English

審査員
ホン・ヒョンスク


●審査員のことば

 24年前、山形で過ごした時間は、長い間、深い響きとして残っている。当時、一日中、疲れるまでドキュメンタリーを観て、多くの制作者仲間と会って話し合い、夜には小さな瓶に入ったお酒とグラスを持ちながら、見知らぬ階段を上がっていた風景が今も目に見える。最も特別だったのは、親切で、優れた通訳と出会ったおかげで、日本のドキュメンタリー映画やフォーラムに集中でき、戻ってくる頃にはかなり分厚いメモノートにして帰ってくることができたことである。今回、再び山形に向かう。審査という宿題はいつも重く感じられるが、その重さを耐えさせ得るときめきと楽しさがあり、魅惑を感じる。同時代を生きていく尊敬するドキュメンタリーの同僚は、果たして私にどんな新しい物語と問いを聞かせてくれるのか? そして、私は2019年の山形で果たして何を持ち帰ってくるのだろうか?


ホン・ヒョンスク

1980年代半ばより、30年以上にわたってドキュメンタリーを制作する。作家としての名声を確立した『村の新しい学校』(1995)がYIDFF '95に出品されて以来、YIDFF 2001でも上映された『村の新しい一歩』(2000)をはじめ、『On-Line; An Inside View of Korean Independent Film』(1997)、『Reclaiming Our Names』(1998)、『The Border City』(2002)、『The Border City 2』(2009)といった作品は、ベルリン国際映画祭、アムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭、釜山国際映画祭などの名だたる映画祭に出品されている。また、『Forest Dancing』(2012)や『Boys Run』(2015)といったカン・ソクピル監督作品では製作を担当。アムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭でワールドプレミアを飾った近作『ジュナの惑星』(2018)は、いまなお多くの映画祭で上映行脚を続けている。現在、DMZ国際ドキュメンタリー映画祭のディレクターを務め、韓国芸術総合学校では後進の指導にもあたっている。



ジュナの惑星

Junha's Planet
준하의 행성

韓国/2018/韓国語/カラー/DCP/108分

監督、脚本:ホン・ヒョンスク
撮影:イ・ジュファン
編集:イ・ヨンジョン
録音:ピョ・ヨンス
音楽:イ・ミヌィ
製作:カン・ソクピル
配給:Taskovski Films www.taskovskifilms.com

自閉症を抱え、フリースクールの同級生や教師たちに攻撃的に当たってしまう11歳の少年、ジュナ。徐々に周囲との見えざる壁が大きくなるものの、教師たちはジュナの両親とも話し合いを重ねる。ジュナが授業に参加できるよう粘り強く、教師も子どもたちも、そしてジュナも、共に試行錯誤する日々の姿を親密に描く。ヨハネス・ケプラーの『宇宙の調和』を引き合いに、ジュナという惑星で奏でられ、響くメロディにじっと耳を澄ます。