English
[トルコ]

アナトリア・トリップ

Anatolian Trip
Anadolu Turnesi

- トルコ/2018/トルコ語、英語/モノクロ/DCP/114分

監督:デニズ・トルトゥム、ジャン・エスキナジ
撮影:デニズ・トルトゥム
編集:ジャン・エスキナジ、デニズ・トルトゥム
音楽:Venus Music Peace Band
音響:ジェンケル・キョクテン
エグゼクティブ・プロデューサー:ジェム・ジェラル・ビルゲ
製作:アスル・エルデム、デニズ・トルトゥム
製作会社:Beatrice Films, Venus Works
配給:Beatrice Films www.beatricefilms.com
配給(アジア太平洋地域):Tarantula www.trntl.net

時は2014年大統領選前夜。イスタンブールを出発し、路上演奏をしながらアナトリアを周る若者インストゥルメンタル・バンド「Venus Music Peace Band」。合間に出会う旅人や土地の人とは、政治の話から、民族や階級ポリティックスまで、いつの間にやら井戸端会議が繰り広げられる。世代間や政治観、地域差を好奇心旺盛に行き来しながら、演奏する側も耳慣れない音楽を聴く側も、音楽も旅も即興で進むロード・トリップ。(WM)



【監督のことば】トルコの選挙を目前に控えたある日、私たちは古いフォルクスワーゲンに楽器を積んで、特にこれといった計画もなくロードトリップに出発した。この行動が特異であることは、旅を始める前からわかっていた。しかし、そもそも私たちがこのプロジェクトに魅力を感じたのは、それが特異であり、非合理的な決断だったからだ。結末を知らず、考えることもないまま、ただ車を走らせて撮影したいという欲求が、この映画の魂であり、正当性である。『アナトリア・トリップ』は、音楽バンドのツアーを追っただけの映画ではない。私たちが目指したのは、断片的な構造を持つこの映画で、2014年夏という、歴史上のある特定の時間におけるトルコの姿を、主観的、かつ不完全な形で描くことだ。

 『アナトリア・トリップ』では、多くの映画技法が使われている。シネマ・ヴェリテ、ミュージックビデオ、トーキングヘッド・ドキュメンタリー、モキュメンタリー、実験映画の技法を拝借し、自意識を持った遊び心のある味付けで、心躍るアイロニーを表現した。技術的な話をすれば、モノクロ撮影で、アスペクト比は一般的でない1.66:1だ。このフォーマットを選んだのは、映画の世界と現実の世界の間にできるだけ距離を取りたかったからだ。時代や文脈は関係なく、今という時間を違う姿で見せたかった。編集作業をしながら気づいたのは、30年か40年後の観客が、この映画をどう受け止めるかを考えるのが大切だということだ。奇妙である(それゆえに興味深い)と同時に身近に感じられる、ある種の歴史の記録を創造する可能性を、私たちはずっと考えている。


デニズ・トルトゥム

1989年イスタンブール生まれ。映画とニューメディアの世界で活動する。ヴェネチア、サウス・バイ・サウスウェスト、シェフィールド、トゥルー/フォールス、ドキュフェストなどの映画祭をはじめ、世界各地で作品が上映されている。研究助手を務めたMITオープン・ドキュメンタリー・ラボでヴァーチャルリアリティを研究。2017−18年にかけてハーバード大学映画研究センターのフェローとなり、『Phases of Matter』を制作。同作はポストプロダクションの段階にある。



ジャン・エスキナジ

1986年トルコ・イズミル生まれ。バード大学で映画とエレクトロニックアートを学ぶ。『Summer Night Sky』(2014、アンタルヤ・ゴールデンオレンジ映画祭で上映)、『Sober Nights』(2015、SIYADトルコ映画批評家協会賞最終選考作品)などの短編映画、ビデオ作品がある。『Film Comment』誌、『Altyazi Monthly Film Journal』誌に執筆。住まいのあるイスタンブールを拠点に映画作家・編集者として活動する。