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私映画から見えるもの
A
  • ピゼット(最後の年かもしれない)
  • 阿賀の記憶

  • B
  • ムービング・ピクチャーズ
  • ザ・プレゼント

  • C
  • 日々 "hibi" 13 full moons
  • ギャンブル、神々、LSD

  • D
  • カルノジカ
  • ははのははもまたそのははもその娘も
  • パリッシュ家
  • ガールフレンド

  • E
  • 映像書簡10
  • 気ままなヤツ
  • 極私的に遂に古稀

  • F
  • パレード
  • 針間野
  • PROGRAM B 甦らせる


     ロバート・フランクの映画には「記憶」という単語がよく現れる。曇った鏡に「MEMORY」と落書きされた文字を端から消そうとするが、なかなか消えない。長年日常生活を過ごしてきた部屋と、窓の見慣れた風景に堆積した時間から、「私」の記憶が立ち上る。「MEMORY」を消そうとして残ったのは「ME」の文字だった。

     河瀨直美の一連のパーソナル・ドキュメンタリーでも、愛する人の姿や声の質感と語り口から強い私的記憶が甦る。新作『影』では、女優を起用しキャメラマン山崎裕(『沙羅双樹』『誰も知らない』)とのフィクショナルな掛け合いを通して、作家自身の基層にある永遠の父親像の再現を試みる。山崎を撮る第二のカメラの登場で、作品制作の主体を顕わにする。つまり、映画には作り手がいるという私的映画の自己言及性が示唆され、ここにもMEMORYのMEが立ち現れているのだ。



    - ムービング・ピクチャーズ

    moving pictures

    アメリカ/1994/サイレント/カラー、モノクロ/ビデオ/16分

    ザ・プレゼント

    the present

    - アメリカ/1996/英語/カラー/35mm/24分

    ●両作品とも
    監督、撮影、録音:ロバート・フランク
    編集:ロバート・フランク、ローラ・イスラエル 
    提供:ヒューストン美術館

    20世紀を代表するスイス生まれの写真家ロバート・フランクは1950年代から映画づくりを続けている。写真、ファウンド・フッテージ、映写された映像の再撮などから映像の断片的な特性を捉えたサイレント作品『ムービング・ピクチャーズ』。日記的な身辺映像を通し、愛するふたりの子どもや友人たちに先立たれた喪失感を浮かび上がらせる、〈現在〉と題された私的映画『ザ・プレゼント』。

    - ロバート・フランク

    1924年、チューリッヒ生まれ。20代で渡米しビート運動に加わる。『The Americans』(1958)は今では伝説的な写真集。映画はジャック・ケルアックがテキストを書いた『Pull My Daisy』(1959)をはじめ、劇映画『Candy Mountain』(1987)など20本以上に及ぶ。



    Shadow

    - 日本/2004/日本語/カラー/ビデオ/26分

    監督:河瀨直美 撮影:山崎裕、中野英世 録音:森英司
    編集:安楽正太郎 制作:内藤裕子、京田光広
    製作、エグゼクティブ・プロデューサー:浅野博貴
    制作協力:遷都、組画 製作:ム−ビング・ピクチャーズ・ジャパン、T-Artist
    提供:遷都

    不在の父を描きつづける作者が女優の身体を借りて「父親」と対面する。仕掛けられた映像に映りこむ感情と主観に「私映画」と言われるものに対する強い批評が見られる。

    - 河瀨直美

    1969年、奈良生まれ。YIDFF '95に上映した『につつまれて』(1992)、『かたつもり』(1994)など私映画で国際的に知られるようになり、『萌の朱雀』(1996)ではカンヌ国際映画祭カメラドール受賞。『杣人物語』(1997、YIDFF '97上映)、『追臆のダンス』(2002)、『沙羅双樹』(2003)など監督作は多数。YIDFF 2003にはアジア千波万波の審査員として参加した。