インディアナ州モンロヴィア
Monrovia, Indiana-
アメリカ/2018/英語/カラー/DCP/143分
監督、編集、録音:フレデリック・ワイズマン
撮影:ジョン・デイヴィ
整音:ヴァレリー・ピコ
配給:Zipporah Films
2016年のアメリカ大統領選の結果を受けて、フレデリック・ワイズマンはインディアナ州の農業の町モンロヴィアを題材に選んだ。牧歌的な農場の風景から始まって、フリーメーソンのロッジからライオンズクラブ、高校、教会、銃砲店などを細やかに観察しながら、ワイズマンは昔ながらの価値観、生活様式を護り続ける“善きアメリカ人”の姿を浮かび上がらせる。町で起きた出来事、会合、催事を軽やかにスケッチすることで、町という社会の全体像が見えてくる。現代アメリカを支える無名の人々の実像がここにはある。(IT)
【監督のことば】現代のアメリカ人の生活をめぐって取り組んできた連作に付け加えるのに、中西部の小さな農村を題材とする映画は格好のものと思われた。インディアナ州モンロヴィアは、その規模(住民は1,063人)、立地(これまで私は中西部の農村地域で撮影をしたことがない)、共同体内部で共有される文化的宗教的関心ゆえに、私の求めるものとピタリと一致していたのである。9週間の撮影の間、モンロヴィアの人々から友好的な助力を惜しまぬ歓迎を受けた私は、日常生活のあらゆる場面にアクセスすることが許されていた。アメリカ大陸の東西両岸に点在する大都市の生活についてのルポルタージュは定期的になされているが、私の興味はむしろ、アメリカの小さな町における生活についてもっと学び、そこで私が見たものを共有することにあったのだ。
1967年の『チチカット・フォーリーズ』以来、42本のドキュメンタリーを制作し、その劇的かつ独特な語り口を持つ映画は、多種多様な社会制度・機関に生きる普通の人々の経験を描くことを目指している。主な作品に、『高校』(1968)、『法と秩序』(1969)、『少年裁判所』(1973)、『福祉』(1975)、『モデル』(1980、YIDFF '91特別招待作品)、『セントラル・パーク』(1989)、『動物園』(1993、YIDFF '93山形市長賞)、『コメディ・フランセーズ ― 演じられた愛』(1996、YIDFF '97特別賞)、『メイン州ベルファスト』(1999、YIDFF '99山形市長賞)、『DV ― ドメスティック・バイオレンス』(2001、YIDFF 2001特別招待作品)、『DV 2』(2002、YIDFF 2003 特別招待作品)、『パリ・オペラ座のすべて』(2009)、『ボクシング・ジム』(2010)、『エクス・リブリス ― ニューヨーク公共図書館』(2017、YIDFF 2017)などがあり、2002年には『最後の手紙』というフィクション映画の監督も務めている。
2016年にこれまでの功績を讃えられ、米アカデミー賞より名誉賞を受賞。現在、マッカーサー基金フェロー、アメリカ芸術科学アカデミー・フェロー、グッゲンハイム奨励金受賞者、アメリカ芸術文芸アカデミー名誉会員に名を連ねている。4度のエミー賞をはじめ多数の受賞歴があり、近年ではパリのコメディ・フランセーズでベケットの『しあわせな日々』やワシーリー・グロスマン原作の戯曲『最後の手紙』の演出を手がけ、そのうち後者は、ニューヨークのシアター・フォー・ア・ニュー・オーディエンスでも上演されている。さらに2017年には、第1作『チチカット・フォーリーズ』に着想を得て制作されたバレエ作品が、ニューヨーク大学スカーボール・シアターで初披露されている。