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私映画から見えるもの
A
  • ピゼット(最後の年かもしれない)
  • 阿賀の記憶

  • B
  • ムービング・ピクチャーズ
  • ザ・プレゼント

  • C
  • 日々 "hibi" 13 full moons
  • ギャンブル、神々、LSD

  • D
  • カルノジカ
  • ははのははもまたそのははもその娘も
  • パリッシュ家
  • ガールフレンド

  • E
  • 映像書簡10
  • 気ままなヤツ
  • 極私的に遂に古稀

  • F
  • パレード
  • 針間野
  • PROGRAM F 政治的なことでも個人的である


     個人の主観的な視点から作る「私的ドキュメンタリー」は、かつて「客観的で公正な情報の提供」と称され一部の特権者の占有物だった記録映像に対してのカウンターカルチャーとして生まれたとも言える。70年代の米国ではフェミニズムやゲイ・アクティヴィズムと結びつき「個人的なことは政治的だ」がアートのスローガンにもなった。

     ところで現代。民主主義が普及したはずの先進国でポリティカル・コレクトネスが幅をきかせ、個人の視点はむしろ脅威にさらされていないか。『パレード』では分裂化・多様化する「ゲイ・コミュニティ」の代弁から自由になり、ゲイである「自分」を描く道を発見する過程が語られる。『針間野』の作者の父親は生涯をかけた政治・労働運動に疲れ果てたことを、映画を撮りに帰国した娘との私的な関係のなかでふと告白する。この映画がひとつの家族の話にとどまらず、高度経済成長期の日本と大義を背負ってきた世代の今と重なり、大衆時代の私的な生き方を考えさせる。



    - パレード

    The Parade (Our History)
    La Parade (notre histoire)

    スイス/2002/フランス語/カラー/35mm/78分

    監督:リオネル・バイアー
    脚本:リオネル・バイアー、ローラン・ギードゥ
    撮影:リオネル・バイアー、シルヴィー・ガッシャン
    編集:
    クリスティーヌ・オッフェ 
    録音:フランソワ・ムシィー、ガブリエル・ハフネル
    音楽:
    カミーユ・サン・サーンス
    製作会社:シネ・マニファクチュア CMS SA、スイス・ロマンド・テレビ
    提供:シネ・マニファクチュア CMS SA

    保守的な田舎町でゲイ・パレードを行おうとする人々を7カ月間撮影する。特に活動家でもなく同性愛者として生きることを享受していた都会暮らしの作者が映画製作を通して成長を遂げていく。

    - リオネル・バイアー

    1975年、ローザンヌ生まれ。1992年来、オーボンヌのレックス劇場の共同支配人・編成担当。1996年より映画やCMの助監督を務める。1995年から1998年まで、ローザンヌ大学で芸術を専攻。1997年は映画専攻。2001年よりローザンヌ州立芸術学校の映画部門ディレクター。作品歴にドキュメンタリー『Celui au Pasteur』(2000)、『Mon pere, c'est un lion (Jean Rouch, pour memoire)』(2002)、フィクション『Garçon stupide』(2004)などがある。 。



    - 針間野


    ベルギー/2004/日本語、フランス語/ビデオ/56分

    監督、録音:田中綾 撮影:ヴァロンティーヌ・ポリュス
    編集:ミッシェル・ユビノン 音楽:デューク・クアルコ
    出演:田中康男 製作会社、提供:コブラ・フィルム、ズーグマ・フィルム

    学生運動に参加したため共産主義者として静岡県で就職差別を受けた父。当時後にした実家の山村を、ベルギーに暮らす娘の作者と共に再訪する。澄んだ空気と山の緑に包まれた父娘の対面は日本の戦後史を映し出す。

    - 田中綾

    高校卒業後、フランスとベルギーに留学。1999年、ブリュッセルの自由大学で文学・映画分析学の学位取得。2000年より日本語教師を職とする。2001年、6本シリーズの1本である短編ドキュメンタリー『INTERFACE』を監督。ベルギー在住歴13年。

     



    スイス・カフェ in 瑳蔵(さくら)

     映画祭だから、日本の伝統的お蔵を改造したカフェ・ギャラリー瑳蔵がスイス色の空間に変身!本プログラム開催中は毎夕、日英同時通訳つきのシンポジウム会場になります。スイスからヴィジョン・デュ・レール映画祭のディレクター、ジャン・ペレ氏をはじめ、来日監督たちと日本の作り手たちが、観客と親密な近さで相対し「私映画」についてディスカッションします。テーマは「記憶と再生」「のぞき見趣味と癒し」「身体と主観」。スイス人と日本人の映像文化、私的自己表現の歴史の違い、自己アイデンティティの立て方など、比較文化的な視点も取り入れながら、どんな考察が展開されるのか。この会場ではスイス・プロ・ヘルヴェティア文化財団の代表者が「スイス政府の芸術文化支援」と題して講演も行います。入場無料。