ハルコ村
Xalko-
カナダ/2018/クルド語/カラー/DCP/100分
監督、製作:サミ・メルメール、ヒンドゥ・ベンシュクロン
脚本、撮影:サミ・メルメール
編集:レネ・ロベルジュ
録音:マーティン・アラード
配給:Les Films de la Tortue
監督の故郷アナトリアのクルドの村の男たちは、欧州で働き生活している。家を守る女たちは、十分な仕送りができなかったり、音信不通になったりしながらも、彼らの身を案じる。仕事の傍ら、楽ではない村の生活の愚痴を言いながら、常に話題に上るのは、やはり出稼ぎ中の父や夫のこと。そこへ監督の叔父が7年ぶりに、妻と成長した娘の元に一時帰国を果たし……。ハレの日の結婚式、あれこれ話す女たちの日常の裏には、大家族の喜怒哀楽が詰まっている。(WM)
【監督のことば】私はハルコ村に生まれ、17歳になるまでそこで暮らした。兄弟、姉妹、母、そして私は、ヨーロッパへ出稼ぎに行った父が帰るのを、ただひたすら待ち続けた。結婚の「季節」の夏になると、父はたまに帰ってくることもある。そして何週間か私たちと一緒に過ごし、また去って行った。とはいえ、たとえ父がいなくても、私たち家族は日々の暮らしに小さな幸せを見つける方法を知っていた。カリスマ性を持つ強い母が家族をひとつにまとめ、そして移り変わる季節の中で私たちの生活は続いていった。学校、休暇、村の子どもたちとの遊び、家の仕事。それだけでなく、家畜の世話、吹き荒れる風と砂、雪に覆われる冬もある。
そして知らせがやってきた。父が心臓発作で死んだという。他のクルド難民と一緒に、スイスとオーストリアの国境を密かに越えようとしていたときのことだった。父はもう二度とハルコに帰ってこなかった。そして1年がたち、今度は私が留学のために村を離れることになった。
北米に行ってから10年後、私は初めて村に戻った。3000戸ほどある家の半数は空き家になっていた。残っているのは主に女性と子どもだ。波風から村を守り、村の活気を保ち続けようと力を尽くす彼らの姿に、私は感銘を受けた。
村に戻り、私の記憶が呼び覚まされた。記憶がこの映画の触媒だ。この村が完全にうち捨てられる前にその暮らしを記録し、村を守り続けた人たちを讃えなければならないという強い思いに駆られ、私はこの映画を作った。
トルコに生まれ、現在はカナダのモントリオール在住。監督作に、アメリカのミシガン州に暮らすホームレスを描いたドキュメンタリー『The Box of Lanzo』(2006)、劇映画『La chambre』(2019)がある。
ヒンドゥ・ベンシュクロン
ドキュメンタリー『La petite fille d'avant』(2003)、『Taxi Casablanca』(2008)を監督。
両者の共同監督作『Turtles Do Not Die of Old Age』(2010)は、モロッコのティトゥアン国際映画祭で大賞を受賞し、ケベック映画週間でジュトラ賞にノミネートされる。前作のドキュメンタリー『Callshop Istanbul』(2016)は、アガディール国際ドキュメンタリー祭(FIDADOC)、ダフーク国際映画祭、ゴールデン・ツリー国際ドキュメンタリー映画祭をはじめとする世界各国の映画祭に出品され、いくつかの賞にも輝いている。また、2017年、ケベック映画賞でも最優秀編集賞と最優秀ドキュメンタリー賞にもノミネートされている。