その他企画
特別招待作品
[会場]YC 山形市中央公民館ホール(6F)、CL CS 山形市民会館大ホール、小ホール
『メタル&メランコリー』(YIDFF '95)以来、4作品をYIDFFで上映したリマ生まれのエディ・ホニグマン監督が2022年に逝去した。オランダ国連軍兵士たちに取材を試み、印象的な音楽 と共に彼らのこころの傷跡を照射する『クレイジー』(YIDFF 2001)を追悼上映する。また、カーボ・ヴェルデの火山で離散した三姉妹を描くペドロ・コスタ監督の短編『火の娘たち』を上映する。2021年、一夜にしてタリバンが復権したアフガニスタンから、処刑の危機にあった多くの芸術家や映画人たちの出国の手助けに、映画制作一家であるマフマルバフ家が奔走する『リスト』(2023)をクロージング上映する。
- オープニング上映
Ryuichi Sakamoto | Opus - 日本/2023/103分
監督:空音央 Sora Neo
2023年3月に逝去した音楽家 坂本龍一。闘病生活を続けていた彼が最後の力を振り絞って演奏したソロ・コンサート。2022年9月、東京のNHK 509スタジオで行われた撮影に、坂本はヤマハのグランドピアノだけで臨んだ。「Merry Christmas Mr. Lawrence」、2023年に発表された最後のアルバム「12」からの楽曲、初めてピアノ・ソロで演奏された「Tong Poo」など自身で選曲した20曲から構成。ボーダーを越え続けた坂本の軌跡を辿る曲目、鍵盤を奏でる指と音楽家の息遣い、その人生が刻みこまれた手。坂本が全面的に信頼を寄せた監督と撮影クルーたちが入念に撮影プランを練り上げ、親密かつ厳密な世界でひとつしかない宝物のような映画空間を生み出した。
- クレイジー
Crazy - オランダ/1999/97分
監督:エディ・ホニグマン Heddy Honigmann
オランダの国連軍兵士が参加した戦地での回想。今は日常生活に戻った彼らの記憶は、故郷からはるか遠く離れた場所で、気持ちをなごます特別な1曲の歌ともつれあう。ホニグマン監督は兵士たちに粘り強いインタビューを試み、戦時の記憶と絡み合う印象的な音楽とともに、彼らが受けたこころの傷跡を照らし出す。
- 火の娘たち
The Daughters of Fire - ポルトガル/2023/8分
監督:ペドロ・コスタ Pedro Costa
カーボ・ヴェルデのフォゴ火山噴火で離散した3人の若い姉妹。彼女たちは「いつの日か知るだろう、私たちがなんのために生きて、なぜ苦しむのかを」と唄う……。
- 言葉の力
The Power of Speech - フランス/1988/25分
監督:ジャン=リュック・ゴダール Jean-Luc Godard
ジェイムズ・M・ケインによる犯罪小説『郵便配達は二度ベルを鳴らす』に書かれる不倫と殺人をめぐる会話を、電話越しに口するひと組の男女。そしてもうひと組の男女が、ボードレールによって仏訳されたことでも名高いエドガー・アラン・ポーの『言葉の力』を、台詞にして対話する――「言葉の物理的な力について、なにかの考えが君の心に浮かばなかったか?」 映像メディアの創造性を考察しながら、ボブ・ディラン、バッハ、ピカソなどさまざまな芸術作品をコラージュした本作は、70年代以降ゴダールが取り組んできたビデオ作品のひとつの到達点として、『映画史』の第1章(1A)と同時期に発表された。
この作品を含む併映プログラムは、ペドロ・コスタ監督の提案により実現した。+トーク:クリス・フジワラ
- クロージング上映
リスト
The List - イギリス/2023/65分
監督:ハナ・マフマルバフ Hana Makhmalbaf
2021年、国際駐留部隊の撤退に伴い、数日にしてタリバンが復権したアフガニスタン。突如、処刑の危機に晒された多くの芸術家、映画人たちの出国の手助けに映画作家モフセン・マフマルバフと一家が、ロンドンの自宅から電話とパソコンを手に奔走する。脱出させるべき文化人たちの「リスト」を壁に張り出し、脱出用の飛行機へと彼らを誘導しようとするも、カブール空港には、国外脱出のために他にも多くの人たちも駆け込み、一筋縄ではいかない。カブールとロンドンの現場が交錯しながら、時間の限られた焦燥感が募る中、一家は最善を尽くす。