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YIDFF 2023 オープニング作品
Ryuichi Sakamoto | Opus


日本/2023/日本語/モノクロ/DCP/103分

監督:空音央
撮影:ビル・キルスタイン
編集:川上拓也
録音、整音:ZAK
音楽、演奏:坂本龍一
製作:空里香、アルバート・トーレン、増渕愛子、 エリック・ニアリ
製作会社:KAB America Inc. / KAB Inc.
配給(日本国内):ビターズ・エンド

2023年3月に逝去した音楽家 坂本龍一。闘病生活を続けていた彼が最後の力を振り絞って演奏したソロ・コンサート。2022年9月、東京のNHK 509スタジオで行われた撮影に、坂本はヤマハのグランドピアノだけで臨んだ。「Merry Christmas Mr. Lawrence」、2023年に発表された最後のアルバム『12』からの楽曲、初めてピアノ・ソロで演奏された「Tong Poo」など自身で選曲した20曲から構成。ボーダーを越え続けた坂本の軌跡を辿る曲目、鍵盤を奏でる指と音楽家の息遣い、その人生が刻みこまれた手。坂本が全面的に信頼を寄せた監督と撮影クルーたちが入念に撮影プランを練り上げ、親密かつ厳密な世界でひとつしかない宝物のような映画空間を生み出した。



【監督のことば】坂本龍一がピアノを弾くために、歴史あるNHKの509スタジオに入った時、自分の仕事はそこに立ち会い、記録することだった。坂本にとって、ピアノは生涯で最も長く付き合った楽器であるとともに、彼が終生批判的に捉えていた近代性や西洋音楽の体系を象徴する楽器でもあった。平均律の不自由さに限界を感じ、非西洋音楽や電子音楽、ノイズに目を向けたが、ピアノは常に坂本の身体の延長と して共にあり、そのことに対していつも、少なからず矛盾を感じていたようだ。しかし、その「矛盾を弾く」作曲家の演奏に耳を傾けると、12音階どころか、ありとあらゆる音がピアノと坂本龍一の身体から生まれ出てくるのがわかる。そういった矛盾や身体性を大切にしながら、音と音の間で起こる事象がよく見え、よく聴こえるように、演奏をしっかりと記録するように努めた。


空音央

ニューヨーク生まれ、東京とニューヨークで育つ。ふたつの都市を行き来する映像作家、アーティスト、翻訳家。脚色と監督を手がけた 『The Chicken(鶏)』(2020、ロカルノ国際映画祭2020、ニューヨーク映画祭2020)は、VarietyやCahiers du Cinémaなどで称賛 され、Filmmaker Magazineでは「25 New Faces of Independent Film」のひとりとして選ばれた。2017年ベルリン国際映画祭提携の「タレンツトーキョー」、2022年サンダンス・インスティチュートの脚本と監督ラボの修了生である空は、脚本家・監督としての長編デビュー作品を現在製作中である。