YIDFF 2001
アジア千波万波
アジア新進作家の新作を上映する「アジア千波万波」。34本が「小川紳介賞」ほか賞の対象として2回ずつ上映され、監督も来場して質疑応答を行ないます。また、今年は「招待作品」や「ノンプロフィット・フイルムの現在/新たな文脈を求めて」など、アジア気鋭による多彩な営みも紹介するプログラムとなりました。
- 審査員:
- 佐藤真 (日本)
チャリダー・ウアバムルンジット (タイ)
- 1
母の家は入り江 (イラン/ビデオ/32分) - 監督:メヘルダード・オスコウイ
毎日明け方、たった一人で小舟で漁に出る女。魚を売った金で最愛の老母と大晦日の日をゆっくり過ごす。
水と消えゆく (トルコ/ビデオ/23分)- 監督:ドアン・カラジャ、他5名
アンカラ大学の学生作品。ダムの建設のため歴史的な町が水に消え去ろうとしている。
地底の音 (トルコ/ビデオ/56分)- 監督:ハサン・カラジャダー
生まれ育ったトルコ東部地方からイスタンブールに移住した人々の間で自殺が多い。99年に来形したカラジャダー監督の鮮烈な新作。
[10/4 14:00=ミューズ1, 10/7 12:30=ミューズ2]
- 2
パフォーマンス (インド/ビデオ/51分) - 監督:ラーフル・ローイ
身なりの貧しい男たちが集まる広場。あやしげな精力剤を売る中年男やレスリングを教える老人らを通して男らしさの幻想に囚われる男たちの苦渋が映る。
ジャリマリ (インド/ビデオ/74分)- 監督:スラビ・シャルマー
ボンベイ空港のすぐ脇のジャリマリ・スラム。カメラは、仕事の手を休めることのできない、社会の最底辺の労働者たちに接近する。
- 3
MAYA (日本/8mm/66分) - 監督:関根博之
1930年に建てられ、今では廃墟の神戸「摩耶観光ホテル」。霊山の大気の中、早朝の霧雲に包まれ建つ静謐なその姿に魅せられた関根博之の夢のような8ミリ長編作品。
落ちて行く凧 (フランス、台湾/ビデオ/42分)- 監督:蕭美玲(シャオ・メイリン)
一世紀前、鉱山労働者としてフランスへ渡った中国人たち。日本植民地下の台湾で、金山で働いた祖父母。フランス在住の台湾女性が、故郷を亡くした流浪者の歴史に自分を重ねる。
- 4
マージナル (フィリピン/16mm/20分) - 監督:パオロ・ヴィリヤルーナ
ひとりのゲイ男性が社会の片隅で居場所を求めさまよう。フィリピン作品。
友人、スー (インド /ビデオ/ 55分)- 監督:ニーラジ・バシン
身体は男性でも心は女性。セクシュアル・アイデンティティに悩むスーが苦しい気持ちを告白する。
- 5
時の行進 (タイ/ビデオ/19分) -
監督:ウルポン・ラクササド
タイ北部の村に静かに暮らす老人をじっと見つめる。
移民者の心 (バングラデシュ/ビデオ/35分)- 監督:ジョスミン・コビル
バングラデシュからマレーシアへ出稼ぎに行った青年の足跡を追い、不在の彼をイメージと音声テープで追悼する。
村の新しい一歩 (韓国/35mm/80分)-
監督:ホン・ヒョンスク
95年「アジア百花繚乱」で上映された『村の新しい学校』の続編。年月は流れ闘争の日々は一見終わったが、村の豊さを信じる人々の心に変わりはない。
[10/5 11:30=ミューズ1, 10/8 12:30=ミューズ2]
- 6
ニュースタイム (パレスティナ/ビデオ/52分) - 監督:アッザ・エル・ハサン
戦争と死の影が生活の一部となっている町ラマラ。それでも日常には夢が、愛が、笑いが。99年来形のエル・ハサン監督の新作。
アテフェと水 (イラン/ビデオ/42分)- 監督:ナヒード・レザイ
中年女性のアテフェがイランの干ばつ地で一人暮らしを始めた。役人や技術者の男たちを説得し灌漑用水を引くことができるのか…。
[10/5 15:00=ミューズ1, 10/6 12:30=ミューズ2]
- 7
線路沿い (中国/ビデオ/125分) - 監督:杜海濱(ドゥ・ハイビン)
中国陝西省の鉄道線路沿いに住むホームレスの少年たち。冬の厳しい寒さ、食料をめぐるケンカ、農村の親を想って流す涙、髪を梳かして粋がるポーズを、同年代の監督の目から見る。
- 8
種まき (フィリピン/ビデオ/15分) - 監督:アヴィック・イラガン
山形県に嫁いだフィリピ−ナたちを撮ろうと来日した監督が見つけたものは、自分の偏見だった。
居留―南の女 (韓国/ビデオ/75分)- 監督:ソハ
韓国南部の女たちは死者を弔う特別な言葉を持っていた。雨や霧の中を行く長回しの移動映像が印象的な、今を生きる3人の女性の話。
9
団地酒 (日本/ビデオ/49分)- 監督:大野聡司
僕は画家の父と団地で2人暮らし。父のドブロク作りを撮影することが、家族を捉えなおすきっかけになるだろうか。
不幸せなのは一方だけじゃない (中国/ビデオ/45分)- 監督:王芬(ワン・フェン)
たくさんの女性と浮気を重ねてきた鉄道職員の父と、結婚生活でいい思い出は一つもないと言う母。おかしいほどの生真面目さでインタビューに応じる2人を、23歳の娘が伸びやかに捉えなおす。
- 10
昔むかし (タイ/ビデオ/13分) - 監督:パヌ・アリー
バンコク市内の遊園地が取り壊される。多くの市民が共有する思い出を映像と声で再現する。
空色の故郷 (韓国/35mm/93分)- 監督:キム・ソヨン
スターリンの強制移住政策によって多くの犠牲を払わされた韓国朝鮮系ロシア人。画家のニコライ・シンの半生を通して苦汁の歴史を振り返る。
- 11
集集大怪獣 (台湾/ビデオ/10分) - 監督:林泰州(リン・タイジョウ)
1999年の台湾大地震後、子どもたちの絵が変わった…。
別れ (韓国/ビデオ/83分)- 監督:ファン・ ユン
韓国の動物園で生まれたひ弱な子トラをボランティアたちが育てる。野性動物と人間の共生は今、大きな転換期を迎えている。
- 12
パンジーと蔦 (韓国/ビデオ/60分) - 監督:ケ・ウンギョン
生まれながらに障害をもつ2人の姉妹。そろそろ結婚したら?と周囲から圧力がかかるが…。
夢の中で (オーストラリア/ビデオ/26分)
愛についての実話 (オーストラリア/ビデオ/27分)- 監督:イ・ギュジョン・メリッサ
韓国から移民した両親にカメラを向け、優等生の映画を作った。次にカメラを自分に向け、恋人との赤裸々な関係を撮った。2本合わせて民族のアイデンティティを軽やかに照らし出す。
- 13
塩素中毒 (シンガポール/ビデオ/44分) - 監督:陳凱欣(タン・カイシン)
毎日1キロ泳がないと気がすまないというマルチメディア・アーチストによる、10章に渡るユーモラスな映像エッセー。
異相 (日本/ビデオ/51分)- 監督:川口肇
「生活の現実世界」を映像化していくと、物語が自走を始める。作品の中の現実は「ホント」なの? 作者は山形の東北芸術工科大学の専任講師。
- 14
夢の王 (インド/ビデオ/30分) - 監督:アマル・カンワル
男性とセクシュアリティについて。欲望、夢、エロス、ファンタジーを探求するユニークな美しい作品。
Blessed ―祝福― (日本/ビデオ/77分)- 監督:崟利子
作者が幼年時代を過ごした大阪の下町には、思い出のアパートと恋人の出演するストリップ劇場があった。両者へのつきせぬ想い。
- 15
僕たち (バングラデシュ/ビデオ/42分) - 監督:モンジョル・ハッサン
ダッカを吹く西洋の風に否応なく感化される新中流階級のティーネージャーたち。ポップスやイラスト描きが好きな少年たちの思春期の本音が聞こえる。
この冬 (中国/ビデオ/90分)- 監督:仲華(チョン・ホァ )
北京某武装警察部隊の若い4人の兵士。除隊を目前に、揺れる心と仲間と別れる悲しみが滲み出る。
- 16
セールス (台湾/ビデオ/58分) - 監督:曾吉賢(ツェン・ジーシェン)
「暇そうな仕事だったから」とトヨタ車のセールスマンになった黄。でもお客は気まぐれ、上司は嫌味、販売ノルマは遥か。携帯電話を片手に安息の時間はない。
ミックス・フルーツ・バナナ・スプリット (台湾/ビデオ/63分)- 監督:呉静怡(ウー・ジンイー)
3人の女の子のひと夏のロマンス。バイト先のカフェでゴミ出しの時間、憧れの彼と「偶然」会えるかしら?
●「アジア千波万波」招待作品
17
サイレント・デルタ (台湾/35mm/20分)- 監督:沈可尚(シェン・コシャン)
- 専売特許・釣魚島 (台湾/35mm/16分)
- 監督:陳芯宜(チェン・シンギ)
- 南之島、男之島 (台湾/35mm/17分)
- 監督:李孟哲(リー・モンジャー)
- 西の島 (台湾/35mm/35分)
- 監督:朱賢哲(チュ・シエンジェ)
- 03:04 (台湾/35mm/16分)
- 監督:黄庭輔(ホァン・ティンフ)
台湾の離島を自由に撮った「流離島影」シリーズ12本のうちの5本。軍事訓練所、過疎の村、自然の宝庫…。それぞれの作者が創造力を駆使し、バラエティに富んだ短編が勢ぞろいした。
[10/8 17:30=ミューズ1]
- 18
騒音の向こう側 (イラン/ビデオ/13分) - 監督:アボルファズル・ソルシュメヘル
- 日蝕 (イラン/ビデオ/15分)
- 監督:イブライム・サイーディ、メヘルダード・オスコウイ
言葉より映像で物語を語るイランの短編作品2本
ミュージシャン (オランダ、ドイツ、アルメニア/35mm/76分)- 監督:ドン・アスカリアン
『コミタス』などが日本で公開されているドン・アスカリアン監督作品。綱渡りの曲芸師とアルメニアの民族音楽を奏でる2人のミュージシャンの旅。
[10/8 20:30=ミューズ1]
アジア千波万波スペシャル
ノンプロフィット・フィルムの現在/新たな文脈を求めて
層の厚い自主映像の歴史があるにも関わらず、作品の発表や流通、評価の面で様々な問題を抱える日本のノンプロフィット・フィルム(営利を目的とせずに作られたインディペンデント・シネマ)。現状を打破しようと、来年の春にフィルムメーカーズ・インフォメーション・センター(FMIC)が立ちあがる。データベースによる情報の集積・整備と流通を中心に、今後どのような活動が予定されるのか。このグループの代表・末岡一郎と、バンコクで同様の活動をするタイの映像作家・学芸員がクロス・トークする。また、作品運用の事例として映像評論家・西村智弘のキュレーションによる上映プログラムの試みを提示する。
上映作品:奥山順市『LA CINEMA・映画』、黒坂圭太『変形作品第3番作品(ミックス・ジュース)』、西村智弘『青い手すりのある石段』、末岡一郎『不和の虹』、石田尚志『部屋/形態』、飯村隆彦『Ai (LOVE)』、青井克己『東京蜜月』、狩野志歩『揺れる椅子』など。