交差する過去と現在 ――ドイツの場合 |
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Program C 東ドイツの痕跡
ベルリンの壁崩壊から20年近く経った今、ノスタルジックな回顧の対象にもなりつつある旧東ドイツ。ここでは、再統一後のドイツが抱えるもうひとつの過去、旧東ドイツが残した諸問題と対峙する作品を取り上げていく。国家保安省シュタージを中心とする国家監視システムが残した負の遺産。いまだに解消されていない旧東独・旧西独国民の間に広がる経済格差の溝。過去の山形映画祭で上映された関連作品もあわせて、統一後の視点から旧東ドイツの痕跡を今あらためてたどっていく。
誰しもすべては語れない
Last to KnowJeder schweigt von etwas anderem
- ドイツ/2006/ドイツ語/カラー/ビデオ/72分/英語字幕版
監督:マーク・バウダー、デルテ・フランケ
撮影:ボレス・ヴァイフェンバッハ
編集:ルーネ・シュヴァイツァー
録音:マリオ・ケーラー、マーク・フォン・シュチュルラー
製作:マーク・バウダー
製作会社、提供:バウダーフィルム
かつて東ドイツで反体制的な活動をしたために投獄され、西ドイツへ追放された3組の人々とその家族を追う。それぞれが抱える記憶は、家族内においても共有しえない過去として残り続けている。公言したいという想いを持ちながらも、語ることに対して踏み切れない、葛藤する彼らの姿が映し出される。
マーク・バウダー 1974年、シュトゥットガルト生まれ。1999年に製作会社バウダーフィルムを設立し、デルテ・フランケと共に『Grow or Go』(2003)、『Der Kommunist』(2006)等の作品を製作、監督。 デルテ・フランケ 1974年、ライプツィヒ生まれ。1981年に東ドイツから西ドイツへ移住。作家、ジャーナリストとしても活躍。 |
人民への愛ゆえに
I Love You AllAus Liebe zum Volk
- ドイツ、フランス/2004/ドイツ語/カラー、モノクロ/35mm(1:1.66)/88分/英語字幕版
監督:エイアル・シヴァン、オードリー・モーリオン
脚本:エイアル・シヴァン、オードリー・モーリオン、オレリー・ティツブラット
撮影:ペーター・バーデル
編集:オードリー・モーリオン 録音:ヴェルナー・フィリップ
製作:ジル=マリー・ティネー、トーマス・クーフス
製作会社、提供:ゼロ・フィルム 配給:テレプール
『スペシャリスト ― 自覚なき殺戮者』(1999)の監督エイアル・シヴァンと同作品の編集を務めたオードリー・モーリオンによる共同監督作品。20年間にわたって国家保安省シュタージで盲目的に働き続けた男の証言と、監視カメラによって撮影されたアーカイヴ映像を中心に、監視システムの実態を描く。
エイアル・シヴァン 1964年、ハイファ生まれ。エルサレムに育ち、1985年にフランスへ移住。作品歴に『Izkor, The Slaves of Memory』(1991)、『Jerusalem, Borderline Syndrome』(1994)、『Aqabat-Jaber, Peace with No Return?』(1995)、『Au sommet de la descente』(2001)など多数。ミシェル・クレフィと共同監督した『ルート181』(2003)はYIDFF 2005で山形市長賞(最優秀賞)を受賞。 オードリー・モーリオン 1966年生まれ。ソルボンヌ大学で哲学を専攻。数々の劇映画、ドキュメンタリー作品の編集を手がける。 |
キック
The KickDer Kick
- ドイツ/2005/ドイツ語/カラー/ビデオ(原版: 35mm)/82分/日本語字幕版
監督:アンドレス・ファイエル 脚本:アンドレス・ファイエル、ゲジーネ・シュミット
撮影:イェルク・イェッシェル、ヘニング・ブリュンマー 編集:カーチャ・ドリンゲンベルク
録音:ティトゥス・マーダーレヒナー 出演:ズザンネ=マリー・ヴラーゲ、マルクス・レルヒ
製作:ブリギッテ・クラーマー 製作会社:ナハトアクティーフフィルム
配給:デッカート・ディストリビューション 提供:ドイツ文化センター
ベルリン北部の小さな村で2002年、16歳の少年が他の3人の少年に暴行殺害されるという事件を、『ブラック・ボックス・ジャーマニー』のファイエル監督が、実験的な手法で再検証する。同事件の関係者へのインタビューと裁判記録をもとに、ふたりの役者が複数の関係者を演じながら、証言を再構成していく。
アンドレス・ファイエル 同プログラムのプログラムBで上映される『ブラック・ボックス・ジャーマニー』と同監督。 |
閉ざされた時間
Locked Up TimeVerriegelte Zeit
- ドイツ/1990/ドイツ語/モノクロ/35mm(1:1.33)/90分/日本語字幕版
監督:シビル・シェーネマン 撮影:トーマス・プレネルト 編集:グトルン・シュタインブルック
録音:ロナルド・ゴールケ 音楽:トーマス・カハネ 製作:ベルント・ブルクハルト、アルフレド・フルメル
製作会社:アレルトフィルム 提供:山形ドキュメンタリーフィルムライブラリー
東ドイツにあったDEFAスタジオの映画監督シビル・シェーネマンと彼女の夫は、1984年、東ドイツ保安警察に逮捕、拘留され、西ドイツに追放された。ドイツ再統一後、シェーネマン監督は自身の事件に関わった刑事、弁護士、役人などを訪ね、その逮捕の正当性を問う。YIDFF '91山形市長賞(最優秀賞)受賞作品。
シビル・シェーネマン 1953年、ベルリン生まれ。DEFAスタジオで劇映画の助監督を務める。西ドイツへ追放された後、ハンブルグで劇作家として活動。 |
スクリーンプレイ:時代
Screenplay: The Times--Three Decades with the Children of Golzow and the DEFA Documentary Film StudioDrehbuch: Die Zeiten—Drei Jahrzehnte mit den Kindern von Golzow und der DEFA
- ドイツ/1993/ドイツ語/カラー、モノクロ/35mm(1:1.33)/284分/日本語字幕版
監督、脚本:バーバラ・ユンゲ、ヴィンフリート・ユンゲ
撮影:ハンス=エバーハルト・レオポルド、ハラルド・クリックス、その他 編集:バーバラ・ユンゲ
録音:ハンス=ヨッヘン・フッシェンベット、エベルハード・シュワルツ、エルヘード・ドールマヤー、ペテル・プルグハウプト、パトリック・スタニスラフスキ、その他
音楽:ゲルハルト・ロゼンフェエルド 製作:クラウス・フォルケンボーン
製作会社:ジャーナル・フィルム 提供:山形ドキュメンタリーフィルムライブラリー
1961年ベルリンの壁が作られた直後、東ドイツのゴルツォウという村に住む子どもたちの記録映画の製作が始まった。入学、卒業、就職、結婚、壁崩壊後にいたるまで彼らの人生を追い続ける。子どもたちを通してドイツの歴史を描いた本作は、同時に旧東ドイツ最大の撮影所DEFAの映画史としても観ることができる。YIDFF '95優秀賞、市民賞受賞作品。
ヴィンフリート・ユンゲ 1935年、ベルリン生まれ。1961年より、ゴルツォウの子どもたちをテーマにした作品を撮り続ける。2006年に同シリーズの最終作とされる『And If They Haven't Passed Away . . . The Children of Golzow』を製作。 バーバラ・ユンゲ 1943年生まれ。1969年にDEFAに入社、1983年より共同監督、編集としてヴィンフリート・ユンゲの全作品に携わる。 |
掃いて、飲み干せ
Sweep It Up, Swig It DownKehrein, Kehraus
- ドイツ/1997/ドイツ語/カラー、モノクロ/35mm(1:1.66)/70分/日本語、英語字幕版
監督:ゲルト・クロスケ 脚本:ゲルト・クロスケ、マヌエラ・マルティンソン 撮影:ディーター・チル
編集:カーリン・ゲルタ・シェーニンク 音楽:テーデンフェッファー 録音:ウフェ・ホイスィッヒ
製作会社:レアリストフィルム 提供:山形ドキュメンタリーフィルムライブラリー
ゲルト・クロスケ監督による『Sweeping』(1990)に、旧東独ライプツィヒの道路清掃人として出演していた3人のその後の生活を追った作品。機械化された現在のライプツィヒの道路清掃現場や建設工事現場の情景を織り交ぜながら、問題を抱えた彼らの厳しい都市生活の営みを個々に映し出す。YIDFF '99優秀賞受賞作品。
ゲルト・クロスケ 1958年、デッサウ生まれ。1987年よりDEFAドキュメンタリー・スタジオで脚本家として活動を始める。作品歴に『Sweeping』(1990)、『Galera』(1996-97)、『Kehraus, wieder』(2006)など。 |