やまがたと映画 |
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Part 5 やまがた・映像の未来
平成4年(1992)開学した東北芸術工科大学では、情報デザイン学科映像コースを中心として様々な形で映像作品が制作されてきたが、それらの作品は山形の未来の映像環境を展望するための良い素材と言えるだろう。周囲を山に囲まれた山形盆地で映像を制作しようとしている彼らにとって、どちらの方向にカメラを向けても背景に山脈が写り込むという環境は無意識のうちに山形派とでも呼べる、ひとつの傾向を作り出しているようにも思える。あるいは逆に、海を撮影するために、庄内海岸や宮城県までロケーションに出かけることもしばしばあり、海への憧れが映像制作の動機付けになっていたりもする。こういった地理的条件が作品に与える影響を総括的にまとめて述べるのは危険な試みと承知した上で、敢えて危険を顧みずに語ってしまうと、“健康的”という言葉が浮かんでくる。いくら暗いテーマ設定があっても、若者の退廃的な生活スタイルが写されていても、何故か、何処か、救いがある健康さが、山形派の特長のような気がしてならない。近年の大学関係のビデオ作品から7作品をピックアップしてみた。
(加藤到、東北芸術工科大学准教授)
RE FROM
Re: From:- 2007/日本語/16分
監督:高橋由衣
晴れて大学に入学する弟と就職活動模索中の自分を軸に等身大の家族関係をリアルに映像化している。
JAMBOYS
Jamboys- 2006/日本語/8分
監督:鏡慶吾
若者特有の言葉にできない不安と不満を、実験的な映像と、叫びのパフォーマンスによってダイレクトに表現した。
二人が座っている
Two People Sitting- 2007/日本語/13分
監督:市川悠輔
ふたりの若者が“いい感じの所”に腰掛けるための椅子を抱えて徒歩で旅に出る。川をどんどん下っていった先には海が……。
西ゆけば
If You Head West- 2007/日本語/8分
監督:大木裕子
田植えをする祖母の姿を写真におさめるという実体験を基にして作られたアニメーション作品。記憶のドキュメンタリーとも考えられるユニークでシンプルな構成。
ZARU-RIVER サツキバレ
Zaru River: Blue Skies in May- 2007/日本語/17分
監督:小林香織
仙台出身の作者の家族が東京に引越ししてしまった。山形から東京に帰省することに違和感を感じ、子供のころ祖母に遊んでもらったザル川に思いをはせる。
地球の映像工房
Global Visual Workshop- 2006/日本語/10分
制作:山形国際ドキュメンタリー映画祭実行委員会
撮影、編集:小林香織、本田有希子、黄木優寿
山形映画祭の実行委員会が映画祭のない年に行った子どもを対象にした映像ワークショップ。その模様を芸工大からのインターンシップ生が映像で記録した作品。
石ころ屋根・丙申堂杉皮葺き石置屋根修復
Stone Roof: Restoration of Heishindo's Cedar-Bark Shingle and Stone Roof- 2005/日本語/27分
制作:東北芸術工科大学文化財保存修復研究センター、財団法人 克念社
映像監修:加藤到 撮影、編集:森山拓郎、大森宏樹
鶴岡市にある国指定重要文化財旧風間家住宅「丙申堂」。この建物の伝統的工法によって作られた屋根の修復作業の記録。文部科学省私立大学オープンリサーチセンター整備事業の一環として制作された。