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  • マテリアル&メモリーズ 〜8ミリ3台映写三面マルチライブ映画連作集〜

    Material & Memories

    - 日本/2009/日本語/カラー、モノクロ/8mm/145分/ 3面マルチスクリーン、ライブ映画映写、ライブ音楽演奏、ライブナレーション

    監督、撮影、編集、音楽、製作:原將人
    ライブ映画演奏(映写):友利栄太郎
    ライブ音楽演奏:金子遊(ベース)、マオリ(ボーカル)、 原鼓卯(パーカッション)ほか
    提供:原將人 web.kyoto-inet.or.jp/people/hara-mov/

    『マテリアル&メモリーズ』は、世界がイメージで出来上がっているというアンリ・ベルクソンの言葉に啓示を受けて作られた、前人未到のライブ映画である。唯一、自由な速度で映写のできる8ミリ映写機3台で、シネスコ画面に、音楽を奏でるように見る者の記憶を揺さぶる、まばゆい夢のような映像が展開される。


     タイトルは、19世紀末、映画の誕生と同時期に書かれ、映画について哲学的に言及したベルクソンの『物質と記憶』からとられたもので、映画の起源に遡り、根源的な映画史の見直しが行われている。

    1. すべて8ミリオリジナルフィルムによる上映。デジタルが主流になった今、8ミリは映画の誕生の記憶を最も濃く受け継いでいる装置である。
    2. ビートを刻む秒4コマのスローモーション映写。そのフィルムの粒子の運動は、身体とシンクロし、持続し、生成する時間である。
    3. 3台の映写機による3つの画面の異なった時間は、受け手に開放された全く新しいモンタージュである。


     鉄道の発達がもたらした19世紀的表象が、映画を誕生させたイメージを綴るプロローグ『ベル旅〜ベルクソンをめぐる旅』。

     火事に遭った『初国知所之天皇』の伝説の8ミリが修復され三面に並び、時の層が立体をなし、あたかも記憶を縦に開けたかのような『初国の旅』。

     ベルリンの壁や、ヒッピーの聖地マラケッシュが、火事の熱によって特殊処理を受けたフィルムのアブストラクトアートの合間に垣間見られる『東京・ベルリン・マラケシュ '74』。

     原の日常のトピックスが、3つの時間軸に分けられ開放され、そこに見る者の記憶が重ねられ、個的&普遍的な厚い時間が流れる『KyotoLife2003』『ノスタルジア2009』。

     これらの章によって構成される、休憩をはさんで2時間30分のライブ連作集。今回は山形用に組まれた特別プログラム。これぞ生! お見逃しなく!

    (原將人)


    - 原將人

    1950年、東京都目黒区生まれ。私立麻布高校在学中に制作した『おかしさに彩られた悲しみのバラード』('68)で第1回東京フィルムアートフェスティバルのグランプリ&ATG賞を受賞。インディーズ映画の先駆をなす。大島渚『東京戦争戦後秘話』('70)の脚本・予告編を担当。古事記をモチーフにしたロードムービー『初国知所之天皇』(1973−'93, YIDFF '93)の制作、ライブ上映を経て、映画の起源に辿り着き、映画の神話性と身体構造を確立。俳句ムービー『百代の過客』(1993, YIDFF '95)。'97年、初の35mm劇場用映画『20世紀ノスタルジア』で日本映画監督協会新人賞を受賞。2002年ライブ映画『MI・TA・RI!』でフランクフルト国際映画祭観客賞。新作劇場用映画『あなたにゐてほしい』を完成。現在、 『マテリアル&メモリーズ』を展開中。YIDFF '97ではライブ映画『ロードムービー家の夏』 ('97)を上映した。