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ユキコ

Yukiko

- フランス/2018/韓国語、日本語/カラー/DCP/70分

監督、脚本、撮影:ノ・ヨンソン
編集:セリーヌ・デュクルー、ノ・ヨンソン
録音:ベルトラン・ラリュー、マリー・ボトワ、佐藤祐美
プロデューサー:カリーヌ・シシュコウスキー
製作会社、提供:Survivance

フランス在住の監督、生まれ育った朝鮮で暮らす母、戦時中に朝鮮人の恋人を追い日本からソウルにやってきた祖母。監督は、朝鮮戦争の渦中に生き別れ、母の記憶に残っていない祖母のことを仮に「ユキコ」と呼び、互いに薄い関わりしか持たない3人の女性像を親密に紡いでいく。母が独りで住む江華島、ユキコが人生最期の地に選んだ沖縄で、母のシルエット、日常風景、老人ホーム、摩文仁まぶにの丘が、繊細なカメラワークで重ね合わされる。ふたつの島で架空の物語が交わり、戦時の悲劇が呼び起こされる。「記憶にない者を悼むことができるのか」という普遍的な問いが響く。(HH)



【監督のことば】語られていない、未完の物語。私はそれを語ることができると思っていなかった。この不可能性をどうにかしたいという想い。そうした欲望に導かれ、私はふたつの国のふたつの島へと旅に出た。私は女たちに会い、彼女たちの物語のなかに私自身がいることを認識した。

 『ユキコ』は、ある特異な女性を描く肖像でもなければ、始まりと終わりのある物語でもない。私はむしろ、全体にならない部分を提示したかった。音楽でいう変奏のように、沈黙と不在にもとづいて。それぞれの部分は、記憶の断片、想像と出会いの断片のなかで展開する。これは、私や私の世代にとっていまだ現在であり続けるものを用いて、あったかもしれない何らかの物語(歴史)を書く試みである。


ノ・ヨンソン

1979年ソウル生まれ。13年前よりフランスに在住して制作を続けている。グルノーブル美術学校在学中にビデオアートの実践を深め、実験映画やドキュメンタリー映画への関心と情熱からリュサス・ドキュメンタリー映画学校に編入。学生制作による短編ドキュメンタリー『Prune Sauvage』(2013)でリヨンの短編ドキュメンタリー映画祭「Doc en cours」の新人賞を受賞した彼女は、映像編集の仕事も定期的に手掛けている。初の長編ドキュメンタリーとなる本作は、アムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭でワールドプレミアを飾った。