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特別招待作品
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  • OUT OF PLACE =Memories of Edward Said=
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    Out of Place

    日本/2005/日本語、英語、アラビア語、ヘブライ語/カラー/35mm(1:1.37)/137分

    - 監督:佐藤真
    撮影:大津幸四郎、栗原朗、佐藤真
    編集:秦岳志 整声:弦巻裕
    助監督:ナジーブ・エルカシュ、屋山久美子、石田優子
    翻訳、監修:中野真紀子
    プロダクション・マネージャー:佐々木正明
    協力プロデューサー:ジャン・ユンカーマン
    企画、製作:山上徹二郎
    製作会社、配給:シグロ

    文学者として、活動家として、イスラエル・パレスティナ問題に最期まで積極的に関わり続けたエドワード・サイード。国籍や民族、宗教といったアイデンティティにことさら固執するのではなく、パレスティナ人“エグザイル”である自らの在り方を「流れ続ける潮流」と位置づけ、その音楽的ともいえる、たおやかで強靭な思想に立って、和解と共生の道を求め続けた。この映画は、そのサイードの遺志と記憶をめぐる旅のドキュメンタリーである。



    【監督のことば】エドワード・サイードについての映画を撮ろうと思い立って、中東諸国へ初めてロケハンの旅に出たのが、2004年3月のことだった。シリア、レバノン、カイロでサイードの記憶と痕跡を辿りながら、いくつものパレスティナ難民キャンプを訪ね歩いた。中東世界もパレスティナ問題も全く門外漢の私にとってサイードの残したテキストだけが唯一の羅針盤であった。しかし、この地の人々と暮らしのカオスのようなめくるめき多様性は、私にはとても新鮮で魅力的に映った。その一方でアラブ側から見る限り、「暴力の楔」としてしか映らないイスラエル国内の普通の人々の暮らしに触れてみたいという欲求に駆られてきた。こうして映画は、エドワード・サイードを通して、様々なボーダー上に揺れる人々の暮らしに触れる方向へと緩やかにシフトを始めていったのだ。

     僅か1年の間ではあったが、アラブ側から3回、イスラエル側から2回、この地を訪れて実に多くの人々と出会った。ニューヨークのロケを含めて、サイードの関係者だけでも30人を越す人々に話を聞いた。イスラエルとアラブ諸国の国境線上の村々を訪ねながらも、目に見えないボーダーをいかに可視化するかを考えてきた。サイードと面識は一切なく、中東世界を訪ねるのも初めての私に一体何ができるのかとの自問を続けながら、それでも出会った人々の豊かな多様性にほだされてこの映画はかろうじて着陸地点を見つけることができたと思う。


    - 佐藤真

    1957年、青森県生まれ、東京で育つ。学生時代に訪れた水俣でドキュメンタリー映画と出会い、『無辜なる海』(香取直孝監督)の製作に参加。その自主上映の旅で新潟・阿賀野川に暮らす人々と出会い、映画作りを決意し、スタッフ7人で3年暮らして『阿賀に生きる』(1992)を完成。YIDFF '93優秀賞を含む各賞を受賞。以降テレビ作品を数本制作。『まひるのほし』(1998)はYIDFF '99日本パノラマで上映。1999年より映画美学校主任講師、2001年より京都造形芸術大学教授となる。YIDFF 2001ではアジア千波万波審査員を務め、『SELF AND OTHERS』(2000)、『花子』(2001)を上映した。2002年8月から文化庁派遣芸術家在外研修員として1年間ロンドンに滞在。著作に『ドキュメンタリー映画の地平』(2001)、『まどろみのロンドン』(2004/著作はすべて凱風社)など。近作『阿賀の記憶』はYIDFF 2005の「私映画から見えるもの」でも上映。