アメリカン・ダイレクト・シネマ
[会場]CS 山形市民会館小ホール
1960年にその登場によって世界の映像文化を揺るがしたダイレクト・シネマ。あらゆるドキュメンタリー様式に影響を及ぼしたこの新たなスタイルについて、その年ジョナス・メカスは「映画はまだ始まったばかりであるという気配が漂っている」と書いている。ダイレクト・シネマの作家たちは、台本構成や型どおりのインタビューや「天の声」式ナレーションを避け、目の前で起きていることの再現も決してしない。カメラを三脚から解放し、世界の複雑さや可能性に開かれたまま現場へと乗り込むのである。「観察映画」の誕生となるこの美学的な革命は、アメリカ文化のより大きな流れと関連するものでもあった。個々の認識を信じ、日常的現実の奥深くにあるものの発見を信じるその姿勢、その筋金入りの反骨精神は、アメリカ的なプラグマティズムや超越主義と通じ合う。また同時に、ほぼすべての作品にその頃芽生えつつあった対抗文化の刻印がみてとれる。われわれの世界を「ダイレクト」に映すその映像は、民主主義や投票権、移民問題や難民の権利、貧困、暴力、人種、多様性といった現代生活のもっとも差し迫った課題をダイレクトに論じるのではないかたちで取り扱うことを可能にした。デイヴ・ソーンダーズが指摘するように、この一群の作品は「アメリカとの、激動期と呼ぶのがもっともふさわしい時代のアメリカをめぐる、実質的かつ豊かで人を惹きつけてやまない対話に勤しむ」のだ。本特集では、アメリカン・ダイレクト・シネマを新たな分断の時代に振り返る。
- Program 1
- 『第二次世界大戦時に従軍カメラマンとして撮影した映像』撮影:リチャード・リーコック/1945/9分
『若きファイター』監督:レオ・ハーヴィッツ/1953/30分
『ジャズダンス』監督:ロジャー・ティルトン/1954/22分
『バワリーにて』監督:ライオネル・ローガシン/1956/65分
- Program 2
- 『雪靴の人たち』監督:ジル・グルー、ミシェル・ブロー/カナダ/1958/14分
『クリスマスを前に』監督:テレンス・マッカートニー=フィルゲート、スタンリー・ジャクソン、ウルフ・ケーニグ/カナダ/1958/29分
『救急救命室』監督:ウィリアム・グリーヴス/カナダ/1959/30分
『レスリング(戦い)』監督:ミシェル・ブロー、マルセル・カリエール、クロード・フルニエ、クロード・ジュトラ/カナダ/1961/27分
- Program 3
- 『予備選挙』製作:ロバート・ドルー/1960/53分
『ヤンキー・ノー!』製作:ロバート・ドルー/1960/53分
- Program 4
- 『危機――大統領による介入の背景』製作総指揮:ロバート・ドルー/1963/52分
『11月の顔』製作総指揮:ロバート・ドルー/1964/12分
- Program 5
- 『椅子』製作総指揮:ロバート・ドルー/1962/58分
『母の日おめでとう』監督:ジョイス・チョプラ、リチャード・リーコック/1963/26分
- Program 6
- 『ドント・ルック・バック』監督:D・A・ペネベイカー/1967/96分
- Program 7
- 『シセロの行進』製作会社:フィルム・グループ/1966/8分
『法と秩序』監督:フレデリック・ワイズマン/1969/81分
『警察署長』監督:E・パメンテル・ジュニア/1968/18分
- Program 8
- 『いのちの いえ』監督:ゴードン・クイン、ジェラルド・テメナー/1966/82分
- Program 9
- 『マーロン・ブランドに会おう』監督:アルバート・メイズルス、デヴィッド・メイズルス/1966/29分
『二軒の床屋の物語』監督:ウィリアム・グリーヴス/1976/28分
- Program 10
- 『解体美術館』監督:D・A・ペネベイカー/1960/8分
『誰かに愛されなければ君は誰でもない』監督:D・A・ペネベイカー/1964/12分
『カットピース、1964/1965』製作:アルバート・メイズルス、デヴィッド・メイズルス/1965/9分
『モンタレー・ポップ』監督:D・A・ペネベイカー/1968/78分
『プーナイル・コーナーの家』(『1PM』からの抜粋)製作:D・A・ペネベイカー/1971/8分
- Program 11
- 『ギミー・シェルター』監督:アルバート・メイズルス、デヴィッド・メイズルス/1970/91分
- Program 12
- 『グレイ・ガーデンズ』監督:アルバート・メイズルス、デヴィッド・メイズルス、エレン・ハヴディー、マフィー・メイヤー/1976/95分
- Program 13
- 『アメリカ合衆国ハーラン郡』監督:バーバラ・コップル/1976/103分
*Harlan County, USA was preserved in 2004 by the Women's Film Preservation Fund of New York Women in Film and Television and the Academy Film Archive.
- Program 14
- 『祝福の森』監督:ロバート・ガードナー/1986/90分
- Program 15
- 『17才』監督:ジョエル・デモット、ジェフ・クラインズ/1983/120分
- Program 16
- 『ウォールーム』監督:クリス・ヘジダス、D・A・ペネベイカー/1993/96分