シマ/島、いま――キューバから・が・に・を 見る
さまざまな転換期を迎えつつ、現在に至るまでラテンアメリカはもとより、世界から注目され異彩を放つ島、キューバ。地理的な“島”としてだけでなく、作家が創造する営み、映画作品そのもの、そして私たちの身体そのものとなぞらえ、近年活況を見せるラテンアメリカ映画にも色濃い影響を与えてきたキューバに、“シマ”という視点から着目する。
会場:山形市民会館小ホール
1959年の革命直後に映画芸術産業庁(ICAIC)が、トマス・グティエレス・アレア、フリオ・ガルシア・エスピノサたちによって設立され、やがて黄金期を迎えたキューバ映画。同時に、1990年までの30年間で1,492本が制作されることとなるICAICラテンアメリカ・ニュース(Noticiero ICAIC Latinoamericano)制作部がサンティアゴ・アルバレスによって始動。キューバ国内のみならず、ラテンアメリカ、アジア、アフリカ、ヨーロッパ各地における解放闘争など時事をとりあげたフィルムは国内外を巡り、アルヴァレスの編集美学を世界に知らしめる。本プログラムではその仕事の一端を紹介する。
また一方で、同時代にアフロ・キューバンの視点から、キューバにおける民俗誌的なドキュメンタリーの先駆けとなったニコラス・ギジェン・ランドリアン、そして夭折したキューバ初の女性監督サラ・ゴメス、現在もキューバ映画の先端を独特のスタンスで切り開いているフェルナンド・ペレスの初期作品にも注目する。
他にも、キューバを訪れたクリス・マルケル、アニエス・ヴァルダらの「Another Eye」、アジア系を含めた「移民の島」、限られた機材や環境の中で制作を模索し続ける若手作家作品「永遠のハバナに続いて」など。“いま”を生きる作家たちの視点から“求心地”であるキューバを巡る、機知と情熱の溢れる作品群を、多彩な切り口によるトークイベントとともにお届けする。
- 〈キューバは廻る〉
- 『初めて映画を見た日』オクタビオ・コルタサル/1967/10分
『エル・メガノ』フリオ・ガルシア・エスピノサ/1955/25分
〈サンティアゴ・アルバレス〉- 『侵略者に死を』1961/16分
『ハリケーン』1963/22分
『今!』1965/6分
『L.B.J.』1968/18分
『離陸18時』1969/41分
『ICAICラテンアメリカン・ニュース』1960-1990
『加速する変動』トラヴィス・ウィルカーソン/1999/56分
〈サラ・ゴメス〉- 『私の家族年代記』1966/13分
『ミゲルの島』1967/18分
『私たちには味がある ― キューバの音とリズム』1967/30分
『もうひとつの島』1968/41分
『宝の島』1969/10分
『ある方法で』1974/82分
〈ニコラス・ギジェン・ランドリアン〉- 『古い街で』1963/9分
『踊る人々』1965/6分
『トーア川のオシエル』1965/17分
『ルポルタージュ』1966/9分
『再びバラコアへ』1966/15分
『コフィア・アラビカ』1968/18分
〈フェルナンド・ペレス〉- 『4,000人の子どもたち』1980/15分
『カミロ』1982/24分
『オマーラ』1983/26分
『永遠のハバナ』2003/84分
〈Another Eye〉- 1960年、ICAICの招きなどで海外からキューバを訪れた映画作家たちの手助けや若き作家の卵たちへの指導は、設立されたばかりであったICAICを、その後の成功へと導く重要な道標となった。キューバで共同制作も行った、海外の作家たちの眼差しのこもったもうひとつのキューバ映画。
『キューバのみなさん、こんにちは』アニエス・ヴァルダ/1963/30分
『彼女』テオドール・クリステンセン/1964/34分
『一千万の闘い』クリス・マルケル/1971/58分
〈移民の島〉- キューバは、様々な意味で〈移民〉の島である。その行き交いは500年以上以前から現在にも続く。
『もっとも長い旅』リゴベルト・ロペス/1987/18分
『時の踊り』ソン・イルゴン/2009/92分
『青年の島』アナ・ラウラ・カルデロン/2007/72分
〈永遠のハバナに続いて〉- 2003年に『永遠のハバナ』がキューバで公開されてから8年が経とうとしている。国内外で大きな反響を呼んだ本作に脈々と流れる「夢とはなんであろうか」「今をいきること」というテーマを抱えつつ、自身の手でキューバの現実と向かい合い、作品を編んでゆく次世代の作家たち。
『シュガー・カーテン』カミラ・グスマン・ウルスーア/2006/80分
『ハバナを探して』アリナ・ロドリゲス・アブレウ/2006/21分
『マルティ』アラナ・シモエス/2007/13分
『二人のわたし』アラナ・シモエス/2007/15分
『舟の造り方』スサーナ・バリーガ/2007/13分
『イリュージョン』スサーナ・バリーガ/2008/24分
『寂しいベッド』サンドラ・ゴメス/2006/14分
『未来は今日』サンドラ・ゴメス/2009/35分
『ボイーオ』カルロス・Y・ロドリゲス/2010/14分
『クーバ・センチメンタル』田沼幸子/2010/59分
- ■ゲスト
- スサーナ・バリーガ(『舟の造り方』『イリュージョン』監督)
フェルナンド・ペレス(『永遠のハバナ』ほか、監督)
田沼幸子(『キューバ ・センチメンタル』映画監督)
比嘉世津子(ラテンアメリカ映画配給)
岡田秀則(映画研究者、東京国立近代美術館フィルムセンター主任研究員)
ほか(予定)