未来の記憶のために――クリス・マルケルの旅と闘い
協力:アンスティチュ・フランセ日本
映画監督として幾多の傑作を送り出したクリス・マルケル(フランス、1921−2012)は、また写真、テキストからインターネット上の仮想空間まで、あらゆるメディアを使いこなし制作をつづけた先駆的アーティストである。その広大な作品世界を体験する渾身のプログラム。
会場:山形市民会館小ホール
昨年、91才で逝去したクリス・マルケルのニュースは、世界に衝撃を与えると共に、映画関係者は、偉大な業績と貢献を讃え、その死を惜しんだ。映画作家のみならず、その多彩な才能は、クリス・マルケルを称して、旅行家、写真家、アクティヴィスト、作家、マルチメディア・アーティスト、とひとつに留まらないことに顕われている。
タルコフキー、メドヴェトキン、黒澤明にカメラを向けながらも、自身は撮影され、インタビューされるのを決して好まなかった。『北京の日曜日』(1956)を見たアンドレ・バザン(1918−1958/映画批評家)が「文学、映画、写真のジャンルに属し…同時に、詩、ルポルタージュ、映画のどれにも属さない。が、それらの要素全てが煌めくばかりに総合された独創的な作品」と語っているように、クリス・マルケル自身もまた様々な要素が総合されたかのような希有な存在である。ほぼ一世紀に亘る生涯の作品群は映画の媒体の歴史そのものであり、フィルムから始まり亡くなる直前はYouTubeの媒体可能性を試し、複数の作品を発表している。その果てしないほどのマルケルの好奇心は、新しいメディア形態になればなるほど、自由闊達に浮遊しているかのようだ。あるいは時代がようやくマルケルに近づいて来ているようだ。本年度の山形映画祭では、クリス・マルケルを追悼し、初期から後期までの約45作品を紹介する。
- 『ベトナムから遠く離れて』1967/115分
『美しき五月』1962/165分
『彫像もまた死す』1953/30分
『北京の日曜日』1956/22分
『シベリアからの手紙』1958/62分
『宇宙飛行士』1959/14分
『ラ・ジュテ』1962/28分
『もしラクダを4頭持っていたら』1966/49分
『エクリプス』1999/8分
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『ある闘いの記述』1960/60分
『不思議なクミコ』1965/54分
『また、近いうちに』1967/45分
『ペンタゴン第六の面』1968/28分
『大使館』1973/21分
『パリからの報告:言葉は意味を持つ』1970/19分
『プラハからの報告:アルトゥール・ロンドンの第2公判』1971/30分
『ブラジルからの報告:拷問』1969/23分
『ブラジルからの報告:カルロス・マリゲーラ』1970/40分
『チリからの報告:アジェンデは何を語ったか』1973/16分
『A.K. ドキュメント黒澤明』ナレーション:蓮實重彦/1985/70分
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『動き出す列車』1971/32分
『一千万の闘い』1970/58分
『空気の底は赤い』1977/240分
『サン・ソレイユ』1982/100分
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『A.K. ドキュメント黒澤明』日本語字幕版/70分
『アンドレイ・アルセニエヴィッチの1日』1999/55分
『アレクサンドルの墓:最後のボルシェヴィキ』1993/118分
『2084』1984/10分
『3つのビデオ俳句』1994/3分
『レベル5』1996/105分
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『キャンプニュース8』1993/27分
『ブルー・ヘルメット』1995/25分
『コソボの市長』2000/27分
『鯨ばんざい』1972/16分
『未来の記憶』2001/42分
『笑う猫事件』2004/59分
『集合論』1990/13分
『ロベルト・マッタ』1985/14分
『クリスからクリストへ』1985/24分
『ジャンコピア』1981/6分
『スロン・タンゴ』1990/4分
『音楽を聴く猫』1990/2分
『トウキョウデイズ』1986/24分
『ベルリナー・バラード』1990/29分
『チャウシェスクの回り道』1990/8分
- 『オリンピア52についての新しい視点』ジュリアン・ファロー/2012/80分
- 特別企画
- 講演:「猫頭の男」 エティエンヌ・サンドラン(ポンピドゥーセンター、キュレーター)
- 朗読:ル・デペイ(異/故国) エティエンヌ・サンドラン、福崎裕子