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映画祭2003情報

インターナショナル・コンペティション


応募総数:83の国・地域より902作品

(英語題アルファベット順)

 世界中から応募された902作品の中から選ばれた珠玉の15作品。映画祭期間中に一般上映され、審査員によってロバート&フランシス・フラハティ賞ほか各賞が決定される。

審査員
アラン・ベルガラ(フランス、映画批評家・監督)
クリスティン・チョイ(アメリカ、『誰がビンセント・チンを殺したか?』監督)
アミール・ナデリ(イラン、『マラソン』監督)
アナンド・パトワルダン(インド、『戦争と平和』監督)
高嶺剛(日本、『ウンタマギルー』監督)

神聖なる真実の儀式
Basal Banar--Sacred Ritual of Truth
フィリピン・パラワン/2002/パラワン語、フィリピン語/カラー/16mm/120分
監督:アオレイオス・ソリト

映画祭'99アジア千波万波『部族へ帰れ』(ハウィ・セヴェリノ監督)でその生き方が描かれたフィリピン先住民族の血を引く実験映像作家アオレイオス・ソリト。彼は故郷のパラワン島へ帰って神聖なる儀式や日常生活をカメラにおさめる。多国籍企業などの介入により生活が破壊されていく様子とそれへの怒り。打楽器の響きと映像のリズムが渾然一体となって見るものを独特の映画世界に引き込んでいく。

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フラッシュバック
Flashback
ラトヴィア/2002/ロシア語、ヘブライ語/カラー、モノクロ/ビデオ/105分
監督:ヘルツ・フランク

『その昔7人のシメオンがいた』(映画祭'91コンペ優秀賞受賞)のヘルツ・フランク監督の自伝的作品。活動してきた国を歴訪する映像の合間に挿入される過去の作品の断片――出産、死体解剖、割礼、死刑執行を待つ囚人などショッキングなテーマの果てに監督自身の心臓手術シーンが待ち受ける。自らを題材として生と死について語り続ける真摯さの中から、75年という人生の軌跡が鮮やかに浮かび上がる。

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時の愛撫
Fuente Álamo--The Caress of Time
スペイン/2001/スペイン語/カラー/35mm/72分
監督:パブロ・ガルシア

スペインの小さな村フエンテ・アラーモの一日。降り注ぐ陽の光のまぶしさ。思春期の少年少女の語らい、靴工場で働く娘、畑を耕す農民、家事に勤しむおばあさんなど、村人の何気ない日常が淡々と綴られていく。過ぎゆく時間を愛おしむような温かい眼差しに満ちた映画。

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生命(いのち)
Gift of Life
台湾/2003/中国語、台湾語/カラー/ビデオ/148分
監督:呉乙峰(ウー・イフォン)

映画祭'97アジア千波万波『陳才根と隣人たち』、映画祭'99シンポジウム「全景&CINEMA塾」で2度山形映画祭に参加している呉乙峰監督待望の新作。1999年9月21日に起きた台湾大地震。監督が友人と交わす手紙のやりとりを軸にして、地震によって肉親を失った家族の悲しみが、年老いて今は施設で暮らす監督の実父との関係とともに描かれていく。死と別離、絶望、そして生きることへの渇望。生命の意味を問う秀作。

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天使狩り ― 預言者詩人の四つの情熱
Hunting Down an Angel or Four Passions of the Soothsayer Poet
ロシア/2002/ロシア語/カラー、モノクロ/35mm/56分
監督:アンドレイ・オシポフ

ロシアの詩人アンドレイ・べールイの生涯を実験的手法で描いた異色作。全編1910年代から20年代にかけてのロシアの記録映画や劇映画が編集・再構成され、ベールイが生きてきた時代と彼をめぐる4人の女性についての物語が描かれる。「神の恩恵を受けた者」「幽霊の化身」「ゴーゴリの再来」「ヒステリー」「自惚れ屋」などと称されたベールイの内面に迫る。

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炎のジプシーバンド
IAG BARI--Brass on Fire
ドイツ/2002/ドイツ語、ルーマニア語/カラー/35mm/98分
監督:ラルフ・マルシャレック

少年が湖でホルンを拾い上げるシーンからこの物語は始まる。ルーマニアの小さな村で生まれたジプシー・ブラスバンド「ファンファーレ・チョカリーア」が、やがて世界中を席巻し多くのファンを生んでいく。クストリッツァ監督の『アンダーグラウンド』や『黒猫・白猫』でも知られるジプシー・ブラスバンドの中でも世界最速音と言われる彼らの公演の旅を詩情豊かな映像で描く音楽ドキュメンタリー。東京公演の愉快な映像もあり。

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ヒトラーのハイウェイ
On Hitler's Highway
フランス/2002/ポーランド語、ロマニー語、トルコ語、ウクライナ語、ドイツ語、英語/カラー/ビデオ/81分
監督:レック・コワルスキー

ポーランドにある最も古いハイウェイ。それはヒトラーが物資や収容所へユダヤ人を運ぶために作ったものだった。今ではブルガリアからの売春婦が立つその沿道を旅しながら、ポーランド人の血をひく監督がヒトラーの痕跡を新たな視点からカメラに切り取っていく。新世代のアウシュビッツ映画。

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ウイ・ノン
Oui Non
アメリカ、フランス、イタリア/2002/フランス語、英語/カラー/ビデオ/115分
監督:ジョン・ジョスト

写真家ユジューヌ・アジェが撮った20世紀初頭のパリ。画は現代のパリに移動し、その風景の中に若い男女の恋物語が進行する。『ロンドンスケッチ』(映画祭'97特別招待)や『シックス・イージー・ピーセス』(映画2001コンペ優秀賞受賞)で台詞や物語性を排することによってデジタルビデオの可能性に新境地を切り開いてきたジョン・ジョスト監督。恋する人間の息吹きを介在させることによって彼の映画はこれまでにない官能性を獲得しここにひとつの到達点を示した。

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純粋なるもの
Purity
イスラエル/2002/ヘブライ語、英語/カラー/ビデオ/63分
監督:アナット・ズリア

ユダヤ教徒の結婚と性について考察。家族で聖なる浄めの儀式に出席する様子、男性社会における女性の葛藤、そして戒律による夫婦生活や性のあり方。カメラに向かい率直な意見を述べる女性たちは、二千年来のユダヤ教の戒律のタブーに挑戦する。女性たちの表情の豊かさ、静謐なる水のイメージが心に残る。

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レイムンド
Raymundo
アルゼンチン/2002/スペイン語/カラー、モノクロ/ビデオ/127分
監督:エルネスト・アルディト、ヴィルナ・モリナ

1976年に軍事独裁政権に拉致され殺されたアルゼンチンの映像作家レイムンド・グレイザー。彼が遺した作品、家族を映したホームムービーや資料映像を縦横に駆使、彼の人生と1960年代、70年代のラテン・アメリカの反戦映画や解放運動の歴史が描かれる。小気味よいテンポとサスペンスフルな展開、そして全編を包み込む魅惑的な音楽の中から、CIAや独裁政権が破壊できなかった記憶と理想が立ち上がる。

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S21 クメール・ルージュの虐殺者たち
S21, the Khmer Rouge Killing Machine
フランス/2002/カンボジア語/カラー/ビデオ/101分
監督:リティー・パニュ

かつての政治犯収容所「S21」。クメール・ルージュの大虐殺による加害者と被害者をその場所に集め、非人間的で過酷な日々を再現していく。証言で明らかになる真実の数々、対峙する2人のやりとりの迫真性が25年という時を越える。カンボジア生まれのリティー・パニュ監督(映画祭2001『さすらう者たちの地』でフラハティ賞受賞)の、故国への想いが静かに脈打つ。

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羊飼いのバラード
Shepherds' Journey into the Third Millennium
スイス/2002/スイス・ドイツ語、ドイツ語/カラー/35mm/124分
監督:エリッヒ・ラングヤール

スイスの羊飼い一家の日々の営みをアルプスの山々を背景に描く。何百頭もの羊の群れ。雪のなか牧草を求めてさまよい、車が行き交う道路を横断する。小羊の出産とそれを見つめる妻や子ども、乳搾りやパン作りの毎日。世界最古の職業であるといわれる羊飼いの、実際は過酷な労働でもある生活を『アルプス・バラード』(映画祭'97コンペ作品)のラングヤール監督が見つめる。

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スティーヴィ
Stevie
アメリカ/2002/英語/カラー/35mm/145分
監督:スティーヴ・ジェイムス

『フープ・ドリームス』(映画祭'95コンペ作品)のジェイムス監督作品。1995年、監督は弟のように親しくしていたスティーヴィに会うため南イリノイに帰省した。撮影中、スティーヴィは重罪を犯して逮捕され家族はバラバラになる。それから5年、映画はスティーヴィと揺れ動く家族の姿を記録する。彼を見守り続けようとする監督の思いが見るものに伝わってくる。

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鉄西区
Tie Xi Qu: West of Tracks
中国/2003/中国語/カラー/ビデオ/545分
監督:王兵(ワン・ビン)

日本占領中に設立され、後に人口の多い工業地域に変貌していった中国東北部瀋陽にある鉄西区。現在は廃れゆくこの地域を「工場」「街」「鉄路」という三部構成の中に描き出した9時間におよぶ超長編ドキュメンタリー。廃虚となっていく工場や街、変化を余儀なくされる人々、刻々と過ぎゆく時の流れ。対象となる地域を限定し長い時間をかけて記録することにより中国社会が抱える現実をも浮き彫りにした稀有なドキュメンタリー。

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西へ
The Way to the West
ギリシャ/2003/ギリシャ語、英語、クルド語/カラー/35mm/79分
監督:キリアコス・カヅラキス

旧ソ連出身のイリーナは、よりよい生活を求めてギリシャに渡り、行方不明になった友人を探してアテネをさまよい歩くが、人身売買の犠牲になってしまう。彼女のフィクショナルな独白を通して、アフリカやアジアなどからギリシャへと渡ってきた難民の厳しい現実と悲劇が語られていく。深い悲しみが全編に漂い見るものを包み込む。


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