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雲南映像フォーラム
Part 1
  • グブ村のキャラバン隊
  • ハニ族の新年祭“ガタンパ”
  • 金平県ハニ族の織物
  • 息子は家にいない
  • ワ族

  • Part 2
  • 怒江の声
  • 霧の谷
  • 翡翠駅
  • カワガルボ伝奇
  • 雲南映像フォーラム


     藍染め、歌垣、照葉樹林、棚田……。中国の雲南省の少数民族の人々のさまざまな暮らしや風景は、私たち日本人にとっては何か懐かしさを感じさせるものがある。ゆえに、日本のマスメディアにもたびたび「日本の原風景」として取り上げられてきた。しかし、このプログラムは、決して、そのようなノスタルジーに浸ろうというものではない。

     2005年3月、私は、東北文化研究センターで学生たちとともに制作したふたつの民俗記録映像の紹介のために、昆明市で開催された「雲之南記録映像論壇」へ参加した。そこで私の目を奪ったのは、少数民族出身の若い作家たちが、自らカメラを持ち、自分たちの暮らしを記録することで、少数民族の伝統文化をどのように守っていったらいいのかと真剣に格闘している姿である。彼らは、もはや、外国のメディアや研究者の被写体に留まってはいない。彼らにとって映像は、むしろ、自分たちの伝統文化を次世代へ繋いでいくための、そして、少数民族としての新たな自己表現としての重要な手段になっていると言っていい。

     東北芸術工科大学東北文化研究センターと山形国際ドキュメンタリー映画祭との共同で開催する本プログラムでは、雲南から3名の映像作家の方々をお迎えし、文革以前の民族映像、伝統文化を保持していくための現在の記録映像の試み、そして、現代の潮流を取り入れる新進作家たちの作品等、全9作品を上映する。そこには、おそらく、雲南における映像をめぐる長い格闘の歴史とともに、民族映像の可能性といくつもの課題が浮かび上がってくるだろう。そして、それはここ東北という地で、東北の文化を、人々の暮らしを学生たちとともに映像に撮り続けている私たちにとっての、大きな手がかりとなるに違いない。

    六車由実 東北芸術工科大学助教授


    - ■東北文化研究センターについて

    東北芸術工科大学東北文化研究センターは、東北という地に埋もれた記憶を掘り起こし、地域遺産として育てていくとともに、東北から日本列島、そして東アジアへと開かれた多様な文化を明らかにすることを目指して設立された研究機関である。研究成果は、『東北学』『季刊東北学』等の雑誌や学内の水上能舞台で行う東アジアの芸能の公演を通して公開している。また、焼畑やしな織、マタタビ細工など、山形県内や東北の伝統文化を学生とともに映像に記録する試みも行っている。

     


    雲の南から来たドキュメンタリー映像展

     雲南でフィルムを用いた映像が最初に記録されるのは清朝末年のことだった。しかし本格的なドキュメンタリー製作が始まったのは、その後1950年代から70年代。民族学者と映画人のチームによる「少数民族社会歴史科学ドキュメンタリー」シリーズ21本が製作され、当時の中国、とくに雲南の16の少数民族社会の貴重な記録を残した。

     1980年代以降、雲南では個性の表現と文化への関心を特徴とするドキュメンタリー映画が盛んになり、90年代には「映像人類学」の大学院課程が開設された。加えて多くの非政府組織が社会教育活動や芸術の領域で活躍し、次第に良い環境が築かれるなか、新しいドキュメンタリー映画祭が誕生したのだった。

     2003年3月、雲南省博物館と昆明の各大学の共同開催により第1回「雲之南人類学映像展」(YUNFEST)が行われた。2005年3月には雲南省社会科学院主催、白瑪山地文化研究センターおよび雲南省図書館運営、諸大学および山形国際ドキュメンタリー映画祭の協力により、第2回目(「雲之南記録映像論壇」)を昆明で開催した。そこでは80あまりのプログラムが行なわれ、日本のドキュメンタリー映画の傑作も6作品上映した。

     この映像展でとりわけ特徴的なのが社会教育活動のフォーラムで、そこには非政府組織や民間の草の根団体が集まり、観客に各コミュニティからの「声」が届けられたのだった。

    郭浄(グオ・ジン)
    雲南省社会科学院・白瑪山地文化研究センター教授、YUNFESTディレクター