十字架
The CrossesLas cruces
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チリ/2018/スペイン語/カラー/DCP/80分
監督:テレサ・アレドンド、カルロス・バスケス・メンデス
撮影:カルロス・バスケス・メンデス
編集:カルロス・バスケス・メンデス、マルティン・サピア(EDA)
録音:アンドレア・ロペス・ミラン
プロデューサー:クラウディオ・レイバ・アラオス、パトリシオ・ムニョス・G、テレサ・アレドンド、カルロス・バスケス・メンデス
配給:dereojo comunicaciones
チリ南部の小さな町で起きた製紙会社組合員の大量殺人事件。1973年9月11日の軍事クーデターから数日後、19人の工場労働者が警察に連行され、6年後に遺体となって発見された。事件は解決されずそのまま闇に葬られるかに見えたが、関与を否定していた警察官の一人が、40年を経てその証言を覆したとき、製紙会社側と独裁政権の思惑が明らかになる。いまだに「死」がそこかしこに漂う閑静な町の姿と、殺害現場に立てられた夥しい数の十字架が、声にならない叫びを上げ、国家が手引きした虐殺の歴史を告発する。(KK)
【監督のことば】すべての撮影プロセスのなかで最も困難を極めたのが、事件の資料の読み上げを録音した部分であることに疑いはない。企画が始まった当初より、事件で犠牲となった人々と同じ町の出身者に資料を読み上げてもらうつもりでいたわけだが、しかし私たちは、この事件に限っては、犠牲者と直接関係があった親族を朗読に参加させないという条件を自身に課していた。私たちにとって、美学と倫理は切り離せない。親族たちが自ら朗読に志願していたことは言い添えておかなければならないが、私たちはむしろ、映画に声を貸し与えてくれる人たちを探し出すことで彼らに協力してもらいたかったのだ。とはいえ、製紙会社「CMPC」のオーナー一族が南米でも指折りの富豪であり、口を開いて立場を鮮明にすることを恐れる人々がいまだ大多数である以上、そうした人を見つけるのはとてつもなく難しい。しかし、道徳と政治に関わるどんな制度も、集団殺戮がどこかで繰り返されないことを目標とする。私たちの映画は、この出来事を現在に語り継ぐことでそうした課題に目を向けんとするものである。
1978年、ペルーのリマに生まれる。現在はチリの首都サンティアゴに在住。1995年より心理学を学び、2003年に学士号を取得した後、2006年、バルセロナ自治大学の「創造的なドキュメンタリー制作の理論と実践」コースで修士号を得るためスペインに渡る。多くの映画祭に招待され賞を受けた短編第2作『Días con Matilde』(2011)に続き、長編第1作『Sibila』(2012)もまた同様の高評価を得る。長編第2作である本作は、2018年のマルセイユ国際ドキュメンタリー映画祭で初上映された。
カルロス・バスケス・メンデス
主にドキュメンタリーとフィクションの境界にある映画と写真を表現言語として用いる映画作家・アーティスト・研究者で、その作品は常に、歴史、社会科学、そして芸術実践との間に照応関係を築いている。映画的手法で制作された彼の作品は、さまざまな展覧会や映画祭で上映され、2016年のシネマ・デュ・レエル映画祭(フランス)で初披露された長編最新作『[Pewen] Araucaria』は、ヨリス・イヴェンス/フランス国立造形芸術センター賞(長編第1作最高賞)を受賞。現在は、バルセロナとチリのサンティアゴの間で住居と仕事を行き来しつつ活動している。