やまがたと映画 |
---|
|
立ち上がれ日本――オキュパイド・ジャパンからの脱出
戦後占領期日本で、全国的に好評裡に国民から迎えられたナトコ(CIE)映画。ほとんどが英米の製作だが、40本ほどは日本国内で製作された、民主主義の教育映画である。そして、その中で最も多く製作したのがシュウ・タグチ(田口修治)であり、その作品はコンクール等でも優秀な成績を収めた。これらの戦後民主主義は、本当に日本に根付いたのか。シュウ・タグチの子息である田口寧に受け継がれた、日本への愛情を伴う記録映画製作の精神は、日本の成長と共にどう変化していったのか。
シュウ・タグチ・ プロダクションズ 1
漁(すなど)る人々
Men Who Fish- 1950/日本語/モノクロ/35mm/25分
製作会社:シュウ・タグチ・プロダクションズ
提供:東京国立近代美術館フィルムセンター
網元から漁民を解放した、漁業法改正の宣伝映画。宣伝臭がないことが好評であった。本作におけるフラハティの『極北のナヌーク』の影響を指摘する研究者もいる。英語版も存在は確認されているが、今回は日本語版を上映。世界USIS映画コンクール第1位作品。岡崎宏三が撮影を務め、漁民たちのいきいきとした様子を捉えている。
極北のナヌーク(サウンド版)
Nanook of the North (sound version)- アメリカ/1922/英語/モノクロ/16mm/50分
監督:ロバート・フラハティ
提供:山形ドキュメンタリーフィルム ライブラリー
ドキュメンタリー映画史上屈指の名作。自然と闘う人間の姿を、自然との共生、調和とともに描く。「どのような原則を持っていなければならないかという彼の考えが明確に現れている。単なるドキュメンタリー映画という概念を超えた存在である」(YIDFF 1989 公式カタログより)。田口寧もこの映画に影響されてドキュメンタリーの世界に入り、撮影の岡崎宏三もまた、フラハティの作品に多くを学んだと話している。
シュウ・タグチ・ プロダクションズ 2
立ち上がれるか日本
Can Japan Rise to Its Feet?- 1947年頃/日本語/モノクロ/ビデオ(原版:35mm)/14分
製作会社:シュウ・タグチ・プロダクションズ
提供:田口寧
社団法人日本ニュース映画社のニューヨーク支社長、戦時中にはマニラ支社長を務めたシュウ・タグチ。敗戦後の日本を憂い、その復興を願った作品。
はきちがえた民主主義、自由主義、戦後日本の姿に苛立ちを見せながらも、希望と期待をもって警鐘を鳴らす。戦争体験から本当に日本は立ち上がれるのか。これで良いのか、立ち上がれ日本!
新しい保健所
Model Health Center- 1949年頃/日本語/モノクロ/ビデオ(原版:35mm)/20分
製作会社:シュウ・タグチ・プロダクションズ
提供:記録映画保存センター
CIE(GHQ民間情報教育局)作品。地域における保健所の役割をわかりやすく映像化。固陋(ころう)な因習に囚われた日本の衛生観念を取り除くために制作された。CIEの作品群、特に日本製作の映画には同じような切り口の作品が多く製作されている。本作は保存状態が悪いが、音声は聞き取りやすい。
わが街の出来事
It Happened in Our Town- 1950/日本語/モノクロ/35mm/15分
製作会社:シュウ・タグチ・プロダクションズ
提供:東京国立近代美術館フィルムセンター
CIE映画。地域のごみ問題、衛生問題。川に捨てたごみが原因で、住民間で言い争いになる。しかし、調査が進むにつれ市の予算不足など、別の問題が見えてくる。住民同士が建設的意見を出し市長に陳情する。そして市全体の問題、公共の問題であると認識が広まっていく。
わたしの大地(英語版)
This Land Is Mine- 1951/英語/モノクロ/ビデオ(原版:35mm)/17分
製作会社:シュウ・タグチ・プロダクションズ
提供:田口寧
山形ロケの可能性が指摘されていたが、未発見だった作品。田口寧所蔵のVHSビデオから起こしたものを今回上映する。日本製作のCIE映画の英語版は、今回初めて発見された。シュウ・タグチの長兄、田口桜村(松竹蒲田の俳優・脚本家)が山形に疎開していたのが機縁となっている。山形新聞や天童町役場が写っている。英語版では「ヤマグチ」と紹介されている。
「民主主義」を担いで ― インタビュー:山形県内ナトコ映画上映運動
Carrying "Democracy"--Interview: The Yamagata Natco Screening Movement- 2011/日本語/カラー/ビデオ/36分
製作:山形国際ドキュメンタリー映画祭「やまがたと映画」特集班
撮影:千田浩子
編集:岡達也
インタビュー:冨塚正輝
戦後GHQのCIEによりナトコ映写機と民主主義教育映画が大量に上映され、山形県におけるこの上映は、公民館設置の動きと共に大変な動員を誇った。その上映に携わった方々が当時の思い出と、運用の実態を語る。
シュウ・タグチ・ プロダクションズ 3
台風の眼
The Eye of A Typhoon- 1954年頃/日本語/モノクロ/ビデオ(原版:35mm)/37分
製作会社:シュウ・タグチ・プロダクションズ
特撮:円谷英二
音楽:伊福部昭
提供:記録映画保存センター
世界で初めて台風の眼の中に入って撮った作品。アメリカの空軍の協力を得るまで8カ月を要しプロダクションも経済的に窮地に陥ったが、上映も叶い、USISに買い取られ窮地を脱したという。円谷英二の特撮、伊福部昭の音楽など、本多猪四郎監督の東宝特撮映画の先駆をなす。
巨大船を造る
Building Massive Ships- 1967年頃/日本語/カラー/ビデオ(原版:35mm)/29分
監督、脚本:松尾一郎
製作会社:シュウ・タグチ・プロダクションズ
提供:株式会社ポルケ
田口寧が率いるシュウ・タグチ・プロダクションズ作品。三菱重工の巨大タンカーの製造過程を追っていく。静謐な映像の中にも力が漲り、高度成長に向かう日本の自信が満ちあふれる。