野田真吉特集:モノと生の祝祭
共催:国立映画アーカイブ
●10月6日−10日 [会場]CS 山形市民会館小ホール
ちらしダウンロード(PDF、3.9MB)
野田真吉(1913−1993)は、1937年にP.C.L映画製作所に入社、敗戦後は東宝争議を闘い、フリーとなって数多の記録映像を手掛けた。戦中・戦後を貫くこのドキュメンタリストの活動を回顧する時、人間と非人間、生物と無生物といった境界を超えた、「モノ」と「生」との関係を見据える、特異なまなざしが浮かび上がる。
たとえば、企業PR映画『マリン・スノー 石油の起源』(1960)は、微生物の死骸がやがて原油へと生成される壮大な時間を提示していた。映像詩『まだ見ぬ街』(1963)は、日常のヴェールを剝がし、無機質な街の相貌を注視していく。民俗芸能映画『ゆきははなである 新野の雪まつり』(1980)は、冬に舞う雪を、やがて訪れる春の豊穣な生命の予兆として読み換える、祝祭の記録だった。
記録映画作家協会や映像芸術の会の中心メンバーだった野田が、松本俊夫らと論陣を張り、模索したのは、単なる「事実」の記録ではなく、現実の「モノ」と向き合う中で自己の生を変革すること、そして、現実を変革するドキュメンタリーの方法だった。野田が遺した映画も、主体と客体といった二元論を退け、生々流転する世界を捉えていた。そのまなざしには、近代社会の基礎にある知や制度への根底的な批判が含まれている。没後30年にあたる今年、野田真吉の映画のいまだ汲み尽くされていない可能性を、山形のスクリーンで甦らせたい。
- ●6日
プログラム1 - 『農村住宅改善』* 1941/20分 ※戦後公開版
『東北のまつり 第一部』* 1956/11分
『東北のまつり 第二部』* 1956/10分
『東北のまつり 第三部』* 1957/20分
『忘れられた土地:生活の記録シリーズ II』1958/30分
- プログラム2
- 『谷間の少女』* 1949/49分
『機関車小僧』* 1950/45分
『小賣店の仕事』1951/18分
- ●7日
プログラム3 - 『原爆許すまじ:1954年日本のうたごえ』1954/28分
『松川事件:真実は壁を透して』* 1954/63分(ニュープリントによる上映)
- プログラム4
- 『京浜労仂者 1953』* 1953/45分(ニュープリントによる上映)
『1960年6月:安保への怒り』1960/41分
- プログラム5
- 『新日本地理映画大系 利根川』* 1955/20分
『新日本地理映画大系 本州の屋根』* 1957/21分
『新日本地理映画大系 東海道の今と昔』* 1958/21分
『新日本地理映画大系 東北の農村』* 1959/20分
- プログラム6
- 『鋳物の技術:キュポラ熔解』* 1954/18分
『マリン・スノー:石油の起源』* 1960/25分
『伸びゆく東北電力 第10集 この雪の下に』* 1956/32分
+対談:岡田秀則×田中晋平
- ●8日
プログラム7 - 『海と陸をむすぶ』1960/30分
『オリンピックを運ぶ』1964/41分
『ニチレ・ア・ラ・カルト』1963/31分
- プログラム8
- 『まだ見ぬ街』1963/12分
『ふたりの長距離ランナーの孤独』* 1966/9分
『くずれる沼 あるいは 画家・山下菊二』1976/38分
『水谷勇夫の十界彷徨』1984/34分
+トーク:小田香
- ●9日
プログラム9 - 『富山村の御神楽祭り』1985/50分
『異形異類の面掛行列』1988/18分
『砲台のあった島 猿島:あるいは廃墟と落書』* 1987/25分
- プログラム10
- 『冬の夜の神々の宴:遠山の霜月祭』* 1970/37分
『生者と死者のかよい路:新野の盆おどり 神送りの行事』* 1991/36分
+トーク:北村皆雄
- プログラム11
- 『ゆきははなである:新野の雪まつり』* 1980/129分
- ●10日
プログラム12 【入場無料】 - 『世附の百万遍念仏・獅子舞』1971/25分
『吉浜の鹿島踊、足柄ささら踊』1971/32分
『鳥屋の獅子舞』1972/16分
『三浦菊名の飴屋踊り』1972/12分
『大磯の左義長』1972/14分
『本牧のお馬流し』1973/13分
* 国立映画アーカイブ所蔵