小川プロ小特集
提供:山形ドキュメンタリーフィルムライブラリー
青年の海 ―四人の通信教育生たち―
Sea of Youth-
日本/1966/日本語/モノクロ/16mm/56分
スタッフ:小川紳介(監督)、奥村祐治(撮影)、大津幸四郎、川名満雄、久保田幸雄、栗林豊彦、小林秀子、神公平、田村正毅、立石泰昭、中野了、山根誠、和田周、岩佐寿枝
製作:「大学通信教育生の記録映画」を作る会
小川紳介監督第1作。文部省による大学通信教育制度の改訂を巡り、反対闘争に立ち上がった4人のリーダーたち。その闘争の中で、「働きながら学ぶことは素晴らしい」という美名が果たして本当なのか、なぜそこまで苦労してまで学ばなければならないのか、と自分たちの生き方そのものを見つめることを余儀なくされる。青年たちの迷い、そして悩みながらも闘いに乗り出す彼らを、小川は追い続ける。悩みながらも決して留まることのない4人に共鳴して、カメラまでもが走り始める。4人の青年とスタッフの、2つの青春の在り方が奇跡のように解け合う、真の意味での「青春映画」。
日本解放戦線・三里塚の夏
Summer in Narita-
日本/1968/日本語/モノクロ/16mm/108分
演出:小川紳介
演出助手:神公平、松本武顕、吉田司
撮影:大津幸四郎、田村正毅 撮影助手:大塚登
録音:久保田幸雄 採録:栗林豊彦
製作:小林秀子、伏屋博雄、市山隆次
製作進行:野坂治雄
音楽:ベートベン作曲「交響曲第九番」、林光作曲「セチュアンの善人」より
製作会社:小川プロダクション
全世界的に学生や労働者が既成の権力に反旗を翻した1968年。日本の千葉県成田市では地元住民の意向を全く無視した新東京国際空港建設決定に反対し、三里塚の農民たちは立ち上がった。小川プロの「三里塚」シリーズ第1作(シリーズ全体としては、8年間に7作品を完成)。この作品を契機に小川紳介および小川プロダクションの“定点観測”による撮影が確立されていく。カメラは機動隊に対して武装を決断する青年行動隊を中心に闘争の内部へと入り込んでいく。小川は「全ショットを農民の列中から、その視座から撮り、権力側を撮るにも、正面から、それとの対面で、すべてを撮った」と語っている。
牧野物語・養蚕編
Magino Story―Raising Silkworms-
日本/1977/日本語/カラー/16mm/112分
監督:小川紳介 撮影:原正
16mm拡大撮影:田村正毅 編集:福田克彦
ネガ編集:高橋辰雄 録音:瓜生敏彦
出演:木村サト、木村修一、木村初、白石洋子、見角貞利
製作:飯塚俊男、伏屋博雄
製作会社:小川プロダクション
冒頭、老女によって語られる蚕(彼女はそれを「お蚕(こ)さま」と呼ぶ)にまつわる民話は、牧野において蚕が神の使いであり、行方不明になったお姫さまの生まれ変わりであることを示す。蚕の体の紋様は姫を守った馬のひずめに跡であると民話では言われている。この導入部から我々は蚕の飼育の世界に引き込まれる。そして蚕とともにその半生を歩んできた木村サトさんの指導の下、小川とそのスタッフは実際に蚕の飼育を営み、この過程をフィルムでも紡いで行くのである。
映画は春の蚕の誕生から餌である桑の葉の選択、そして何度かの脱皮を経て、ようやく秋を迎え繭を作るまでの作業を細部にわたって見せてくれる。そして我々は蚕たちとともに長年生きてきたサトさんの「時間」を、小川らスタッフとともに共有することになる。この「時間」こそが、小川が牧野村に移り住み、以後の作品でも映画作家と百姓を兼業とすることで大きな広がりをみせるスタンスの基礎となるのである。
●特別招待作品|満山紅柿 上山―柿と人とのゆきかい|Devotion|小川プロ小特集|青年の海 ―四人の通信教育生たち―|日本解放戦線・三里塚の夏|牧野物語・養蚕編|ロング・ホリデー|追悼勅使河原宏|東京1958|いのち ―蒼風の彫刻|白い朝|ホゼートーレス Part II|家庭内暴力|主人の館と奴隷小屋|三人三色|映画祭予告篇集 |