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天使の家で
In the House of Angels
Dei Mjuke Hendene

ノルウェー/1998/ノルウェー語/ カラー/35mm(1:1.66)/97分

監督・脚本:マルグレート・オリン
撮影:スヴァイン・クローヴェル
編集:ヘルゲ・ビッリング
音楽:マイク・スコット(ザ・ウォーターボーイズ)
録音:ラグナル・サムエルッソン、ホーコン・ランメトゥン
製作:トマス・ローブサーム
製作会社:スペランザ・フィルムAS
提供:ノルウェー・フィルム・インスティテュート
配給:ディー・ネット・セールス (
d.net.sales)
Karwendelstr. 21, 12203 Berlin, GERMANY
Phone: 49-30-84306168/ Fax: 49-30-84306167
E-mail:majade@t-online.de



マルグレート・オリン
Margreth Olin


1970年スンモーレのストランダ生まれ。オスロとベルゲンの大学で学び、ヴォルダ地方大学で映画およびテレビ番組制作の学位 を取得。専攻はドキュメンタリー。現在、スペランザ・フィルムASの共同オーナー。監督デビュー作は『In the House of Love』(1994)。『My Uncle』(1997)はノルウェーの国際映画祭でアマンダ賞にノミネートされた。『天使の家で』は、初の一般 劇場公開作である。

人間にとって老後をいかなる形で過ごせるかということは、結局、その人間の人生のゴールをどのような形で締めくくるかというテーマに繋がる。個人の立場に即してこれは社会環境をはじめ宗教、哲学などの問題も含む難しいテーマであり、容易に解答は出せないものであろう。ただ1つ言えることは、やはり人生の終焉の時には、本人の希望するままの環境が整えられることが理想であろう。それにしても現実は厳しい。『天使の家で』はノルウェーのある老人ホームが舞台となっている。映画はそこに入所したアイナールという男性を記録する。彼は諸般 の事情から同じホームに住んでいる妻と離れて暮らしている。結婚して60年も経つ夫婦にはそれが不満である。ホームに住む人間とその環境には深い溝が横たわっているのだ。
1970年生まれの若きマルグレート・オリン監督はドラマを見るように終始、冷静な視点で老人たちの生活を微細に観察し、撮影を続けていく。やがてそこからは、老人福祉はどこまで当事者たちに寛容な場を提供できるのだろうか?という個人的にして世界共通 の問題が静かに、しかし力強く問いかけられていく。 [渡部実]

【監督のことば】
世界の中で最も豊かな国の1つに住む人々が、自分たちの国を貧しいと考えるのは何故だろう。私には1つの考えがある。
“なぜ”(Why)生きるのかということが、もはやわからない私たちにとって、“どう”(How)生きるのかということが最も重要になってきている。神、精神、理性の欠如といえるのかもしれない。私たちは、なぜここに存在しているのだろうか。
私は手がかりを探している。その1つが『天使の家で』である。私たちは老人を施設に入れる。彼らはドアに番号のついた小さな部屋を与えられる。死と老いは私たちの最後のタブーなのだ。
人間らしさを与えるもの─夢や希望や想像力─を私たちは死ぬまで持っている。これは私たちの祖父母から受け継いだものに違いないし、自分たちのルーツとなる宝でもある。
ノルウェー人がそこから学んでいるものは何だろうか。
私がこの映画を作ったのは、年老いた人々に顔を、最も輝いている顔を与えたいと思ったからだ。映画は人々を反省=省察させ、共同体、愛、家族、希望といった言葉の意味を豊かにすることができると私は信じている。
ワイズマンの映画を観たとき、私は農婦になるのをやめ、映画監督になろうと決意した。もし、彼の映画のような感情(エモーション)の真実に出会えるのであれば、人生はきっと意味のあるものになると私は考えた。言ってみれば、ひとつの“Why(なぜ)”であって、“How(どう)”ではないだろう。『天使の家で』は私たちが老人を、どう扱うかを考察する映画だ。たぶん、だからここには“Why(なぜ)”がないのだろう。
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