選ばれた物語
Crop-
エジプト、ドイツ/2013/英語/カラー/Blu-ray/47分
監督、脚本:ヨハンナ・ドムケ、マルワーン・オマラ
撮影:メラニー・ブルッガー
編集:ヨハンナ・ドムケ、イマド・マーヘル
製作:ヨハンナ・ドムケ
提供:ヨドカ・プロダクション
エジプトを代表する日刊紙「アル=アハラーム」。その社内を固定カメラが隅々まで捉え、フォト・ジャーナリストの語りと相俟って、過去の為政者たちのメディア戦略を浮かび上がらせる。カメラによって切り取られた(cropされた)エジプトのイメージが、革命を機に崩壊し、そしてまた新たに生み出されるであろうことを予感させる。
【監督のことば】本作の共同監督マルワーン・オマラとヨハンナ・ドムケは、1月25日の革命から1年後の2012年にカイロで出会った。二人は、これほど即座の政治的影響力をもつ歴史状況を記録するには、既存メディアが無力であることを感じた。同時にこれほどの激動を記録するには、物語の表現内容だけでなく、新しい表現形式が必要であることも感じた。そこで二人は、イメージ自体の社会的、政治的な影響力を調査することに決めた。そのことが、エジプトの過去50年の歴史における、目に見えるイメージ作りの手法を読み解くことにつながった。
けれどもイメージに関する私たちの視点は、同時に未来にも向けられ、あるいはどのようにして表象パターンが、現下の出来事でも繰り返されるのかを見つめている。チュニジア、シリア、そして最近ではトルコに見られる他の解放運動と同様に、一人ひとりの個人がメディアのソースとして重要な役割を果たしている。とはいえ、どんな既存の権力システムであれ、お墨付きの権力者のイメージ表現を決まって用いるものなのだ。その意味では、この映画は権力がどのように扱われ、その文脈のなかでイメージが何を意味しているかに取り組んだ、普遍的なアプローチの作品だとも言えよう。
1978年、ドイツのキール生まれ。デンマーク王立芸術アカデミー(コペンハーゲン)およびスウェーデンのマルメ芸術アカデミーで美術を学ぶ。構造的かつ社会/政治的なアプローチで、アートと映画が交差する作品を生み出している。現在、ドイツ・ケルンのメディア芸術アカデミーの研究プログラムに参加している。
マルワーン・オマラ
1987年、エジプトのカイロ生まれ。カイロ大学の応用美術学部で撮影を学び、2006年に映画芸術技術アカデミーに入る。近年、若いフィルムメーカーを対象にした文化研修プログラム「アラビア・オフ=スクリーン」や、ダーバン・タレント・キャンパスに参加している。