各賞一覧
- ■インターナショナル・コンペティション
- 世界から応募されたドキュメンタリーをコンペティション形式で上映した15本のなかから、各賞が授与される。最も優れた作品に、ドキュメンタリー映画の地平を切り拓いたフラハティ夫妻の名前を冠した、ロバート&フランシス・フラハティ賞を授与する。
- ロバート&フランシス・フラハティ賞(大賞) 賞金200万円
- 山形市長賞(最優秀賞)………………………… 賞金100万円
- 優秀賞(2作品)………………………………… 賞金各30万円
- 特別賞 ……………………………………………… 賞金30万円
■アジア千波万波- フォーマットや上映時間の制約を超え、アジアの新進ドキュメンタリー作家の作品を紹介、応援するプログラム。最も可能性のある作家に、本映画祭の創設に力を注ぎ、アジア作家との交流に情熱を傾けた小川紳介監督の精神を受け継いで設置した小川紳介賞を授与する。
- 小川紳介賞 ………………………………………… 賞金50万円
- 奨励賞(2作品)………………………………… 賞金各30万円
■市民賞- 映画祭期間中に募った、観客によるアンケート集計の結果、授与する。
オリジナル・トロフィー
デザインは彫刻家、吾妻兼治郎氏によるもの。山形市・山形県の象徴のひとつである黄金色に実った“稲”の束をつかんだイメージをかたどった鋳物。 |
YIDFFのオリジナル・トロフィーをデザインした吾妻兼治郎氏が2016年10月にお亡くなりになりました。謹んで哀悼の意を表すとともに、吾妻氏の生前の足跡や功績について、山形美術館の岡部信幸さんに振り返ってもらいました。
吾妻兼治郎は1926年、山形市銅町で代々青銅鋳造業を営む家庭の7人兄弟の次男として生まれた。戦後、新制の東京藝術大学彫刻科一期生として学んだ後、1956年にイタリア政府給費留学生としてミラノに渡り、20世紀を代表する彫刻家マリノ・マリーニ(1901−80)に師事。以来半世紀にわたりミラノを拠点に幅広い活動を続け、2016年10月15日、ミラノの自宅でその生涯を閉じた。
自己の道を模索するなかで、1961年、ストーブ用の薪が散乱したさまに着目し、その木片に石膏をかけレリーフ作品に仕上げたのが「MU」連作の始まりである。1963年頃から立体へと展開し、山形市役所前に設置された「MU-1000」(1984)を最後に、85年から自由な不定形の動きを加えた「YU(有)」連作へと受け継がれていった。
吾妻の作品に見られる丸い形のムシ喰いのような穴は、虚によって実在を際立たせようとする試みである。吾妻自身「目に見える物、限定された存在物は時と共に、すべてのものは完全消滅していくものですが、目に見えない精神や感情というものは、消えることなく永遠に伝わってゆくもので、これが人間の歴史になり文化になってつづいていくものだと思います」と語っている(吾妻兼治郎による“AZUMA”、1988)。緊張感を持つ抽象的な造形でありながら、生命感と温かみを感じる吾妻の作品は、師マリーニが惹かれた生命の暖かさを豊かに含む原初的なものに対する吾妻の回答とも言えるだろう。
山形国際ドキュメンタリー映画祭のトロフィーでは、黄金色に実った稲束をつかんだイメージをデザインの基にしている。そこには吾妻の山形での幼少時の体験や記憶が重ねられてもいるだろう。山形に誕生する映画祭、そして映画との出会いを求めて世界から山形に集う人々に向けた吾妻兼治郎からの贈り物でもある。
- ■日本映画監督協会賞
- 80年以上の歴史を持ち、1960年から協会新人賞によって国内の未知の才能を発掘・応援し続けてきた日本映画監督協会が、映画の可能性を示す国内外の新しい力とのさらなる出会いを願って設置した賞。対象となる作品部門はアジア千波万波、日本プログラムで、受賞監督には日本映画監督協会賞の賞状、トロフィーおよび金一封を贈呈する。今年の審査員は、ジャン・ユンカーマン、高原秀和、中村義洋、根来ゆう。
- 賞金20万円