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ANDプレゼンツ:撮影とドキュメンタリー


 YIDFF 2007から始まったマスタークラス・シリーズ。撮影から仕上げまでひとりでビデオ制作できることがインディペンデントなら標準となり、個人映像だからこそ描ける世界が広がる。しかし集団で作らざるを得なかった時代と比べ、ひとりで撮影現場に立ち、パソコンに向かう現代のドキュメンタリー制作者は孤独だ。監督と交流する一番近い外部者である“先輩”技術スタッフの話を聞くシリーズ。今回は撮影に焦点をあてる。

協力:ドキュメンタリー・ドリームセンター


撮影のマスター・クラス 1

10月13日[火]13:30−15:30 フォーラム3
 講師:ヌリット・アヴィヴ(撮影監督、映像作家) 聞き手:小山内照太郎(コーディネーター)

- ヌリット・アヴィヴ

インターナショナル・コンペティション審査員ページ参照

フランス初の女性劇映画撮影監督として、アニエス・ヴァルダ、アモス・ギタイ、ルネ・アリオ、ジャック・ドワイヨンらのもと、フィクションやドキュメンタリー映画を100本以上撮影してきたヌリット・アヴィヴ。チームで仕事をすることについて「音楽を一緒に奏でるようです。私はひとりで映画を作ることはありません」と言う。ヴァルダの『ダゲール街の人々』、ルネ・フェレの『Histoire de Paul』(ジャン・ヴィゴ賞1974)、アリオの『Moi, Pierre Rivière . . . 』、ギタイの『フィールド・ダイアリー』、自身の5分の短編『Allenby, passage』の映像を参照しながら、撮影監督としてのキャリアの喜びについて語る。



撮影のマスター・クラス 2

10月13日[火]16:30−18:30 フォーラム3
 講師:大津幸四郎(撮影)

- 大津幸四郎

1934年生まれ。1958年から63年まで岩波映画製作所に勤務した後、フリーランスのキャメラマンとして小川プロダクション、青林舎、シグロなどで主としてドキュメンタリー映画の撮影に従事。『圧殺の森』(1967)、『日本解放戦線 三里塚の夏』(1968)、などの小川紳介監督作品、『パルチザン前史』(1969)、『水俣 ― 患者さんとその世界』(1971)、『水俣一揆』(1973)、『不知火海』(1975)、『医学としての水俣病 三部作』(1974−75)などの土本典昭監督作品の他、『アイランズ 島々』(1993、セミヨーン・アラノヴィッチ監督、大塚汎監督)、『ドルチェ ― 優しく』(1999、アレクサンドル・ソクーロフ監督)、佐藤真監督の『まひるのほし』(1998)、『花子』(2001)などの撮影。2005年に『大野一雄 ひとりごとのように』を監督。

岩波映画製作所を経て、日本を代表するドキュメンタリー作家の小川紳介、土本典昭、佐藤真らと作品作りを共にし、今年のYIDFFでは藤原敏史の『フェンス』、アレクサンドル・ソクーロフの『ドルチェ』が上映される大津幸四郎さんは、レンズの向こう側から日本ドキュメンタリーの歩みを作ってきた映画キャメラマンと言っても過言ではないだろう。スタッフという「複数の目を通して練り上げられていく」映画の密度と、「撮る側がいつも試されている」ドキュメンタリー作りの重さについて、デジタル世代の作り手たちへのメッセージを語る。土本典昭の『水俣 ― 患者さんとその世界』、『不知火海』、佐藤真の『花子』の映像を見ながら、撮影とドキュメンタリーを考える。