やまがたと映画
本年で3回目を迎える「やまがたと映画」。「山形」をプラットホームとし、映画との関わりを検証し、また創造していくプログラム。山形において「映画」はどのように受容されてきたか。また表現においても、「山形」はどのように表象されたのか、あるいは山形の表現者にどのような影響を与えてきたのか、を改めて認識していきたい。
会場:山形美術館1
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ゴジラを撮った男――本多猪四郎監督 生誕100周年記念
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『ゴジラ』を撮った男・本多猪四郎監督(山形県鶴岡市出身)が、3.11を経験した年に、生誕100周年を迎えたというのも、とても偶然とは思えない。フラハティの『アラン』で映画に目覚めたという監督の、ドキュメンタリー魂に溢れた初期の名作と特撮映画の傑作をお楽しみいただきたい。
『南国の肌』1952 /95 分
『空の大怪獣 ラドン』1956/82分
『わが映画人生 本多猪四郎監督』製作:日本映画監督協会/1990/58分
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立ち上がれ日本――オキュパイド・ジャパンからの脱出
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占領期、全国を席巻したナトコ(CIE=GHQ民間情報教育局)映画上映運動。アメリカの思惑は果たして達成されたのか。日本製ナトコ映画の監督として名高いシュウ・タグチが、帰国後残した秀作を集めた。『わたしの大地』は山形ロケ作品。
YAMAGATAアートサポート支援事業
協力:記録映画保存センター
シュウ・タグチ・
プロダクションズ 1『漁(すなど)る人々』1950
『極北のナヌーク』ロバート・フラハティ/1922(75分) ●7日 M1 シュウ・タグチ・
プロダクションズ 2『立ち上がれるか日本』1947頃
『新しい保健所』1949
『わが街の出来事』1950
『わたしの大地(英語版)』1951
『「民主主義」を担いで ― インタビュー:山形県内ナトコ映画上映運動』(95分) ●8日 M1 シュウ・タグチ・
プロダクションズ 3『台風の眼』特撮:円谷英二/音楽:伊福部昭/1950
『巨大船を造る』松尾一郎/製作:田口寧/1968
『「民主主義」を担いで ― インタビュー:山形県内ナトコ映画上映運動』(96分) ●9日 M1
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岩波映画・社会科教材映画大系・その他
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山形にゆかりのある岩波映画、社会科教材映画大系からピックアップ。
協力:記録映画保存センター
岩波映画・
社会科教材
映画大系・
その他『日本発見シリーズ 山形県』1959
『産業と電力』柳澤壽男/1952
『いものの町』樋口源一郎/1954
『はえのいない町』村治夫/撮影:吉野馨治/1950
『日本のデンマーク農場』樋口源一郎/1954(101分) ●7日 M1 岩波映画
スペシャル・
プログラム『夢と憂鬱 〜吉野馨治と岩波映画〜』
製作:東京大学記録映画アーカイブ・プロジェクト、記録映画保存センター(122分) ●7日 M1
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幻灯の季節
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戦後ナトコ映写機の配布と同時にベセラー幻灯機の配布が行われていた。この時代のさまざまな分野の幻灯作品を一挙上映。また、上山市山元を舞台にした『山びこ学校』の幻灯版が発見された。同時に発見された台本をもとに役者が口演する。
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ヤマガタ・カテイシネマ
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好評のヤマガタ・カテイシネマ。今年は新庄市と上山市からの映像をお届けする。戦前の新庄の盛り場、同時代のジャワ島の風景、長谷川製糸ゆかりの個人美術館蟹仙洞で見つかった大量のフィルムからのセレクション。古き山形の風景や生活文化がわかる貴重な映像である。
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山形映画人列伝――女優 横山リエ
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『新宿泥棒日記』の鈴木ウメ子は、横尾忠則、田辺茂一(紀伊国屋書店創業者)、渡辺文夫、戸浦六宏らを相手に新宿アンダーグラウンドの中で幻想的に蠢く。『天使の恍惚』での金曜日が歌う『ここは静かな最前線』はアンダーグラウンドなスタンダード・ナンバーというべきだろう。YIDFF 2009登場の渚ようこもカバーしている名曲。当時のヌーベル・ヴァーグのヒロインである。
『新宿泥棒日記』大島渚/1969/94分 ●9日 M1
『天使の恍惚』若松孝二/1972/89分 ●10日 M1
なにが飛び出すかわからない、映画祭名物(?)「やまがたと映画」特集。 前回はドキュメンタリー映画祭に怪獣映画を上映するという暴挙でファンの顰蹙をかったが、めげずに今年も『ラドン』を上映。加えて、本多監督自身が公言している、フラハティの影響を受けたという初期の劇映画『南国の肌』は必見。そのドキュメンタリー魂に触れてほしい。本多猪四郎(山形県鶴岡市出身)はやっぱり永遠に不滅なのです。
でも本多ばかりではないのが、「やまがたと映画」。映像発掘に命をかけて、ついに大発見。ナトコ(CIE)映画山形ロケ作品『わたしの大地』。しかもこれが日本製作作品なのに英語版という、研究者も驚きの映像。この作品を製作したシュウ・タグチを特集。めったに観られない作品の数々。これが再評価のきっかけとなれば、と切に願っております。
今年は山形県新庄市がらみの作品が2本。ひとつは『日本のデンマーク農場』。戦後酪農と大規模農法を採り入れるために招聘した、デンマークの農業技術者エミール・フェンガー夫妻とその農場を描く。フェンガーの毅然とした自信、そして一緒に働く新庄の農夫の志にあふれた表情がすばらしい。また戦前ジャワの「南洋商会」で働いていた新庄の大場氏の残した、ジャワの珍しい風景と、戦前の新庄の色町風景。
その他、山形が生んだヌーベルバーグのヒロイン横山リエの特集、懐かしや幻灯上映、と盛りだくさん。ぜひ期間中は山形美術館へ急げ!
「やまがたと映画」コーディネーター 富塚正輝