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事例討論:フェアユース運動の画期的な成功

ゲスト:ゴードン・クイン(映画プロデューサー・監督)
聞き手:ジャン・ユンカーマン(映画監督)


- ゴードン・クイン

カルテムクイン・フィルムズの創始者でアーティスティック・ディレクター。45年以上ドキュメンタリーを作り続けている。初作品『Home for Life』(1966)以来一貫して、一般の人々の生活を記録することで社会を探究し、批評するシネマヴェリテ様式の映画を作る。カルテムクイン社では、若手映像作家が優れた社会派ドキュメンタリーを作れる場、拠点を目指し、『フープ・ドリームス』(1994、YIDFF '95で上映)、『スティーヴィ』(2002、YIDFF 2003で上映)などを製作している。


 『フープ・ドリームズ』の撮影中、一家がパーティで「ハッピー・バースデイ」の歌を歌い始めた途端、製作予算表が1行増えた。この19世紀の歌は、信じがたいことに、著作権が未だ有効でワーナー・ミュージックが所有している。このシーンを映画で使用するために、プロデューサーのゴードン・クインと仲間たちは、権利料を支払わねばならなくなった。20世紀末のアメリカ合衆国におけるドキュメンタリー映画製作は、こんな具合だったのだ。法律解釈の曖昧さと、大企業を優遇する「慣例」が、表現の自由を押しつぶし、ひいてはドキュメンタリー文化を殺していた。

 自身も著作権利者であるクインが、状況改善の運動の中心に立った。社会を潤わせ、芸術を啓発するためなら、限定的で目的を変えた著作物の使用は、許諾なくとも認められるという「公正な使用(フェアユース)」の再定義から始めた。リミックス世代の「やっちゃえばいいじゃん」という姿勢とは対照的に、クインたちは映画作家、学者、配給関係者、弁護士を組織した。フェアユースを支持する強靭な論理を打ち立て、配給会社とテレビ局に打診。一社ずつ賛同を集め、まもなく変革が始まった。

 クインたちはこの動きを社会運動として立ち上げることにこだわった。フェアユースの原理が、民主主義の根幹に切り込む根拠だと考えたのだ。フェアユースは、アイディアの健全な流通と交換を可能にし、アーティストが先駆者たちと直接対話できる活力を与える。彼らの運動の細部は、他の国の法規範に直接移し替えられるものではないかもしれないが、緻密な組織作りと優れた戦略によって、映画作家の労働環境を変貌させたひとつの例を示す。アメリカのドキュメンタリー界に革命を起こしたこの運動は、啓発を促す参考となろう。

阿部マーク・ノーネス