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特別招待作品

DV2


- アメリカ/2002/英語/カラー/16mm/160分

監督、編集、録音、製作:フレデリック・ワイズマン
撮影:ジョン・デイヴィ
製作会社:ドメスティック・バイオレンス・フィルム
提供:ジッポラ・フィルムズ
Zipporah Films
One Richdale Avenue, Unit #4, CambridgeMassachusetts 02140 USA
Phone: 1-617-576-3603 Fax: 1-617-864-8006
E-mail: info@zipporah.com URL: www.zipporah.com

- 夜のフロリダ、灯りの中に浮かぶ〈お伽の国〉ディズニー・ワールド付近の街路では、女性が弁明空しく、パトカーの警官たちに連行される。DV法が施行されたため、皮肉にも恋人たちの痴話喧嘩さえ、暴力が絡めば逮捕は免れない。

 前作『DV ― ドメスティック・バイオレンス』が被害者救援施設を舞台に被害者の立場から話が展開していたのに対し、この作品は視点を加害者側に移している。

 裁判所では三様の法廷でさまざまなケースが処理されていく。当事者同士の接触をさせないため、加害者はモニターに映し出されるだけの法廷、何組もの被害者と加害者が同席し、その中で審理が進められていく法廷、一組ずつの個別審理。延々と映し出されるいくつもの裁判。登場人物たちは、ワイズマン作品の例に違わず、まるで本人を演じているかのようにカメラの前で個性を溢れさせる。法廷審理からは彼らの人生とドラマが浮かび上がる。暴力が日常と化し、愛する家族にさえ向けられてしまう我々の社会、それに対蹠するばかりの司法の暴力、疲弊しきったシステム――裁判所という舞台で演じられるさまざまな人間模様を、ワイズマンはユーモアさえ交えながら乾いた視線で一大絵巻として我々に提示する。

冨田三起子



【監督のことば】私はこれまでに、暴力をテーマとした映画を数多く手掛けてきた。国外での暴力を国家が独占することについての映画としては、『Basic Training』や『軍事演習』『Missile』がある。国内での暴力を国家がコントロールすることについての映画は、『法と秩序』、『Juvenile Court』や『チチカット・フォーリーズ』。科学が暴力をコントロールすることについての国家の権益を扱った映画としては、『霊長類』がある。したがって、家族の中での暴力と、それを法廷や警察、その他の公的機関によって国家がコントロールし、改善しようとすることについての映画は、私のこれまでの作品の自然な延長線上にある。


- フレデリック・ワイズマン

1930年ボストン生まれ。ダイレクト・シネマ最盛期の1967年、精神病院刑務所に取材した『チチカット・フォーリーズ』で監督デビュー。以来、ほぼ年に1本のペースで着実に作品を発表している。一貫したテーマはアメリカ社会の施設・日常生活で、学校 ―『高校』(1968)『High School II』(1994)、病院 ―『病院』(1970)『臨死』(1989)、警察 ―『法と秩序』(1969)、軍隊 ―『軍事演習』(1979)『Missile』(1987)、劇団 ―『BALLET アメリカン・バレエ・シアターの世界』(1995)などを扱ってきた。本映画祭では、1991年に『モデル』(1980)を招待上映、1993年に『動物園』(1993)がインターナショナル・コンペティションで最優秀賞を、1997年には『コメディ・フランセーズ ― 演じられた愛』(1996)が特別賞を、1999年には『メイン州ベルファスト』(1999)が最優秀賞を受賞、2001年に『DV ― ドメスティック・バイオレンス』を上映した。最新作は劇映画の『La Dernière Lettre』(2002)。


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