雲南映像フォーラム |
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Part 1 Part 2 |
Part 2 雲南映像の新風
山地が8割以上を占める変化に富んだ自然生態系の土地で、人口の3割が漢民族以外の25もの少数民族からなる雲南省。風光明媚で映像の被写体として長年「イメージ搾取」されてきたこの固有の社会風土を逆手に、独自の映像文化が花開こうとしている。
Part 1 で紹介される少数民族の文化継承をめぐる映像のほか、雲南では社会の変化を映し出す様々なテーマがドキュメンタリーの題材となっている。年々都市化が進む省都昆明と移民労働者の流入。環境保護NGOが記録する、開発の弊害。観光開発が招く貨幣経済と古来の価値観のぶつかりあい。主題に広がりが見られる。
さらに、詩や歌、踊りなどが生活に近い従来の多層な文化もあってか、新しい映像スタイルの試みが現れている。アジア千波万波で紹介する若手作家作品や、詩人や文化人類学者の作った映像作品が見ごたえある。
これら雲南映像の新しい波を支えるのが「雲之南記録映像論壇(YUNFEST)」。2005年3月に2回目が昆明で開催された画期的な映画祭だ。全国の約100作品から選ばれた15本の「コンペティション」、若い感性が輝く荒削りな25本の「青年論壇」、自然環境保護や民族文化の継承を謳う社会運動の映像活動を紹介する「社会教育」部門。海外からは土本典昭監督の水俣作品をはじめ、16本が上映された。
結集したのは中国ドキュメンタリーの未来を予感させる、作り手と観客の活力だった。ドキュメンタリーを目指す各地の若者たちが、はじめて一般観客と出会った。デジタルビデオの映像製作者たちの運動を応援してきた映画批評家たちが自分たちの存在意義を確認した。社会教育活動と映像の役割を、運動家・教育者たちが熱く語りあった。
山形ではYUNFESTの報告とシンポジウムで雲南映像と中国ドキュメンタリーの現在について詳しく知ることになろう。ご来場をお待ちしています。
(藤岡朝子)
怒江(どこう)の声
Voice of an Angry River怒江之声
- 2004/北京語(雲南方言)/カラー/ビデオ/30分
監督、撮影、製作:史立紅(シー・リーホン)
編集:張耳(チャン・アル)
製作会社、提供:野性中国工作室
怒江(サルウィン川)の上流で計画される13もの大規模ダムが論争となっている。建設予定地の住民と共に、ダム建設によってゴミ拾いの生活となった別の村を訪ねる。環境活動家によるアクティヴィスト・ビデオ。
霧の谷
Foggy Valley霧谷
- 2003/北京語、ハニ語/カラー/ビデオ/45分
監督:周岳軍(ジョウ・ユエジュン)
撮影:周岳軍、李寧(リー・ニン) 編集:馬暁梅(マー・シアオメイ)
ハニ語通訳、歌:高祥明(カオ・シアンミン)
エグゼクティブ・プロデューサー:呉克翔(ウー・クァシアン)
製作:王東明(ワン・トンミン)、鄒金凱(ツォウ・チンカイ)
製作会社:昆明テレビ 提供:チャンネルゼロ・メディア
山中深いハニ族の村には、伝統民族衣装を着て畑仕事をする人の姿や美しい棚田の風景を撮影に訪れる人が増えていた。テレビ局のディレクターが訪れると、誰も彼もが金を要求してきて……。急速な観光地化の及ぼす影響を考えさせるドキュ・ドラマ。
翡翠駅
Jade Green Station碧色車站
- 2003/北京語(南雲南方言)/カラー/ビデオ/122分
監督、脚本、提供:于堅(ユィ・ジエン)
撮影:楊昆(ヤン・クン)、和淵(ホー・ユェン)、于堅
編集:和淵 録音:古涛 (クー・タオ) 音楽:トニー・オバーウォーター
制作:マン・スタジオ
フランスが植民地ヴェトナムと雲南を結ぶ鉄道を開通したのは1910年だった。以来、時代の激動を経た小さな無名の駅は、そこに暮らす普通の人々と共に時間の厚みと暗闇の深さを湛えてきた。著名な詩人、于堅による映像詩。
シリーズ『カワガルボ伝奇』より「登山者」「収穫」「ラマ僧に捧げる食膳」「野花谷」の4つのパート
"Mountaineers," "Harvest," "Food for the Buddha" and "Wild Flower Valley" from the series A Legend of Kawakarpo卡瓦格博:「登山者」「麦子」「仏的食物」「野花谷」
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2005/チベット語/カラー/ビデオ/116分
監督、製作:郭浄(グオ・ジン)
共同監督:此里卓瑪(ツーリーチュオマー)
撮影:郭浄、此里卓瑪
制作、提供:アザラ影像工作站
多くのチベット人が聖山と敬うカワガルボ(梅里雪山)。この山に魅了された作者が1997年来、あえて人類学者の立場を離れ、巡礼者として訪れながら山に暮らす人々の日常、巡礼者の姿や自然の風景をビデオで捉えた。シリーズ全体だと11パート、240分のこの作品から4つのパートを今回は上映。
イベント情報
- 民族楽器の演奏 ……… 伊藤悟
- 報告 …………………… 雲之南記録映像論壇2005
- シンポジウム ………… 中国ドキュメンタリーの新風
雲南映画を1日たっぷり堪能した後は、山形の秋の夜空の下、瑳蔵の中庭で民族音楽の伊藤悟氏のミニ・コンサート。タイ族のひょうたん笛の音色に耳を傾け、チベットのバター茶を飲みながら雲南の山々に思いを馳せよう。
引き続き、2005年のYUNFESTの開催報告。本特集のゲストのほか、今回YIDFFに参加する数多き若手中国監督らを交えながら中国におけるドキュメンタリー映画祭の意義について語り合う。世界的に注目される中国ドキュメンタリーの目覚ましい台頭の秘密は? 国際映画祭での発表ばかりを目指す映画づくりを非難されるいわれは? 「中国ドキュメンタリーの新風」と題するシンポジウムで関係者に聞く。
■民族楽器の演奏 ゲストの旧友でもある民族音楽家・伊藤悟さんは雲南大学に留学中、タイ族の民族楽器制作・演奏家のエンダーチュエン氏と雲南芸術学院の張興栄教授に師事。ビルマ、ラオス、タイまで少数民族の村々を渡り歩き、生活の中の音楽を学んだ。その後タイのチェンマイに滞在しラーンナー音楽を習得。現在は日本に帰国し、音楽活動や研究を続けている。 |