮影対象にする意図はなかった。おばあさんは日本語が上手なため、かつては日本軍の「慰安婦」をしていたのでは、と言う人もいたが、私はただおばあさんが、戦争のせいで生き残るために性産業に身をゆだねた数多くの女性のうちの1人でしかないと考えている。実際、ロシア人女性たちをドキュメンタリーにする作業は簡単なことではないと自覚させられるたび、基地村の中では唯一、おばあさんの家でなら気を抜くことができた。私は昼寝をしたり、ご飯を食べさせてもらったりして、おばあさんの日常が身近になるにつれ、カメラにとらえてみようと考えるに至った。

     映画を撮っている時、あるいは編集をする際に感じた最大の難題の1つは、私自身が彼女たちの人生のいったいどこに位置すべきか、という問題だった。彼女たちと私の関係を中心に映画を作っていたとすればはるかに興味深い映画になりえたかもしれないが、私には彼女たちの人生を手加減なしに見せることがさらに重要だったのだという気がするのだ。


    - キム・ドンリョン

    梨花女子大学(英文学専攻)を卒業後、韓国映画アカデミーにて映画制作を学ぶ。2004年には16mmの実験映画『Lost and Found』を、そして2008年に実験的なビデオ作品『Alice in Wonderland』を制作。初の長編ドキュメンタリー映画である本作は、韓国映画振興委員会およびキョンギ文化財団の支援を得て制作した。