[韓国]
ソウルの冬
Winter in Seoul서울의 겨울
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韓国/2018/韓国語/モノクロ/デジタル・ファイル/25分
監督、撮影、編集、製作:ソン・グヨン
音楽:ユ・テヨン
ナレーション:パク・イェジュ
出演:ナム・ギョンウ
オリジナル・テキスト:キム・スンオク「ソウル1964年 冬」
提供:ソン・グヨン
ホテルの一室で執筆をする青年。外では寒いソウルの街を人々が行き交う、ある一晩。寡黙な謎の青年についてのナレーションであるかのように、女性の声が言葉を繰り出す。内容を掴み取ろうとすると、するりと抜けるようなリズミカルな言葉の流れは、夜のネオンや屋台、青年の動きと人々の吐く白い息と合わさって、ランダム性というリズムをやがて刻み出す。(WM)
【監督のことば】
- この映画は、ひとつの読書記録をペンではなくカメラを用いて書こうとする試みだ。あるいは、言葉の代わりにイメージと音で書かれた読書記録と言ってもいい。元となるのは、キム・スンオクによる1965年のモダニズム短編小説『ソウル1964年 冬』。偶然出会った3人の男が、ある冬の夜、ソウルでともに時を過ごす物語である。
- この映画は翻案をめぐる実験だが、本作が翻案しようとしているのはあくまで小説の感触や雰囲気であって、そのプロットではない。この意味で、イメージや音は、『ソウル1964年 冬』からにじみ出る言葉にならない印象を伝達する手段として機能するよう用いられている。また加えてナレーションも、小説の元々の文章をシャッフルして書かれており、おのずとそれは物語の意味を剥ぎ取り、言葉から生まれた情感を強調するものとなる。
- この映画は、ソウルという街とその冬の夜についてのポートレートである。とりわけ描かれるのは、都市のなかの疎外された部分だ。そこでは、誰も気にかけない小さな細部が隠されたまま、誰かに発見されるのを待ちわびている。この映画を、モーテルの部屋にいる男の情景とともに形づくるのは、取るに足らないそうした装飾模様である。そして、基本的には未知のテクストを執筆しているだけの男の行為が暗示するのは、彼こそが観客と都市のさびれた風景とをつなぐ媒介者であるということなのだ。
ソン・グヨン
1988年、韓国ソウル生まれ。韓国外国語大学校でメディア・コミュニケーションの学士号を取得し、現在、シカゴ美術館附属美術大学にて映画・ビデオ・ニューメディア専攻の修士課程に在籍。ドキュメンタリー、フィクション、ランドスケープが入り交じるハイブリッドな映画制作に関心を持ち、前作『A Walk』(2017)は2018年のヴィジョン・デュ・レエル(スイス・ニヨン)で上映された。現在は初の長編作品となる『Afternoon Landscape』の制作に取り組んでいる。